本の紹介-続 日本海と竹島 日韓領土問題の根本史料『隠州視聴合紀』を読む 大西俊輝/著 東洋出版 (2007/10) 388ページ ― 2008年04月02日

本の内容は『隠州視聴合紀』の詳しい解説です。
『隠州視聴合紀』は江戸時代の1667年、隠岐郡代の齋藤豊仙が著した隠岐の地誌書です。第一巻の国代記に次の一節が有ります。
『此二島(鬱稜島と竹島のこと)無人之地、見高麗如自雲州望隠州、然則日本之乾地、以此州為限矣』
最後の、『然則日本之乾地 以此州為限矣』は『しからば即ち、日本の戌亥の地、この州をもって限りとなす』ですので、『日本の北西端はこの州です』という意味になります。
竹島領有論争が日韓で起こったとき、日本の外務官僚川上は、『州』を『島』の意味に解釈して、『日本の北西端は鬱稜島と竹島です』と説明しました。ところが、この解釈には反論が起こりました。『州』は『国』の意味なので、『日本の北西端は隠州です』という意味であるとの反論です。
この部分の解釈は、竹島領有主張と密接に絡んでいます。
竹島は日本の領土と主張する人たちは、『日本の北西端は鬱稜島と竹島です』と読んで、竹島は日本の領土との認識だったと解釈します。竹島は韓国の領土と主張する人たちは、『日本の北西端は隠州です』と読んで、竹島は日本の領土に含まれないとの認識だったと解釈します。
『州』を『島』と読むか『国』と読むかの論争は、『隠州視聴合紀』全体を読むこと無しに、一節のみの解釈論が繰り返されました。
このような状況に対して、大西は、『隠州視聴合紀』全体を読み、その中で、『州』『嶋』『洲』がどのように使い分けられているかを見ることを勧めています。
『隠州視聴合紀』では、次のように使い分けられています。
州・・・すべて、国の意味に使われている
嶋・・・すべて、島の意味に使われている
洲・・・すべて、砂洲のような意味に使われている
大西は、『隠州視聴合紀』全体を精読することにより、『日本の北西端は隠州です』の意味であると説明しています。ただし、大西は、竹島は日本の領土に含まれないとの認識だったとの解釈に立っているわけではありません。
本の一節のみを切り出して、無理やり、自分に都合の良い解釈を作り上げるのではなく、まじめに、全体を理解して、その中で正しい解釈を目指すべきでしょう。大西の本は、『隠州視聴合紀』をまじめに理解しようとする読者にとって、格好のガイドです。