拝啓、朝日新聞社 殿2005年09月05日

 今から1年前、ロシア北オセチア共和国で学校占拠事件がありました。そのときの朝日新聞の社説に、北オセチア共和国首都の名称に対して次のようにかかれていました。

 首都のウラジカフカスが「カフカスを征服せよ」を意味する

 この説明が本当だろうかと思い、朝日新聞社に質問のMailを出したところ、担当者に回したとの連絡をいただきましたが、質問の回答は、1年たってもありません。


以下、朝日新聞社へのMailです。



 2004年9月4日付け社説(学校占拠事件)の記述について、事実であるか否か疑問なので教えて下さい。

首都のウラジカフカスが「カフカスを征服せよ」を意味する

 この行に対しての疑問です。言葉からは、このような解釈が誤りだとは思いません。しかし、手元にある、三省堂コンサイス露和辞典を調べると、「占有・支配・領有」「領土・領地」「~が堪能である」等の訳語が載っていて「征服」はないのです。
 歴史的に見ると、ウラジカフカスは、トビリシへ続く軍用道路北端の要衝として、ザカフカス支配の重要拠点だった事は事実です。
 ウラジカフカスはロシアンフェデレーションの共和国である、北オセチア共和国の首都です。北オセチア共和国には、オセチア人(オセット)を始めとして、カフカス人が多数住んでいます。この人たちが、”「カフカスを征服せよ」を意味する”名称を、変更もせずに、いまだに使っているとお考えでしょうか。ロシアンフェデレーションの幾つもの都市名が変更になっている事を考えると異常に思えます。もし、カフカス人が、自身の首都名に「カフカスを征服せよ」という名称を冠しているとするならば、オセチア人は、恐ろしく、劣等な民族であると言えると思います。
 9月4日付け社説では、オセチア人は劣等民族である、と言う事を暗示するための記述なのでしょうか。
 私は、ウラジカフカスは「カフカスの領土」あるいは、「カフカスで上手に政治を行え」この程度にニュアンスではないかと思うのですが。
 本当に、「カフカスを征服せよ」と言う日本語に相当するニュアンスと解すべきなのでしょうか。これが疑問点です。
 ウラジカフカス市の見解はどうなっているのでしょう。朝日新聞なら、当然、調べていると思います。ウラジカフカス市は市名の由来をどのように説明しているのでしょう。「カフカスを征服せよ」の意味であると説明しているのでしょうか。
 社説は、この後の、ロシアの南進政策説を補強するために、「カフカスを征服せよ」の訳語を使ったものと思います。しかし、たとえば、東グルジアの統合などは、トルコの圧制からグルジアを保護すると言う面もありました(あるいはトルコのアルメニア・ジェノサイドを思い起こしてください、あるいは、オセット人に親ロシア派が多いといわれる原因に思いを寄せてください)。カフカス、ザカフカスの複雑な政治状況に対して、あまりにも安直な解釈を流布する事になってしまう解説記事のような気がします。
 プーチンさんの名前は、「世界を征服せよ」でしょうか。「平和を上手に保つ人」でしょうか。前者であると解釈して、ロシアの好戦性を物語っているとの解釈も成り立ちます。しかし、それは、単なる言いがかりでしょう。
 私、個人の意見と、質問が混じってしまいました。質問の理由を伝えたかったため、このようなわかり難い文章になったことをお許しください。
 繰り返しになります。”首都のウラジカフカスが「カフカスを征服せよ」を意味する”、これは、真実でしょうか。それとも、一般に言われる風説でしょうか。

外国郵便2005年09月09日

昭和21年9月9日、逓信省令第16号により、翌日から海外に葉書を差し出せるようになりました。
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/HoppouShiryou/Teishinsourei19460909.htm

第二条 この省令にいふ外国には、次に掲げる地域を含み、独逸国を含まない。
 一、朝鮮,台湾,関東州,南洋群島,及び樺太
 二、千島列島(珸瑤瑁諸島を含む)
 三、小笠原諸島,硫黄列島,大東島諸島,沖鳥島,南鳥及び中鳥島
 四、竹島
 五、北緯30度以南の南西諸島(口之島を含む)

 この省令では、千島列島(珸瑤瑁諸島を含む)となっています。珸瑤瑁諸島とは歯舞諸島のことなので、色丹島は自明に千島列島に含まれることになります。日本は、サンフランシスコ条約で千島列島の領有を放棄しました。国後・択捉のみならず、色丹島も千島に含まれることは、郵便の世界では常識です。

 さて、9月10日から海外に郵便を差し出せるようになりましたが、初日に差出された郵便物はどれだけだったのでしょう。

t.A.T.u.2005年09月13日

 t.A.T.u.のオールアバウトアスを聞きました。リエーナの高声が伸びやかで奇麗です。少女の声ではなく、大人の女声になっています。
 再び、流行することは無いと思いますが、一度お聞きになってみるのもよろしいかと。

 t.A.T.u.の写真ならココ。
 http://taty-all.sitecity.ru/album_2903135103.phtml?pix=9
 (先頭ページはウーリャのヌードなので、途中のページのアドレスです。)

ホームページアドレス変更のお願い2005年09月15日

ホームページ先頭アドレスを変更しました。

 以前、先頭ページはhttp://members.aol.com/Kanaiwwwとしていました。このページを以下に移動しました。
 http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/

 http://members.aol.com/Kanaiwww は 封鎖しました。

 http://cccpcamera.myhome.cx/   http://www.fan.hi-ho.ne.jp/kanai007 は、これまで通り変更ありません。
 また、このBlogや掲示板のアドレスも変更ありません。

お手数をおかけしてすみませんが、ブックマーク・リンク等の変更をお願いします。

注)プロバイダーとの契約を解除したので、http://members.aol.com/Kanaiwww は無くなります。プロバイダーが削除するまでは残っていますが、そのうちなくなります。

サンフランシスコ条約11条の訳語-「裁判」とは何か「判決」とは何か2005年09月21日

 今年の5月頃、靖国問題に関連して、サンフランシスコ条約11条の訳語の可否が議論されたことが有ります。常識的に考えて、日本の外務官僚が単純な英語の翻訳ミスを犯すとは考えられないし、この問題に関して議論になったときの政府の説明は、常に一貫していたので、これまで、この問題を気にしたことはありませんでした。ところが、最近、右翼的経済人の解説を読んで、唖然としたので、サンフランシスコ条約11条の訳語を数回に渡って取り上げます。

今回は、「裁判」とは何か「判決」とは何か。

最初に、サンフランシスコ条約11条の冒頭部分を掲載します。

(英語)Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts both within and outside Japan, and…

(日本語)日本国は,極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し,且つ…
 

東急エージェンシー社長だった前野徹氏の著書「新歴史の真実」のP52,P53に以下の記述があります。

*************
 実は日本語で「裁判」と訳されている個所は、英語では「Judgment」です。いうまでもなく、これは「判決」であり、「裁判」ではありません。だが、どういうわけか、日本の官僚による訳文では「裁判」にすり替えられています。あたかも、裁判全てを受け入れたかのような表現になっているのです。何かの作為が働いているとしか考えられません。
*************

 前野徹氏は扶桑社からも何冊か出版している、右翼的経済人です。

 あまりにもレベルの低い誤りに唖然とします。ここでは、サンフランシスコ条約11条の意味内容には立ち入ることなく、日本語の「裁判」と「判決」はこの場合、ほとんど同じ意味であって、前野氏の言うように「すり替え」ではないし、特に「何かの作為が働いている」わけでもないことを説明します。

 法律用語では、「裁判」とは裁判所や法廷の意味ではなく、判決・命令・決定を合わせて裁判といいます。このため、サンフランシスコ条約11条のjudgmentの訳語を「裁判」「判決」どちらにしても、基本的に同じ意味になります。

 もう少し詳しく説明します。まず、一例として、交通違反を犯したときのことを考えてください。たいていの場合、以下の4種類になるでしょう。
①軽微な違反のときは、反則金の支払い。
②ほんの少し重い違反のときは、書類送検の後、不起訴(起訴猶予)。
③少し重い違反のときは、書類送検の後、簡易裁判所で略式命令。
④重い違反のときは、書類送検の後、裁判所で公判が開かれ、判決が下る。

  ①②は司法手続きは行われていませんので、裁判はありません。③は略式命令なので、裁判ですが、判決ではありません。④は裁判で、判決です。このように、③④を合わせて裁判といいます。裁判には、判決・命令のほかに決定もあります。つまり、裁判のほうが判決よりも広い概念です。命令・決定と判決の違いは、訴訟法上の司法手続きの違いです。(詳しくは、刑事訴訟法43条~45条などを参照してください。)

 極東軍事裁判所では判決が下りました。このため、サンフランシスコ条約11条の指すjudgmentが極東軍事裁判所の判決のことであるならば、judgmentを「裁判」「判決」どちらに訳しても同じ意味になります。しかし、日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷に「判決」のほか「命令」があるならば、サンフランシスコ条約11条のjudgmentsは「判決」と訳すと正確さを欠くことになります。このため「裁判」と訳すことが正解なのかもしれません。

 なお、1971年6月17日「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(沖縄返還協定)」第5条でも、英文のjudgmentsは日本文では裁判となっています。

最後に、広辞苑の裁判の説明を掲載します。
〔法〕裁判所・裁判官が具体的事件につき公権に基づいて下す判断。訴訟法上は、判決・決定・命令の3種に細分。

 たとえ虚偽を吹聴するいいかげんな著書であったとしても、せめて広辞苑ぐらい調べて欲しい。


補足:
 1971年沖縄返還協定第5条4項です。

4. Japan may continue the execution of any final judgments rendered in criminal cases by any court in the Ryukyu Islands and the Daito Islands.

 この、final judgments は日本文では「最終的裁判」です。この訳語が「最終判決」だと、ちょっと困ったことになります。重い犯罪者は裁判で判決が下されるけれど、科料や低額の罰金程度の軽微な犯罪だと、裁判所の略式命令で済まされることが多いと思います。命令は判決ではないので、「final judgments」が「最終的判決」になっていたならば、軽微な犯罪だった場合、罪がなくなってしまいます。「最終的裁判」だと、略式命令も含まれるので、罪を免れなくなります。

 ということで、judgmentの訳語は、裁判・判決ともに正解、むしろ裁判が正解の場合が多いと言うことになるでしょう。
 英和辞典を幾つか調べてみると、一般用は、最初に「裁判」次に「判決」となっているものが多く、学習辞書は最初が「判決」になっている場合が多いようです。

(反論・意見は歓迎しますが、刑事訴訟法44条も読んでないような低レベル反論はご容赦ください。)

サンフランシスコ条約11条の訳語-「judgment」と「sentence」2005年09月24日

 前回に続いて、サンフランシスコ条約11条、解釈の問題です。

 サンフランシスコ条約11条で、日本は極東軍事裁判所などの裁判(判決)を受諾しました。日本の右翼たちは、この部分を無理やりおかしな解釈をしますが、その中でも、一番傑作な誤りは、以下のようなものです。(ネット上で探した複数の解釈を改変しています。)
 『判決とは東条英機他六名は死刑、などといった極めて具体的な個々のものである。日本が受諾したのは、東条英機他六名は死刑などという個々の刑罰のことである。』

 条約文を読まなくても、常識的に注意深く考えれば、このような解釈が成り立たないことは明らかでしょう。
 以下、明らかでない人のために、ちょっと説明します。
 極東軍事裁判所の判決で、東条に死刑が宣告されました。この場合、死刑が宣告されたのは東条です。この死刑宣告を受け入れることができるのは東条だけです。ほかの誰も、また、日本国も、東条の変わりに死刑になることはできないので、東条以外には死刑宣告を受諾できません。日本政府が東条に死刑を執行することはできますが、死刑宣告は受諾できないのです。
 このため、日本が受諾したものが、「東条は死刑」などといったものではありえないのです。

 サンフランシスコ条約11条では、日本政府に、極東軍事裁判所などの裁判を受諾すること、さらに、日本国で拘禁されている日本国民に課した刑を執行する事が定められています。日本政府が受諾するのは「judgment(裁判)」で、日本政府が執行するのは「sentence(課した刑=刑の宣告)」です。「judgment」と「sentence」には用語として明確な違いがあります。英文でも日本文でも明確な違いは明らかでしょう。にもかかわらず、右翼的な人の中には、むちゃくちゃ、でたらめな解釈をする人が多いので、あきれるばかりです。

 正しくは、次のようになります。
  日本が受諾したもの-「judgment(裁判。判決。法理・判決主文・判決理由などを含む判決全体のこと。)」
  日本が執行するもの-「sentence(課した刑。刑の宣告。東条英機他六名は死刑などという個々の刑罰。)」


今回は、サンフランシスコ条約11条全文を掲載します。

Article 11
 Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts both within and outside Japan, and will carry out the sentences imposed thereby upon Japanese nationals imprisoned in Japan. The power to grant clemency, to reduce sentences and to parole with respect to such prisoners may not be exercised except on the decision of the Government or Governments which imposed the sentence in each instance, and on the recommendation of Japan. In the case of persons sentenced by the International Military Tribunal for the Far East, such power may not be exercised except on the decision of a majority of the Governments represented on the Tribunal, and on the recommendation of Japan.

第十一条
 日本国は,極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し,且つ,日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。これらの拘禁されている物を赦免し,減刑し,及び仮出獄させる権限は,各事件について刑を課した一又は二以上の政府の決定及び日本国の勧告に基く場合の外,行使することができない。極東国際軍事裁判所が刑を宣告した者については,この権限は,裁判所に代表者を出した政府の過半数の決定及び日本国の勧告に基く場合の外,行使することができない。


 なお、サンフランシスコ条約全文は以下を参照ください。
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/HoppouShiryou/19510908.T1J.html
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/HoppouShiryou/19510908.T1E.html

 また、サンフランシスコ条約に直接関係ありませんが、北方領土問題関連の資料は以下を参照ください。
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/HoppouShiryou/HoppouShiryou.htm

サンフランシスコ条約11条の訳語-「judgments」が複数形になっている理由2005年09月27日

 今回も、サンフランシスコ条約11条、解釈の問題ですが、あまりにも低レベルな誤りの指摘です。

 サンフランシスコ条約11条では、『Japan accepts the judgments…』と複数形になっています。右翼的評論家の中には、たとえばこのような主張が有ります。

 『複数になっているから「裁判」ではなく「諸判決」である。諸判決とは絞首刑・東条英機他六名、終身禁固刑・賀屋興宣他十五名、禁固7年・重光葵などといった極めて具体的な個々のものである。』

 単一の裁判で複数形になるのはおかしいので、個々の刑の宣告のことだ、と主張しているようです。しかし、複数形になっているはそのような理由では有りません。まず、サンフランシスコ条約11条の最初の部分です。

 Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts both within and outside Japan,

 「judgments」が、「the International Military Tribunal for the Far East(極東軍事裁判所)」の裁判の他に、「other Allied War Crimes Courts(その他、複数の戦争犯罪法廷) 」 の裁判を指していることは明らかです。
 サンフランシスコ条約11条では「judgments」は複数形になっています。複数の法廷で複数の裁判が行われたのだから、複数形になるのは当たり前のことです。judgment(裁判)がsentence(刑の宣告)の意味に誤用されているわけでは有りません。

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