菅の外交(永井陽之助)-日本は米軍のために消費税を増税すべきか2010年06月13日

菅直人が総理大臣に就任し、所信表明演説が、先日金曜日に行われました。菅は若いころ、永井陽之助に外交理念を学んだと話しました。
私は若いころ、イデオロギーではなく、現実主義をベースに国際政治を論じ、「平和の代償」という名著を著された永井陽之助先生を中心に、勉強会を重ねてまいりました。わが国が、憲法の前文にあるように、「国際社会において、名誉ある地位を占め」るための外交とは、どうあるべきか。永井先生との議論を通じ、相手国に受動的に対応するだけでは外交は築かれないと学びました。この国をどういう国にしたいのか、時には自国のために代償を払う覚悟ができるのか。国民一人ひとりがこうした責任を自覚し、それを背景に行われるのが外交であると考えます。(所信表明演説から)
 永井陽之助は東京工業大学の教授で、学生のときにゼミか何かで学んだのだろうと思います。東京工業大学は理系の大学ですが、一般教養の講座がいくつかあって、永井陽之助は国際政治学の講座を持っていました。多くの学生は理学や工学に興味があって、文系科目は興味がなく、レポートで単位をとるだけだったので、永井教授と議論する学生は異色だったと思います。そういう時代だったのかもしれない。
 当時、社会党の石橋政嗣が非武装中立論をとなえ、それを批判する論拠として、永井陽之助の「平和の代償論」がありました。永井は社会党の平和主義に反対しており、国際政治の原則は弱肉強食(パワーポリティックス)であると解き、日本は平和主義から脱却すべきであると解いていました。

 ソ連が崩壊し、東西対立が消滅したとき「平和の配当」との言葉が使われましたが、永井の「平和の代償」を意識した表現だったのでしょう。永井の「平和の代償論」が正しいのならば、東西冷戦消滅後は「平和の配当」により、国際社会は豊かになるはずでした。実際は、そんな事はなく、もし、こんな古臭い理論を覚えているならば「平和の代償論」の誤りに多くの人は気づいたはずです。

 菅が所信表明演説で、永井の「平和の代償」を名著としたのは、日米安保条約の負担を増やして、そのための増税を求める布石だろうか。
 菅直人の所信表明演説に、何か危険なものを感じます。

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