小林よしのりのマンガ(2)2006年09月14日

小学館のSapioに、小林よしのりが、おかしなマンガの解説を書いていました。まだ、1コマしか見ていません。

 サンフランシスコ条約11条の日本語は、『日本国は,極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し,且つ…』と、『裁判を受諾』と訳されています。小林よしのりは、この訳は誤りで、『諸判決を受諾』が正しいと主張しているようです。(マンガをまだ見ていないので、あやふや。小林よしのりのマンガ、嫌いなんです。)

 サンフランシスコ条約の翻訳には、下田武三氏が関与していたことは間違いありません。下田氏は外務省官僚を退任したあと、最高裁判所裁判官を務めていました。戦後日本の条約解釈の礎を作った人といっても過言ではありません。下田氏は、近年プロ野球コミッショナーを務めていたので、この関係でご存知の方も多いと思います。外務省条約局長を務めた人よりも、小林よしのりが、英語が堪能だと一体どうして考えるのでしょう。最高裁判所裁判官を務めた人よりも、小林よしのりが、法律知識が豊富だと、一体どうして考えるのでしょう。
 その後、サンフランシスコ条約の説明には、外務省条約局長だった小和田恒氏が関与していたことは容易に想像できます。小和田恒氏は外務省退任後、国際司法裁判所の裁判官を務めています。国際司法裁判所の裁判官を務めた人よりも、小林よしのりが、国際法に詳しいと、一体どうして考えるのでしょう。

 そう考えたら、いい年をして、ピエロを演じている小林よしのりが気の毒になってきました。

下の記事の続き2006年09月14日

 皆様、プロ野球はお好きですか。
 プロ野球を見ていると、審判のストライク/ボールの判定や、アウト/セーフの判定のことを「ジャッジメント」と言っています。野球で一番大切なのは、巨人が勝ったとか、阪神が勝ったとか、そういうことかもしれませんが、だからと言って、それだけが審判のジャッジメントと言うわけではなく、個々のストライク/ボールの判定、アウト/セーフの判定のことも「ジャッジメント」と言います。
 相撲では、行事軍配がどちらに上がったか、物言いは付かないか、そういうことが判定のすべてのように感じます。

 判決で一番重要なのは、死刑なのか無罪なのか、そういうことかもしれません。しかし、判決には理由のところに、検察の主張はどうだ、弁護側主張はどうだ、それをどう判断するか、と言うことが、こまごまと書かれています。裁判所の判決は、プロ野球のジャッジメントに似ているようで、行事軍配とは趣が違います。

 多少でも、プロ野球中継を見たことのある人ならば、普通の常識でも、「ジャッジメント」が単に、死刑なのか無罪なのかという結果だけではなく、そのように判断した過程を含むことは、容易に推定できるような気がするのですが。

 民主党細野氏は対談の中で、『判決には主文があり、事実認定や判決理由がある。そこを主文の刑の執行に限定するのは無理がある。』と発言したそうです。小林よしのりはマンガの中で、この発言を「馬鹿話」として批判しています。民主党細野氏の発言は、法律用語としての『判決(ジャッジメント)』の意味を忠実に説明しています。一般常識も、おそらくそれほど違いないでしょう。小林よしのりだけが、法律用語からも、一般常識からも外れた、デタラメ、インチキを吹聴しています。小林よしのりの、非常識な無知はどこから来ているのでしょう。


 それから、細かいことだけれど、日本の民事訴訟の判決は、「主文」と「事実及び理由」からなっています。刑事訴訟の判決では「主文」と「理由」になります。例外はあるかもしれない(あやふや)。これは、民事訴訟法 第253条では「判決書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。1.主文 2.事実 3.理由 4.口頭弁論の終結の日 5.当事者及び法定代理人 6.裁判所」となっているのに対して、刑事訴訟法 第44条では、「裁判には、理由を附しなければならない」となっているためです。
 極東国際軍事裁判書の判決は、日本の裁判とは体裁がだいぶ異なっています。(原文を見たことがないので詳しいことは知りません。)

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