小泉靖国参拝には違憲判決が出ている2006年08月30日

全然タイムリーではないのですが、小泉靖国参拝に違憲判決が出ていることを説明します。

 小泉靖国参拝については、2004年4月7日福岡地裁判決,2005年9月30日大阪高裁判決で、違憲判決が出されています。

『違憲判決』とは、判決のなかに、憲法違反の判断が示されている場合を言います。
 漫画や同レベルのハウツー本しか読んだことの無い、ネットウヨクたちは、『違憲判決』の意味を理解していないようです。無知なネットウヨクをたぶらかす目的で、一部右翼漫画家などが、でたらめを書いているかもしれません。『判決とは主文のことを言うのだ』このようなでたらめを言う人がいるので、マンガしか読んだことの無い、無知蒙昧なネットウヨクは、主文に違憲と書かれていない場合は違憲判決ではないなどと、とんでもないデタラメを信じ込んでいるようです。

 判決主文とは、誰某は死刑とか、誰某は誰某にいくら支払えとか、そういうことが書いてあり、法律解釈は判決理由に書かれるものです。このため、違憲判決とは判決理由に憲法違反との判断が示されることを言います。
 なお、訴訟法上、判決理由が、判決に含まれることは、刑事訴訟法第44条、民事訴訟法第253条に明示されています。

 もう少し、説明します。最初に、2005年9月30日大阪高裁判決の中で、違憲判断が示されている部分を抜粋します。判決文の全体は、以下のページを参照ください。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/261F2926F7BBCF26492570BC0019B4D2.pdf

本件各参拝は,極めて宗教的意義の深い行為であり,一般人がこれを社会的儀礼にすぎないものと評価しているとは考え難いし,被控訴人小泉においても,これが宗教的意義を有するものと認識していたものというべきである。また,これにより,被控訴人国が宗教団体である被控訴人靖國神社との間にのみ意識的に特別の関わり合いをもったものというべきであって,これが,一般人に対して,被控訴人国が宗教団体である被控訴人靖國神社を特別に支援しており,他の宗教団体とは異なり特別のものであるとの印象を与え,特定の宗教への関心を呼び起こすものといわざるを得ず,その効果が特定の宗教に対する助長,促進になると認められ,これによってもたらされる被控訴人国と被控訴人靖國神社との関わり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものというべきである。
 したがって,本件各参拝は,憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たると認められる


 だれがどうみても、判決文の中に、憲法違反の判断が示されています。まさに、違憲判決です。

 なお、2004年(平成16年)4月7日福岡地裁判決は以下をご覧ください。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/9150D634B0A70BFC49256EA50001E63B.pdf

 さて、話を元に戻します。一部ネットウヨクは、違憲判決は出ていないと、誤解していますが、その理由には、幾つかあります。こんな感じでしょうか。

①主文に違憲とかかれていない場合は違憲判決ではない
②原告が敗訴したから、原告の主張は否定された
③判決に直接関係ない部分で、違憲判断をしたに過ぎない

①の主張が成り立たないことは、最初に書きました。
 補足をしますが、通常、判決書は次のように書かれています。最初に、日時・書記官名、訴訟番号など。次に、大きい字で「判決」。つぎに、原告・被告の住所氏名、代理人氏名。そのあと、大きい字で「主文」とあって、そのあとに、具体的な判決主文が有ります。さらに、大きい字で「事実及び理由」とあって、そのあと、延々と、原告主張、被告主張、判断などが続きます。この、圧倒的に多い部分を、通常「判決理由」と呼びます。判決理由のあとに、法廷の名称(たとえば、大阪高等裁判所第13民事部)が書かれ、最後に、裁判長裁判官の氏名と裁判官の氏名がかかれます。
 判決書に書かれていることすべてが判決なわけです。なお、判決書の原本は永久に保管されます。

②の主張も完全に誤りです。
 過去に、議員定数違憲訴訟で、違憲判決が下されたことが有ります。しかし、すべて、原告敗訴になっています。違憲判決と原告が勝訴したかどうかは、直接関係ないことです。
 日本の訴訟制度では、訴えの具体的利益が無い場合は提訴することができません。小泉の靖国参拝は違憲だと思っても、それだけで提訴することは不可能です。このため、「違憲参拝により、これこれの損害をこうむったので損害賠償を支払え」このような、訴訟になります。大阪高裁の判決は、小泉靖国参拝は違憲だけれど、損害をこうむっていないので、損害賠償は認められなかったのです。つまり、判決は、「小泉靖国参拝は違憲だ」「損害賠償は認められない」の2つの判断により構成されています。要するに、「小泉靖国参拝は違憲」との判断です。

③の主張は司法の根幹に関る決定的な誤解です。
 日本の司法制度では、判決に関係あるのか、関係ないのか、裁判官が判断します。このため、裁判官が、判断して判決に加えたことは、判決に関係あることです。評論家が、後になって「この判決はよろしくない」と評論することは有りますが、だからと言って、判決文に書かれたことが無効になるはずも無いのです。

 これ以外にも、低レベルな誤解をする人はいると思います。小泉靖国参拝に違憲判決が出ていないと、まだ、誤解している人がいらっしゃるならば、コメント欄にお書きください。極端に低レベルなものを除き、ご説明します。ただし、なるべく、2004年4月7日福岡地裁判決,2005年9月30日大阪高裁判決、刑事訴訟法第44条、民事訴訟法第253条を、お読みになってから、コメントしてください。

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