トムラウシ遭難考-ゴアテックスのレインウエア2009年09月05日

 今年7月16日に、北海道大雪山系トムラウシ山で、ツアー登山パーティーが遭難し、登山客やガイド8人が死亡する事故が発生した。事故の詳しい内容は明らかになっていないが、死亡した登山客7人全員、発見時、雨がしみ込み、中がぬれていたとの報道がある。また、生還した戸田新介氏は、下着までびしょ濡れだったと証言している。雨がしみ込み、中が濡れたのでは、低体温による凍死も有りうることだろう。
 ゴアテックスのレインウエアを着用しても、下着までびっしょり濡れることはあるのだろうかと、疑問だったので、この点、モンベルに問い合わせ、丁寧な回答をいただいた。

要約すると。
・ゴアテックス素材は防水透湿性に優れた素材だが、濡れるリスクはある。
・濡れる原因には、いくつかあって、『透湿性能以上の発汗で内部から濡れる』『開口部からの雨水の浸入』『破れ、キズ、長期使用による生地自体の劣化』などが考えられる。
・長期使用による撥水性能の低下は、透湿性能の劣化につながるため、発汗で濡れる可能性が高まる。
・適切メンテナンス、開口部から雨水が侵入しないようにして、汗をかかなければ、下着までびっしょり濡れることは避けられる。

 要するに、限界を知って、適切に使わないとだめですよ、と言うことである。
 トムラウシ遭難は、まともに雨具を使えないような不良登山者だったのだろうか、それとも、報道や生存者の証言が誤りなのだろうか。
参考)モンベルの回答(一部省略)

 ゴアテックス素材は防水透湿性に優れた素材で、弊社製品の中でもレインウェアをはじめ、アルパインクロージングや靴、ギア小物等に幅広く使用しています。
 ゴアテックスはアウトドア用品の素材として非常に評価の高い素材ですがゴアテックスのレインウェアを着ていても、レインウェアの内側が濡れてしまうことは、残念ながらございます。
 要因は様々ですが、例えばゴアテックスの透湿性能以上に汗や蒸れが発生したり、ジャケット、パンツの隙間(襟、袖口、裾等)から雨が侵入してくることも考えられます。
 また、長年ご使用頂くことによる生地自体の劣化、キズ破れ、撥水性能の低下、使用環境状況等も濡れてしまう要因として考えられます。
 ゴアテックスのレインウェアを着ていても、濡れてしまうリスクはあるということをまずはご理解頂ければと存じます。
 ただ、ゴアテックスを使用したレインウェアには、ジャパンゴアテックス社が定める商品品質の規格基準がございまして、弊社ではその基準を全てクリアしたものをお客様へ販売させて頂いております。


(上記回答で、撥水性能の低下と濡れの関係について再質問をしたところ、以下の回答があった。一部省略。)

 撥水性能の低下による濡れの症状の原因は、主に生地の透湿性能を妨げる表面の水の膜です。表面生地の撥水性能が低下すると、表面生地が保水して生地の上に水の膜を形成するような状態になってしまいます。
 ゴアテックス素材により表側から内側へ漏水してくることはございませんが、内側からの蒸れが表面生地の水の膜に妨げられて外側へ放出されなくなってしまいますので、内側の蒸れによって濡れてしまうことになります。
 表面生地が濡れるとひんやりして濡れたように感じることもございますし、場合によっては表面生地から毛細管現象により水が表面を伝って襟、裾、袖から入ってくることも可能性としてございますので、撥水性能は濡れを防止するための大切なポイントです。

 メンテナンスを適切に行ない、開口部から雨水が侵入しないようにして、汗をかかなければ、下着までびっしょり濡れることは避けられるでしょう。

参考)ジャパンゴアテックス株式会社のホームページには、以下の説明がある。

すべてのゴアテックス®プロダクト(製品)には、黒いタグが付いています。
これは、高機能素材ゴアテックス®ファブリクスが、厳しい品質基準によってつくられたものであることを保証するもの。「GUARANTEED TO KEEP YOU DRY™」とは「ウェアの外側の水分が内側に入りカラダを濡らすことは決してないことを保証します」という意味です。

使用していくうちに、撥水性が低下してくるとウェアの表面がベタッと濡れたような状態となりますが、この場合もウェアの内側に水が浸入しているわけではありません。

参考)ゴアテックス着用で、漏水と感じる場合について、ジャパンゴアテックス株式会社のホームページには、以下の説明がある。 http://www.gore-tex.jp/support/care/index_6.html

漏水と感じたら
あなたのゴアテックス®アウターウェアが漏水したと思ったら次のポイントをチェックしてみてください。次のどれにも当てはまらないときや、不明な点がある場合はご遠慮なくカスタマーサービスセンターへ電話でご連絡ください。あなたのウェアの状態を検査の上、迅速に対応させていただきます。

■撥水性が低下していませんか?
あなたのウェアの表生地は雨を弾いていますか?もし雨の水滴が弾けずにウェアの表面をベタッと濡らしたようになっていたら、それが原因であたかも漏水したように感じたのかもしれません。その場合は、すぐに撥水性を回復してください。

■適切なインナーを着ていますか?
汗による水分をため込んでしまう性質をもった、綿などの下着を着用していると、自分がかいた汗であたかも外側から水が浸入したように感じることがあります。インナーウェアには、吸水速乾性のある素材のものをお奨めしています。

■濡れたところに長時間座っていませんでしたか?
濡れたところに長時間座っていると、その水分が水蒸気として逆に浸入してくることがあります。透湿性が高いがゆえに起こる現象ですが、濡れたところに座るのをやめ立ち上がり、しばらくしてサラッとした感じに変われば問題ありません。
お尻の下に透湿性のない敷物を敷いて座ればこのような現象は防ぐことができます。

■袖口、ベンチレーションからの浸入ではありませんか?
雨中で行動するときに、袖口や襟まわりから水が浸入することがあります。いったん浸入するとインナーや中間着を濡らしそれが他にも伝わってゆき、あたかも漏水したかのようじ感じることがあります。そのようなことを防ぐために、雨中で行動するときはジッパーやベルクロをしっかりと閉めてください。また、背中などにベンチレーションがあいているウェアの場合、そこからの水の浸入には十分注意してください。


追記)ゴアテックスの漏水について、ジャパンゴアテックス株式会社の説明を記載しました。(2009.09.29)
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2009/09/29/4603611

* * * * * *

<< 2009/09 >>
01 02 03 04 05
06 07 08 09 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30

RSS