北方領土問題(その4・・・GHQ指令677号と二島返還)2009年02月05日

今週末は北方領土の日なので、北方領土問題を簡単に説明します。

GHQ指令677号(SCAPIN-677)は二島返還へ重要な役割を果たしています。

 行政区域では、歯舞は根室国に所属し、色丹・国後・択捉は千島国に所属しています。千島を行政区域と解釈すると、色丹・国後・択捉を含み、歯舞を含まないので、日本はサンフランシスコ条約で千島を放棄した以上、歯舞以外の請求権を喪失しています。

 しかし、1946年1月末のGHQ指令677号(SCAPIN-677)では、歯舞・色丹は千島に含まれないような表現になっています。なぜ、このように書かれたのか、詳しいことは分りません。
 同年2月、ヤルタ協定が公表されることにより、日本が千島を失うことが連合国の了解だったことが明らかにされると、GHQ指令677号で、歯舞・色丹は千島に含まれていなことを根拠に、日本政府は、ヤルタ協定で言う千島に歯舞・色丹は含まれないとの説明をしています。
 1951年サンフランシスコ条約で、日本は千島の領有を放棄しましたが、同条約国会では、放棄した千島に国後・択捉は含まれ歯舞・色丹は含まれないとの説明がなされています。

 1956年、日ソ共同宣言で、歯舞・色丹の平和条約締結後の日本への引渡しが合意されました。ヤルタ協定では千島のソ連引渡しが連合国間で合意され、サンフランシスコ条約では、日本が千島を放棄することが定められています。ヤルタ協定・サンフランシスコ条約では千島の範囲は定められていません。ヤルタ協定当時、日本で千島と言ったら、色丹島を含むことは明白でした。それにもかかわらず、ソ連が、色丹島返還に合意した事実に、GHQ指令677号が一定の役割を演じていることは充分に推定できることです。

 このように、GHQ指令677号は北方領土問題と深い関係を持ち、さらに、日本の領土喪失に決定的な役割を演じていますが、だからと言って、GHQ指令が直接に領土問題を決定した法的文書であるわけではありません。
 GHQ指令は日本の統治をしていた占領軍が日本政府に宛てた覚書(メモランダム)なので、GHQ指令で使われた千島の範囲が、サンフランシスコ条約の千島の範囲とみなす直接の根拠にはなりません。
 GHQは米国の軍隊であると言う実質面と、極東委員会の下部組織という形式面の2面性を持っていました。GHQ指令677号も実質的な役割と、法的役割が異なります。

(つづく)

北方領土問題(その5・・・今も生きているマッカーサーライン)2009年02月05日

  
 昭和21年6月22日、GHQはSCAPIN1033を命令して、日本漁船の漁業範囲を定めました(昭和23年12月に千島・歯舞での境界を明確にした改訂がおこなわれています)。いわゆる、マッカーサーラインです。この指令は、サンフランシスコ条約締結直前に取り消され、現在は効力をもっていません。

 しかし、北方四島付近での、日本とロシアの国境は、事実上、マッカーサーラインが踏襲されており、北方領土近海漁業に大きな影響を与えています。

 図に『中間線』と書いてある青線は、『北海道海面漁業調整規則による参考ライン』で、この線のロシア側での漁業は原則禁止されており、この海域で密漁をすると日本でも処罰されることが有ります。赤×印は、納沙布岬灯台と貝殻島灯台のちょうど中間地点、赤丸印は、マッカーサーラインで定められていた納沙布岬・貝殻島の中間地点です。現在の中間線は、マッカーサーラインと、ほぼ同じ位置に引かれています。桃色線で囲まれた所は、日ロで認められた昆布漁海域で、ここで昆布漁をするためには、ロシアに入漁料を支払う必要があります。

 国連海洋法条約第十五条では、海の国境線のことを『中間線』といいます。北方四島はロシアの領土であることを日本が正式に認めているわけでは有りませんが、事実上の海の国境になっているので、通常、図の青線ののことを『中間線』と言います。

(つづく)

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