北方領土問題(その6・・・現状は最悪よりもさらに悪い状態です) ― 2009年02月06日
日本は、1951年のサンフランシスコ条約で、千島の領有を放棄しました。北方領土問題とは、放棄した千島に北方四島が含まれるか否かの問題です。実際には、次のようになります。
・北方四島すべて千島・・・大雑把な地理認識
・択捉、国後、色丹は千島・・・行政区分
・択捉、国後は千島・・・明治初年の行政区分、SCAPIN-677
・北方四島は千島ではない・・・幕末・明治初年の条約誤訳の強引解釈
歯舞を千島とする考えは、かなり強引で無理があり、逆に色丹を千島でないとするのは苦しいものが有ります。
1956年の日ソ国交回復交渉に当たった、松本俊一全権によると、当初、松本は歯舞返還は可能でも、色丹返還は困難で、これが成功すれば、日ソ平和条約が締結できると考えていました。交渉をはじめると、意外にも、ソ連は色丹返還をあっさり認めたため、松本は、これで条約締結可能と思ったところ、日本政府は二島返還での妥結を禁止、条約交渉は暗礁に乗り上げました。その後、重光葵が筆頭全権として平和条約交渉を行い、二島返還で平和条約締結の条約草案を日ソ間で合意し、本国に伝えたところ、日本政府はこの草案での妥結を禁止、さらに、アメリカからは二島返還で妥結したならば沖縄を返さないとの恫喝を受け、結局、日ソ平和条約交渉は頓挫しました。(詳しくは、松本俊一著「モスクワにかける虹」)
1956年の日ソ共同宣言では、平和条約締結後に、歯舞・色丹を日本に引き渡すことが約束されました。
ロシアは、歯舞・色丹を、将来、日本に引き渡す条約上の義務を負っていますが、今は、その必要はありません。日本に引き渡すまでは、日本漁船に対して入漁料を徴収したり、歯舞・近海で漁獲した水産物を日本に輸出したりと、日本から経済的利益を得ることが可能で、現にそのようにしています。ロシアとしては、北方領土問題解決による具体的な経済的利益は無いわけです。
写真は、貝殻島を納沙布岬から撮影したもの。
貝殻島と言うから、島であるような錯覚をしている人が多いのですが、写真を見れば分るとおり、島ではなくて海中です。潮の状況によっては、海面上に姿をあらわすこともあるそうです。このような状況の場所は、国連海洋法条約で言う島には該当せず、一般には領海を持ちません。
現在、日本とロシアの中間線(海の国境)は貝殻島を基準に引かれていますが、隣のオドケ島を中間線の基準とすると、数百メートル日本の領海が広がり、貝殻島昆布漁区の一部は日本の領海になるようです。現在、日本はこの部分さえも、入漁料をロシアに支払っています。
もし仮に、日ロ間で北方領土問題が解決したとしましょう。日本にとって、ありえない最悪の解決は、四島すべてロシアの領土となることですが、この場合でも、中間線(海の国境)は数百メートル日本に有利に引かれる可能性が有ります。要するに、現在日本の置かれている位置は、最悪よりもなお悪い状態です。
(おわり)