円周率の値 - ゆとり教育2009年05月02日

今日から、連休の人は多いと思います。公立の学校の土曜休みは、既に定着していますが、私立の中・高校では、土曜日を休みとしていない学校もたくさん有ります。

以前、『ゆとり教育』の掛け声により、義務教育の内容が大きく削減され、授業時間も短縮されました。ゆとり教育による学力低下の弊害が顕著なので、最近は、ゆとり教育路線は変更されていますが、公立学校の土曜休日は変更されていません。

ゆとり教育の時代には、特に理数教育がおろそかにされる傾向があったようです。小学校の数学では、円周率を「およそ3」と教えることが推し進められました。非常にまずいことに、正六角形の周長と円周が一致することになってしまい、正六角形の指導に、困難をきたしました。


2003年の東京大学理系数学入試問題には、次の出題がありました。ゆとり教育で、円周率の値を『およそ3』と教えていることに、数学者としての不満を表明したのでしょうか。

『円周率(π)の値は、3.05よりも大きいことを示せ。』


この問題は、正8角形を考えれば、出来ないことはないのですが、それよりも正十二角形を考えれば、計算が容易になります。

数式で表すと次のようになります。
 sinθ<θ(0<θ)に注意すれば、π>n×sin(π/n)となるので、n=8とすれば正8角形を考えたことに相当し(このときπ>3.06)、n=12とすれば正12角形を考えたことに相当します(このときπ>3.10)。

なお、sin(π/8)はcos(π/4)に半角の公式を使用すれば得られますが、2重根号が出て、計算が面倒になります。
sin(π/12)は次のようにすると簡単です。sin(π/12)=sin(π/4-π/6)=sin(π/4)cos(π/6)-cos(π/4)sin(π/6)。

以上。


東大の入試問題は、3.05よりも大きいことを示すものでしたが、正60角形を考え、少しがんばって計算すれば、3.14であることを示すこともそれほど困難ではありません。すなわち、π>60×sin(π/60)の右辺を計算します。sin(π/60)=sin(18-15°)を使うと楽でしょう。数学が好きな人は、以下の問題を解いてみてください。
問題

(1) 平面上において点Oを中心とする半径1の円を考える。この円の外部にある点Aからこの円に引いた2本の接線のなす角度がπ/6であるとき、OAの長さを求めよ。(2009年慶応大学理工部、問題文を一部改変)

(2) sin(18°) 、cos(18°)を求めよ(2009年慶応大学薬学部、問題文を一部改変)

(3) 円周率(π)の値は、小数点以下第3桁を四捨五入すると、3.14であることを示せ。(入試問題ではありません。こんなのでないでしょう。)


ところで、円周率(π)の値は、sinθのテーラー展開を使ったほうが、気が利いた解答になるかもしれません。
sinθ<θ-θ3/3!+θ5/5! に、θ=π/6を入れれば、π>3.14157が証明できます。
不等式は、両辺の差を取って、5階微分まで考えると簡単に証明できます。

5乗の計算が面倒ならば、θ-θ3/6≦sinθ≦θ-θ3/4√3(0≦θ≦π/6)は簡単に証明できるので、この式にθ=π/6を代入すると、3.12<π<3.144が導けます。

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