トムラウシ遭難考(3)2009年07月22日

 先日、北海道大雪山系トムラウシ山で、18人パーティーのうち8人が凍死する痛ましい事故がありました。このパーティーは危機に直面したときに、全員が人命救助を優先させようとしたのか、疑問です。
 北沼北側で女性客一人が動けなくなり、ガイド一人が付き添ってビバークした。その後、客3人が動けなくなり、客一人(野首氏)とガイド一人が3人の世話をした。このとき、他の人たちはどうしたのだろう。新聞報道では、客の一人、愛知県清須市の戸田新介氏(65)の証言がいくつか伝えられています。
戸田氏:「救助要請をしないといけない。このままでは体力を奪われて凍死するぞ」(東京新聞7/21)
戸田氏:「遭難だと認めて救援を要請しろ」(7月20日朝日新聞)
戸田氏:「ガイド1人が付き添って下山を始めたが、ペースが速すぎてちりぢりになってしまった」(毎日新聞7/17)
さらに「携帯電話は圏外で、救助を求めるには避難小屋まで引き返すか、誰かが下山する必要がある(東京新聞7/21)」と伝えられています。
 戸田氏は、「救援を要請しろ」と強く求めていますが、救援要請するためには、ガイドのうち一人が大急ぎで下山する必要があります。ところが、戸田氏は、ガイド一人が付き添って下山を開始したときのガイドのペースが速いと不満を言っているように感じます。ガイド一人が大急ぎで下山して救助を求め、さらにガイドが全員に付き添って遅いペースで歩くことを期待しているということは、要するに、ガイドが2人必要になります。ところが、2人のガイドのうち、1人は動けなくなった3人に付き添っていたので、行動できるガイドは1人しかいない。もし、戸田氏の主張を実現しようとするならば、動けなくなった3人を見殺しにする必要がある。
 伝えられている情報は断片的で必ずしも良く分りませんが、これらの情報を総合すると、戸田氏の主張は「俺達のために3人を見殺しにしろ」、となります。ちょっと信じがたいことですが、報道されていることが事実ならば、そうなってしまい、ちょっと理解できません。まさか、携帯電話が通じるかどうかを確認することもしないで、無理難題を押し付けようとギャーギャーわめいて、救援活動を妨害していたわけは無いですよね。いくらなんでも、そこまでひどい人はいないでしょう。

 動ける登山客と行動をともにして下山したガイドは、遅い客を見失い、一旦戻って、うろうろした後、途中電波が通じるところで、警察に救援要請したようです(詳細不明)。登山の常識から言えば、このような場合は、リーダーとサブリーダーを決めて、遭難救助要請はサブリーダー、全員の安全管理はリーダーの役目になります。一人のガイドが二役をしたのは、非常にまずい対応です。これが被害を拡大した原因の1つでしょう。若造のガイドには、ジイサン顧客の要求を突っぱねることが出来なかったのかなー。顧客の要求を毅然と突っぱねる教育をしていたのだろうか?

 
 登山客たちは、危機に直面したとき、どのような行動を取ったのだろう。具合の悪くなった3人の客を必死になって救助した人がいたことは確かなようです。
 でも、中には、「ガイドの責任だ」と叫んでいた人もいたかなー。責任の所在がどこにあるのかを追求するのは、下山して安全が確保された後のことです。危機に瀕しているときに、責任云々を主張することは「平和ボケ」「安全ボケ」で、こういうのがパーティーにいると、被害を一層拡大します。(この段は、一般論を書いているもので、今回のトムラウシ遭難の話ではありません。)


今回の遭難の報道を見ると、登山客はガイドに頼りきりの態度だったようにも感じますが、ツアー登山でも、他の登山と同様に、安全は自己責任であることが基本です。登山中の事故に関る費用は、通常、本人の負担となります。たとえば、次のような契約事項が有ります。
登山(ハイキング)ツアーにおいては、登山中のご本人の事故(疾病も)および別行動中の事故(疾病も)があった場合で、その捜査・救護等における一切の費用は、ご本人(またはご家族)の負担となります。(アルプスエンタープライズの登山ツアーの説明書)

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