『「東京裁判」を読む』を読む2009年11月17日

半藤一利・保坂正康・井上亮 著 「東京裁判」を読む (日本経済新聞)2009/8
をちょっとだけ読みました。著者は裁判記録を読んでいるのか疑問に思いながら読み進みました。

 第2章「検察側立証を読む」では、起訴状について書かれていますが、その後の対談で、
『半藤:ところでね、戦犯の罪がA級B級C級になっていますけれど、これは本来A類B類C類とすべきだよね。なぜ「級」って訳しちゃったのかな。』
『保坂:もともとの原文は「クラス」、あるいは「カテゴリー」なのかな』
『半藤:原文を見なければ分らないけれど、クラスでしょう。・・・』

 極東国際軍事裁判の記録は公開されているので、調べればすぐに分ることです。
 起訴状英文はGroup1,Group2,Group3、起訴状和文は第一類、第二類、第三類です。A級B級C級と呼ばれているのは、極東国際軍事裁判所条例英文で(a)(b)(c)と分類されているためです。
 ということで、P119で半藤らの本は、読み気が失せました。
 おそらくこの本は、日経新聞者の編集部の何人かが、東京裁判の記録の和文の一部をざっと読んで適当にまとめたものに、半藤・保坂、および、日経編集委員の井上の対談をつけたものなのでしょう。対談者は東京裁判の記録を読んでいないのかな。

 ただし、この本の出版には一定の意義が有ります。統一教会系の右翼学者や、ギャグ漫画家などが中心となって、極東国際軍事裁判を批判したことがありましたが、まともに資料を見ていない杜撰極まりないものでした。このようなデタラメ吹聴に対して「資料は公開されていて、誰でも簡単に見られるのですよ」との警告を与える効果は有るでしょう。

* * * * * *

<< 2009/11 >>
01 02 03 04 05 06 07
08 09 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

RSS