北方領土返還運動の目的2007年07月13日

 拓殖大学客員教授を務める吹浦忠正氏は、北方領土問題研究の第一人者の一人です。氏は、Blogを公開し、頻繁に記載しています。吹浦忠正氏は、北方領土返還運動の目的を以下のように説明しています。
私など旧島民のために返還運動をしているわけではない。日本と日本人の矜持として取り組んでいるのであり、法と正義が国際政治に十分反映されるべきであるとしてやっていることだ。返還運動は、孫子に引き継いででも、というのでいいのだ。
 『矜持』は、『矜恃』と書く事も多く、『きょうじ』あるいは『きんじ』と読みます。意味は、『誇り』『自負』『プライド』のことです。
 『日本と日本人の矜持』とは、何であるのかは、人によってだいぶ違いそうなので、ここでは触れずに、『法と正義』の具体的内容を検討します。

 最初に、法について。直接、北方領土問題に関連している、現在有効な国際法、国際司法は、以下のようなものでしょうか。
①日ソ共同宣言
 両国間に平和条約が締結された後に、ソ連の善意で、歯舞色丹を日本に引き渡すことを規定。

②サンフランシスコ条約
 日本は千島列島の領有を放棄。

③国連憲章
 旧敵国条項(この憲章のいかなる規定も、第二次世界戦争中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。)

④極東国際軍事裁判所の判決
 ソ連対日参戦は正当なものであることを認定。
 この4つが、国際政治に十分反映されるべきとの主張であるならば、全く同感です。
 『法と正義』による解決は、現在プーチンが主張しているところです。もし、日本政府が、まじめに法による解決を望むのならば、日ロ間の合意は、それほど困難では無いように思います。


 『正義』は人によって違うので、一概には言えないけれど、日本の蝦夷地進出で有名どころは3つです。
①コシャマインの乱
②シャクシャインの乱(松前藩側は和議を申し入れ、和議の酒宴で暗殺)
③クナシリメナシの乱(投降したアイヌを殺害)

 現在の視点から見ると、あまり誇れるようにも思えないのですが、先住民の弾圧に関しては、日ロとも同じようなものです。日本だけが悪いとか、ロシアだけが悪いとか、そのようなものでは有りません。



 北方領土は日本の固有の領土であると、主張する人がいます。日本の固有の領土であることが『正義』であるようです。固有の領土論を主張する人の多くは、アイヌの視点が乏しいようです。

 和人はアイヌを平定することにより、蝦夷地に進出したわけですが、これをどう見るのかによって考えが違うのかも知れません。普通の人は、軍事力・奸計に劣ったアイヌを、和人が支配して、アイヌの地を日本の領土に組み入れた、と考えるでしょう。
 でも、固有の領土論を主張する人は、ちょっと違う考えをもっているのかもしれない。『人類に属する和人が、畜類に属するアイヌ(あ、犬だ=アイヌだ)を家畜化して、領土を開拓した。』まあ、ここまではっきり言う人は、さすがに居ないけれど。

 参議院議員選挙が始まりました。北海道選挙区には、アイヌ民族の女性が立候補しています。さて、選挙結果やいかに。
 なお、北海道選挙区には、息子で元秘書の道議が、最近、道議を辞職した候補も居ます。辞職の理由は『酒気帯び運転がばれた』。せっかくの選挙なのだから、あまりにもレベルの低いスキャンダルは止めて欲しい。

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