トムラウシ遭難考(11) ― 登山を決定したガイドの判断は誤りか2010年07月01日

2009年7月16日、トムラウシ中高年ツアー登山の大量遭難があった。悪天候の中、次々と低体温症を発症し凍死した。登山で遭難してはいけないので、遭難した場合、登山したことは誤りであったと言える。その意味で、昨年7月16日のトムラウシ遭難では、結果として登山を決行したガイドの判断は誤りだった。しかし、一般的に言って、同様な気象条件・パーティーの状況で登山を決行することは誤りなのだろうか。

「トムラウシ山遭難事故調査報告書」では、ガイドの判断ミスとしている。
本遭難事故要因の検証と考察―現場におけるガイドの判断ミス
 本遭難事故は、一義的にはリーダーをはじめガイド・スタッフ(以下、スタッフ)の判断ミスによる「気象遭難」と言えるだろう。
 まず、第1 のポイントは、初めから「停滞」という判断は頭になかったようだが、では、どのような判断根拠、あるいは目算があってヒサゴ沼避難小屋を出発したのか、大いに疑問が残る。
・・・
 明確な判断基準のないまま、「ひとまず出発してみよう」という決断に至ったと思われる。しかし、「ひとまず出発してみよう」という判断は、途中で引き返したり、別のコースに避難する可能性も含んだ判断である。それであるなら、夜明けとともにリーダーは若いスタッフを稜線のヒサゴ沼分岐辺りまで、空身で偵察に走らせるという方法もあったのではないか。それにより出発遅延の30 分という時間も、有効に使えたはずである。経験不足から思いつかなかったのかもしれないが、偵察によってかなり正確な判断材料が取得できたことであろう。いずれにしろ、スタッフ3 人の危機意識や情報の共有ができておらず、意思疎通も不十分だったことが窺える。
  ・・・
 次に第2 のポイントは、稜線のヒサゴ沼分岐から天沼や日本庭園にかけての判断である。「ひとまず出発してみよう」と稜線に出たものの、カール状のヒサゴ沼と違ってまともに西風を受けるので、風雨の激しさは想像以上だったはずである。

 「どのような判断根拠、あるいは目算があってヒサゴ沼避難小屋を出発したのか、大いに疑問が残る」としているが、いったい「どのような判断根拠」を期待しているのだろう。ツアー企画会社や旅行団体などがマニュアルを整備していて「それにのっとって判断しなさい」としているならばともかく、現在は現場のガイド任せであり、ガイドが過去の経験から安全だと判断して、出発することになっているのだから、今回のツアーガイドも「過去の経験から安全だと思った」 以上の根拠はないだろう。
 山と渓谷2010年6月号には、同じ日に、大雪山(旭岳)を登山した記録がのっている。山渓スタッフとともに、登山未経験の女性が今回の遭難パーティーと同一コースを2日遅れで登山したものであるが、遭難した日には旭岳に登り、白雲岳避難小屋に入っている。旭岳とトムラウシは近いので、気象条件は類似しているが、山渓取材陣も登山を決行しているので、トムラウシ遭難パーティーが登山決行を判断したこと自体は、他のパーティー同様である。
 もし、トムラウシ山遭難事故調査報告書のように、『初めから停滞という判断』を期待するならば、『これこれの条件では登山を中止しなさい』と明記されたマニュアルを整備し、一般登山者も同様に規制すべきである。

 次に、トムラウシ山遭難事故調査報告書の「本遭難事故要因の検証と考察」の章は、だれが書いたのか明記されていないが、まじめな気持ちで書いたのだろうか。それとも、ガイドの責任であるとの結論を出すために、作文しただけなのだろうか。『「ひとまず出発してみよう」という決断に至ったと思われる』と書かれているが、このように思える根拠が示されていない。それなのに、『「ひとまず出発してみよう」という判断は、』以下の文章は、「ひとまず出発してみよう」と思ったことを前提にした記述となっており、「ひとまず出発してみようという決断」でなかったならば、まったく意味をなさない文章であり、事故報告書としては、ずさん極まりない記述になっている。


「トムラウシ山遭難事故調査報告書」には、ガイドの能力に対して、不思議な記述がある。
ガイド・スタッフの能力に関する問題
 それぞれのスタッフは登山歴やガイド歴はそれなりにあったと思うが、危急時における対応経験がどこまであったのか、また、危険予知能力(天候変化の予知能力、地図からの地形判断力、参加者の状況把握能力、時間経過の管理能力など)をどれほど持ち合わせていたのか、疑問が残る。
 危急時の対応訓練をどれだけしていたのか、この点は解明しなくてはならないが、「危険予知能力」とは、いったい何を言っているのだろう。天候変化を的確に予知するなど、超能力者でも無ければ、できないことである。
 「天気図を読む」「地図から地形を判断する」程度の一般的能力は必要であり、今回のガイドA,ガイドBの能力が欠如していたとは思えない。また、「参加者の状況把握」「時間経過の管理」を含めて、ある程度の能力が必要なことは言うまでもないが、ガイドAは社団法人日本山岳ガイド協会正会員団体マウンテンツアーガイドだったので、社団法人日本山岳ガイド協会が、よほどずさんなことをしていない限り、「天気図を読む」「地図から地形を判断する」「参加者の状況把握」「時間経過の管理」などの、一般的能力があった点は問題ないだろう。
 報告書の著者は疑問があるならば、社団法人日本山岳ガイド協会が、いかなる判断で正会員にしているのかを明記すべきでことである。
 気象遭難を『ガイドの予知能力の不足』などと、わけのわからない原因に求めてはならない。

後日、続きを書きます

トムラウシ山遭難考(12)―体感温度2010年07月02日

 気温がそれほど低くなくても、風が強い時は、結構寒く感じることがある。風の影響を考慮して、体感温度を求めるときは、風速1m/sあたり気温-1℃で換算する、簡易的な手法がつかわれることが多い。
 しかし、セーターのような風を通しやすい素材と、ウインドブレーカーのような風を通しにくいものを着ている場合とでは、風による体感温度はずいぶん異なってくる。風を通しやすい着衣の場合は、風速1m/sあたり気温-1℃換算で大きな違いはないような気もするが、ウインドブレーカー・レインウエアーなど耐風性着衣の場合は風速2~3m/sあたり気温-1℃程度のようなに感じる。


 昨年7月16日に、北海道大雪山系トムラウシ山で、中高年ツアー登山パーティーの大量遭難事故があった。夏としては低温で強風という気象条件の中で、低体温症を発症して凍死したものである。事故当時には、豪雨の中、全員が下着までずぶぬれになったとの報道もなされた。その後の検証では、土砂降りのような雨ではなく、衣服がびしょ濡れになったという人は多くなかったことが確認されている。
 当時、風は強かったので、これが低体温症の発症に関係していることは間違いない。では、当時の寒さを予想するために、風速1m/sあたり気温-1℃換算の簡易的手法で良いのだろうか。

 事故後、ガイド業や事故関係者とは利害関係のない第三者で構成する「トムラウシ山遭難事故調査特別委員会」が設置され、今年3月に「トムラウシ山遭難事故調査報告書」が公開された。この中には、体感温度に関連して、いくつかの記述がある。
対流:
 風によって体温を下げる現象。外気温が10 ℃であっても、風速10 m /sec では体感温度は0℃になっている。(P49)
 ヒサゴ沼より稜線に出た時から雨と風が強く、行動に支障を来す。気温6 ℃、風速15 m/sec では、体感温度がマイナス10 ℃になる。(P51)
 上の2つは、風速1m/sあたり、気温-1℃で換算する、簡易的な方法で、低体温症を予想しようとしている。しかし、気象条件の詳しい解説の部分では、体感温度についても、より深い説明がなされている。
 気温が同じであっても、風がある時の方がより冷たく感じる。この現象について、登山界では昔から、風速1 mにつき体感温度は約1 ℃下がるという表現がよく用いられてきた。表1 はその元となったデータである。この表で、今回の遭難時の気象条件に近いところを見てみると、気温が4 .4 ℃で風速15 .6 mの時には体感温度がマイナス11 .7 ℃となっており、非常に低いことがわかる。
 ただし、表1 のようなデータはもともと、南極において、さまざまな気温や風速の時に水が何分で凍るか、という実験から得られたものである。したがって、風速1 mについて約1 ℃体感温度が下がるといったことは、裸体の状態での話と考えるべきである。
 いっぽう実際の山では、風雨の際には、衣類を着た上に雨具を着る。したがって、気温が5 ℃で風速15 mの時に体感温度がマイナス10 ℃になるかといえば、必ずしもそうではない。つまり、気温と風速に加えて、衣類による防風・防寒の効果を加味した上で体感温度を考える必要がある。(P65)
 寒風吹きすさぶ登山の最中に全裸になる人はいないので、風速1m/sあたり気温-1℃換算の簡易的な手法は、誤差が大きすぎるだろう。

トムラウシ山遭難考(13)―低体温症2010年07月06日

昨年7月16日に、北海道大雪山系トムラウシ山で、中高年ツアー登山パーティーの大量遭難事故があった。夏としては低温で強風という気象条件の中で、低体温症を発症して凍死したものである。トムラウシ山遭難事故調査特別委員会より、今年の3月初めに最終報告書(トムラウシ山遭難事故調査報告書)が公開されている。(http://www.jfmga.com/pdf/tomuraushiyamareport.pdf

 報告書には、低体温症の説明が詳しく書かれており、『低体温症(Hypothermia)について』『低体温症の考察』『運動生理学的の観点から見た本遭難の問題点と今後に向けての提言』の3つの章で扱っている。 このうち、『低体温症(Hypothermia)について』の章は、低体温症の一般的解説の後、本遭難事故における低体温症の発症について書かれている。『低体温症の考察』の章は、今回の遭難で生還した人の医学的所見を詳述し、最後に、低体温症にならないための提言をしている。

 『低体温症(Hypothermia)について』の章後半の「本遭難事故における低体温症の発症について」書かれた部分に、疑問を感じる記述がある。
生存者ほぼ全員が低体温症について知らなかった、と答えた。… 2 名のガイドは低体温症については知っていたが、その詳細については知らなかった、と述べた。(P51)
 この文章を読むと、登山客は登山に対して無知で、ガイドも、知識が乏しかったような印象を受けるだろう。生還した登山者には、登山客のレベルが低かったのに、ガイドのケアが不十分だったと証言しているものもいるが、このような証言に沿った記述になっている。しかし、「低体温症」の用語は、最近になって使われるようになったもので、これまでは「疲労凍死」が一般的に使われていたので、医療関係以外の人が、最新の医療用語を知らなくても、不思議はないだろう。また、「2名のガイドは低体温症の詳細については知らなかった」と書いているが、生還した2名のガイドは医師ではないので低体温症の詳細を知らないのは当然だろう。

 この件に関して『運動生理学的の観点から見た本遭難の問題点と今後に向けての提言』の章には、もう少しまともな記述がある。
以前は、低体温症という用語ではなく、疲労凍死という言葉が使われていた。…なお今回の生還者も、疲労凍死という言葉は多くの人が知っていたが、低体温症という言葉についてはほとんどの人が知らなかった。低体温症という用語は近年使われることも多くなってきたが、知らない人も少なくないことが分かる。(P64)


 北沼分岐で長時間待機したために、ほぼ全員が低体温症になったかのように書かれている。
ここ(北沼分岐)でほかの参加者は耐風姿勢(しゃがんだ姿勢)で待機することになる。北沼分岐出発は11時30分過ぎ。強風下での待機時間が長く、ほぼ全員が低体温症になる。この時間の長さが、今回の遭難の重要なポイントになる。(P51)
 この記述は、本当なのだろうか。もし、本当だとしたら、なぜ低体温症になったのか、私には理解できない。つまり、
聞き取り調査によると、北沼分岐の待機でほぼ全員が低体温症の徴候を示していた。(P51)
待機の時は猛烈な寒さが襲い、次に「止まらない震え」がきて、次に「眠気」が襲う。(P52)
 とのことであるが、待機の時に猛烈な寒さが襲ったのならば、なぜ、防寒をしなかったのだろう。装備不良で防寒衣料が全くなかったのだろうか。10人のパーティーだと、装備不良のものが数名いても不思議ではないけれど、そういう場合は、余分に防寒具を持っている者が貸すのが当たり前ではないか。全員が装備不足だったのだろうか。それとも、猛烈な寒さが襲ったのに、気がつかないでボンヤリしていたのだろうか。
 報告書は、どのような衣服を着用し、ザックにはどのような防寒具があったのかを明らかにしていないので、事故解明には、全く不十分である。


 ところで、北沼ビバーク地点について、『プロのガイドがビバーク・サイトとして選ぶ場所ではない』との記述がある。  
強風に対して無防備でここ(第1の遭難場所)に滞在したら、低体温症になることは想像できただろう。渡渉したと思われる場所のすぐ上に、第1の遭難場所がある。岩がゴロゴロした遮蔽物が何もない場所で、プロのガイドがビバーク・サイトとして選ぶ場所ではない。(P30)
 中程度以上の低体温症を発症したときの処置として、身体を動かしてはいけないとする指摘がある。
http://www5.ocn.ne.jp/~yoshi515/teitaion.htmlhttp://www.geocities.jp/kyongsea/sub660.htm
 ガイドは低体温症の処置の知識があったために、患者をなるべく動かさないようにと、その場でビバークを決めたのではないだろうか。もし、この処置が不適切だとするならば、どうすればよかったのか提言する必要がある。ところが報告書には直ちにビバークすべきと、明記されている。
すでに体力を非常に消耗していた北沼分岐においては、それ以上体力を消耗しないように、直ちにビバークすべきだったことになる。(P70)

トムラウシ山遭難考(14)―低体温症の原因2010年07月07日

昨年7月16日に、北海道大雪山系トムラウシ山で、中高年ツアー登山パーティーの大量遭難事故があった。夏としては低温で強風という気象条件の中で、低体温症を発症して凍死したものである。トムラウシ山遭難事故調査特別委員会より、今年の3月初めに最終報告書(トムラウシ山遭難事故調査報告書)が公開されている。(http://www.jfmga.com/pdf/tomuraushiyamareport.pdf

 本遭難の原因が低体温症であることは明らかであるが、低体温症に至った原因について、正確なことは分かっていない。当初、豪雨の中を歩いたために全員が下着までビショヌレになったとの情報もあったが、報告書では、雨による濡れが原因ではないとしている。
まず、低体温症が起こる現象についても想像と違っていたことは、当初、我々は雨で衣服が濡れ、それに強風が加わり、体表面での著しい対流で体温が奪われたために体温が下がったものと思っていた。しかし、アミューズ・パーティも、伊豆ハイキングクラブや同時期に美瑛岳で遭難したパーティも、衣服がびしょ濡れになったという人は多くなかった。(P60)

 この日は、風が強かったので、低体温症に風が関係していることは明らかだろう。しかし、当時の風速は20m/sec程度とされているが、これは時速に直すと72㎞/時であるので、この程度の風はバイクに乗る人ならばだれでも体験しているものである。加えて、風速は地上10m以上で測るものなので、人間が活動する地表面付近は一般に0.3から0.7倍程度、風は弱くなる。もし、20m/sec程度の風で低体温症になるならば、バイクライダーの多くは走行中に低体温症が発症することになるだろう。
 トムラウシ遭難で低体温症になった最大の要因を「風の強さ」として良いのだろうか、大いに疑問である。

 ただし、主たる原因として、いまのところ強風以外に考えにくいので、報告書では最大の要因を「風の強さ」としている。
 体力、熱量の補給、体温の維持ができない状態では風雨の中は歩くべきではなく、特に基礎代謝、体力の低下のある50 ~60 歳代は進むべきではない。それを決める目安は「風の強さ」だろう。低体温症には徐々に体温が下がっていくタイプと急激に下がるタイプがあると思われる。この二つを分けるものは「濡れ」と「風の強さ」である。…  体温を下げる最大の要因は「風の強さ」にあることから、風を避けるビバークを選び、体温をこれ以上下げない、疲労を貯めない、食物が取れる環境で風雨をやり過ごすのが最適であり、生命を維持することができると考える。当然のことながら、防寒用のウェアを早め早めに重ね着をして、体温を逃がさないようにすることが第一である。そして「風の強さ」は生死を分ける分岐点になることを登山者は十分認識すべきである。(P61)
 この、記述は、もっともなのだけれど、20m/secの風で低体温症になってしまうのだとしたならば、低山ハイキング以外、登山はできなくなってしまう。高山で20m/secの風が吹く可能性がある日など、夏場でも月の半分はあるだろう。
 自分で、防寒用のウェアを早め早めに重ね着できない者は、そもそも登山の資格はないのだろうけれど、こういう人たちをツアー登山で危険な山岳に連れて行ってしまうとしたら恐ろしいことである。

報告書は、北沼分岐での待機が低体温症の主たる原因としながらも、歩き続けたほうが良かったとはしていない。
今回の遭難パーティにおいては、北沼分岐での待機が体温を下げた大きな要因である、と前述した。しかし、伊豆ハイキングクラブや美瑛岳の例では、行動中に症状が悪化している。(P60)
すでに体力を非常に消耗していた北沼分岐においては、それ以上体力を消耗しないように、直ちにビバークすべきだったことになる。(P70)

 今回の遭難で、ガイドの対応が不適切であったとの意見もある。遭難したのだから、結果的に見たならば不適切であったのは間違いないが、ツアー客の中に低体温症を発症したものが現れた時、ガイドはどのような対応をとればよかったのだろう。報告書によると、低体温症の発症と登山中の低体温症について、十分解明されていないようであり、そうだとすると、適切な対応が取れなくても仕方なかったのではないだろうか。
低体温症の症状の出現、進行度に関しては、教科書を塗り替える必要があると思われた。(P61)


なお、報告書には、低体温症の知識に関して、不思議な記述がある。
低体温症は冬に起こることを知っていても、真夏にも起こり得ると知っている登山者は少ない。過去にも夏山において低体温症の遭難事故があったにも関わらず、登山者はその教訓を学習する手段が少なかった。(P60)
2003年に羽根田治/著『ドキュメント気象遭難』が出版されるなど、多くの登山者にとって、冬季以外でも低体温症が起こることは良く知られたことではないだろうか。もっとも、報告書で書かれている『登山者』がツアー登山参加者のことであるならば、彼らが教訓を学習することが少ないのは、当然なのかもしれない。

トムラウシ山遭難考(15)―体感温度2010年07月08日

昨年7月16日に、北海道大雪山系トムラウシ山で、中高年ツアー登山パーティーの大量遭難事故があった。夏としては低温で強風という気象条件の中で、低体温症を発症して凍死したものである。トムラウシ山遭難事故調査特別委員会より、今年の3月初めに最終報告書(トムラウシ山遭難事故調査報告書)が作成・公開されている。(http://www.jfmga.com/pdf/tomuraushiyamareport.pdf

 本遭難の原因が低体温症であることは明らかであるが、低体温症に至った原因について、正確なことは分かっていない。報告書では低体温症に至った最大の要因を「風の強さ」としている
 当時、風速20m気温5℃程度だったようなので、風速1mを1℃に換算する簡易法を使うと、当時の体感温度はマイナス15度で、これでは低体温症になるのも無理はないような誤解をすることもあるだろう。しかし、体感温度を、風速1mを1℃に換算する簡易法は、裸体のときの見積もりであって、着衣がある場合は、それほど体感温度が下がるわけではない。

 以下、着衣の影響を考えた体感温度を求める


物理が苦手な人は飛ばしてください。

人間の体は複雑な形をしているので計算が難しいから、直径30cm高さ150cmの円柱に置き換えて考える。最初に、物理(流体)の問題を解く。ただし、空気は乾いているものとして計算する。


問1:
 直径30㎝・高さ150㎝・温度36℃の円柱に、風速20m/sec・温度5℃の強風が吹き付けているとき、円柱側面から奪われる熱量はどれだけか。

問2:
 風速5m/secの風が吹き付けているとき、問1と同じ熱量が奪われるのは、風の温度は何℃のときか。
 また、風速3m/secの風が吹き付けているとき、問1と同じ熱量が奪われるのは、風の温度は何℃のときか。

問3:
 直径30㎝・高さ150㎝・温度36℃の円柱に、厚さ5㎜の発泡ウレタンが巻きつけられている。風速20m/sec・温度5℃の強風が吹き付けているとき、円柱側面から奪われる熱量はどれだけか。

問4:
 風速5m/secの風が吹き付けているとき、問3と同じ熱量が奪われるのは、風の温度は何℃のときか。
 また、風速3m/secの風が吹き付けているとき、問3と同じ熱量が奪われるのは、風の温度は何℃のときか。

問5:
 発泡ウレタンが1cmのとき、問3,4と同様な問題を解け。

問6:
 発泡ウレタンが2cmのとき、問3,4と同様な問題を解け。


問1、問2の解答の準備

最初に、次の記号・値を使用する。

k:空気の熱伝導率でk=0.024 W/m・K
ν:空気の動粘性係数でν=16 μm2/sec
Pr:空気のプラントル数でPr=0.7
α:発泡ウレタンの熱伝導率で、α=0.032 W/m・K
d:円柱直径でd=0.3 m
u:空気の流速
⊿T:円柱と空気の温度差
S:円柱側面の表面積でS=1.41m2

空気の強制対流熱伝達に対して次の式が成り立つ。

レイノルズ数Reは次式である。
  Re=u×d/ν
今回の問題では空気の流速は3m/sec以上なので、Re>40000となり乱流域であるので、ヌセルト数Nuに対して次式が成り立つ。
  Nu=0.0266×Re ^0.805×Pr ^0.333  ( ^は累乗を表す)
空気流の熱伝達率をhaとすると次式となる。
  ha=Nu×d/k
円柱側面から奪われる熱量をQと書くと次式となる。
  Q=ha×⊿T×S

問1の解答
 ⊿T=31、u=20を代入して、
  Q= 2540W =52263kcal/日  となる。

問2の解答
 u=3のとき、Q=2540 W となる空気温度を求めると、
空気温度=-106.7℃

 u=5のとき、Q=2540 W となる空気温度を求めると、
空気温度=-58.6℃
 

問3の解答
 発泡ウレタンの熱伝達率をhbと書く。
  hb=α×(断熱材厚さ)
 発泡ウレタンと空気の合計の熱伝達率をhと書くと次式が成り立つ。
  1/h = 1/ha + 1/hb
 (ただし、円柱の曲率の影響は無視した)
 円柱側面から奪われる熱量をQと書くと次式となる。
  Q=h×⊿T×S
(円柱が発泡ウレタンの厚みだけ太くなる影響を無視した)

  ⊿T=31、u=20を代入して、Q=252W=5194kcal/日 となる。

問4の解答

u=3 m/sec 空気温度 -6.1℃ 失う熱量は1日あたり5200kcal
u=5 m/sec 空気温度 -1.3℃ 同上
u=7 m/sec 空気温度 0.9℃ 同上
u=10 m/sec 空気温度 2.7℃ 同上
u=15 m/sec 空気温度 4.2℃ 同上
u=20 m/sec 空気温度 5℃ 同上



問5,6の解答

 発泡ウレタン1cmのとき、
   Q= 132.8W =2733kcal/日
   u=3のとき、空気温度 -0.7℃
   u=5のとき、空気温度 1.8℃
   u=10のとき、空気温度 3.8℃

 発泡ウレタン2cmのとき、
   Q= 68.2W =1400kcal/日
   u=3のとき、空気温度 2℃
   u=5のとき、空気温度 3.3℃
   u=10のとき、空気温度 4.4℃


注意)空気流速は3~20m/secとした。空気流速が2m/sec以下になると乱流ではなくなるのでヌセルト数の式が異なる。無風に近い場合は自然対流の式を使う必要がある。計算が面倒になるので、ここでは風速3m以上とした。

物理の問題はこれでおしまいです。



人間の形状を円柱で置き換えた簡易モデルで計算すると、人間に断熱材がついていない場合、20m/sec・5℃の強風では1日あたり5万キロカロリーの熱が奪われる。これは、-60℃・5m/secの風に相当する。これでは10分もしないうちに凍死するだろう。しかし、誰でも、皮下脂肪と皮膚に守られているので、これほど冷えることはない。

5mmの発泡ウレタンに相当する断熱効果があるときは、20m/sec・5℃の強風では1日あたり5000キロカロリーの熱が奪われる。これは、-1.3℃・5m/secの風に相当する。一般に、風速が1m増えるごとに体感温度は1度下がるということがあるが、皮下脂肪の断熱性能は5mm弱の発泡ウレタンに相当するのだろう。

10mmの発泡ウレタンに相当する断熱効果があるときは、20m/sec・5℃の強風では1日あたり2700キロカロリーの熱が奪われる。ゆっくりした活動中の発熱はこの程度だろうか。これは、1.8℃・5m/secの風に相当し、また3.8℃・10m/secの風に相当する。歩行中はこの程度の断熱性能の衣服を着ているはずなので、風速5mの違いは体感温度2℃の違いに相当することになる。逆に言うと、体感温度1度の違いは風速2~3mである。実際に登山しているときの感覚はこの程度ではないだろうか。

20mmの発泡ウレタンに相当する断熱効果があるときは、20m/sec・5℃の強風では1日あたり1400キロカロリーの熱が奪われる。安静時の発熱量である。これは、3.3℃・5m/secの風に相当し、4.4℃・10m/secの風に相当する。登山で長めに休息をとったときに寒いと感じないためには、この程度の断熱性能の衣服を着ているはずなので、風速5mの違いは体感温度1℃の違いに相当することになる。


以上、簡単なモデルにより体感温度について以下のことが分かる。

 強風低温のとき、全裸でいる場合は、風速1mあたり1度の体感温度になる。しかし、着衣がある場合の体感温度は裸体のときとは異なる。
 登山で平坦地を歩いていても寒さを感じない程度の着衣だと、風速2~3mが体感温度1度に相当し、長めの休息時に寒さを感じない程度の着衣だと風速5mが体感温度1度に相当する。(これは外気温が5℃の場合で、外気温が異なれば風速と体感温度の関係も異なる。)

 トムラウシ遭難ではどの程度の着衣だったか詳しいことが分からないが、風速20m気温5℃程度だったようなので、ゆっくりした行動中に寒くない程度の着衣の場合は体感温度-1℃程度、長めの休息でも寒くならない程度の着衣の場合は体感温度2℃程度だったことになる。

 空気が乾いているものとして、人間の形状を円柱で置き換えた簡易モデルで、着衣の影響を加味した体感温度の検討をした。湿度の影響や形状の影響を考えるともう少し違った結果になるだろう。
 しかし、普通に着衣していたならば、強風の影響が低体温に大きく影響したとは考えられない。

トムラウシ山遭難考(16)―低体温症の主たる原因は強風ではない2010年07月08日

『トムラウシ遭難考(15)―体感温度』の続きです。
ひょっとすると計算間違いをして誤った結論を出している可能性もあります。
 
 トムラウシ遭難当時の気候は、気温5℃、風速20m/secだったので、遭難の主たる原因を「強風による体温低下」とする説があるが、おそらく、誤りだろう。強風の影響が低体温症に一定の役割を果たしていることは間違いないが。
 
 強風下で、着衣状態にある人間の体表面から奪われる熱量を簡易的に計算することができる。
 人間の体は複雑な形をしているので計算が難しいから、直径30cm高さ150cmの円柱に置き換えて考える。また、着衣の影響を見るため、厚さ一定の発泡ウレタンが円柱に巻きつけられているものとする。
   5℃の風が吹きつけられたときに奪われる熱量を計算すると、図のようになる。


横軸は発泡ウレタンの厚さ、縦軸は奪われる熱量で、2本の線はそれぞれ風速5m/sec、20m/secを表している。
 気温5℃、風速5mの中を歩いたり休んだりするものとしよう。基礎代謝1200kCal/日、平均運動消費エネルギー70kCal/時とすると、発熱量は3000kCal/日程度なので、断熱材の厚さ8㎜に相当する。すなわち、気温5℃、風速5mの中を行動するためには、皮下脂肪と着衣で発泡ウレタン8㎜の断熱性能が必要である。これより着衣が薄いと低体温症になるかもしれない。
 同じ断熱材で、気温5℃、風速20mの場合は、奪われる熱量は15%程度増大する。これは1時間当たり15kCalであるので、少し身体を余分に動かせば十分に補給できるエネルギーである。ラジオ体操を1回するときのエネルギーは60Kcal程度なので、1時間に1回ラジオ体操をすれば十分に賄える熱量である。まったく同じ運動量・発熱量の場合は、1時間に体温は0.3℃低下することになるが、この程度の体温低下ならば、低体温症になることはない。

 結局、気温5℃、風速5m/secで低体温症にならないような十分な着衣をしていれば、気温5℃、風速20m/secでも1時間程度で低体温症になることはない。

トムラウシ山遭難考―違和感2010年07月09日

トムラウシ遭難事故の原因は何だったのだろう。

 当初、豪雨の中、登山したために、全員が下着までずぶ濡れになったとの情報があった。もし下着までずぶ濡れになったとしたならば、低体温症になるかもしれない。『山と渓谷2009年10月号』には、ゴアテックスの雨具の性能をこえた豪雨だったために、下着までずぶ濡れになったかのようなことが記されていた。

 しかし、当日の旭川の天気は少雨だったので、トムラウシが豪雨であるとの説明は誤りではないかと思った。また、豪雨に登山した経験からして、ゴアテックスの雨具を正しく着用していれば、下着までずぶ濡れになるようなことは絶対にないと思っていたので、『全員が下着までずぶ濡れ』との情報は誤りだと思っていた。

 その後、遭難の状況が詳しく調べられると、当日の天候は少雨、気温5℃程度、風速20m/sec程度と、低温・強風ではあるが、この山域としては、特に珍しくない気象条件だったことが明らかになった。また、低体温症になったが、幸い生還した女性客は「衣服は濡れなかった」と証言しており、濡れが低体温症の原因でないことも分かってきた。

 そうなると、低体温症になった原因は何だったのか、疑問になってしまう。
 トムラウシ山遭難事故調査特別委員会よるトムラウシ山遭難事故調査報告書には、『体温を下げる最大の要因は「風の強さ」にある(P61)』とされている。風速1mごとに体感温度が1度下がるとの簡易見積もり方法が広く流布している。簡易法では風速20mは体感温度20度の低下になるため、これが、低体温症の最大要因と考えたのだろう。しかし、風によってどだけ熱が奪われるのかは、着衣の状態に大きく依存するため、着衣の影響を無視して「風速1mごとに体感温度が1度下がる」との簡易見積法は、現実の低体温症の原因を解明する手段とはならない。
 報告書でも、別の場所(P65)には、着衣の影響を考慮する必要があると書かれているが、着衣の影響を考慮した体感温度の考察はない。そこで、温度36度の円筒に、厚さ一定の発泡ウレタンの断熱材を巻きつけたときに、強風で失われる熱量を計算した。この結果、防風対策がきちんとされていれば、通常の防寒対策で十分であることが確認できた。
 (いろいろと計算した結果、常識的な結論が確認されました。風速20mは時速72kmに相当します。気温5℃の朝に、72kmのスピードで走っているバイクの人は、ふつう、低体温症にはならないでしょう。バイクで強い風を受けているからと言って、-15度でも耐えられるような厚着をする人はいないでしょう。そういう、常識的なことを、計算で確認しました。)
 
 夏の北アルプスや大雪山系を登山する場合、ゴアテックスの雨具と防寒衣料を持つだろう。これら山域は、氷点下になることも珍しくないので、ほとんどすべての登山者は、この程度の気温に耐えられる衣料を持っているだろう。これらの防寒・防水対策を正しくしていれば、気象要因で低体温症になることはない。
 実際、気温5℃、風速20m/secは、夏の北アルプスや大雪山系では、特に珍しいものではない。20m/secはずいぶん強い風なので、体験したことのない人もいるかもしれない。0℃・8m/secならば、夏山で経験したことのある人も多いだろう。裸体であっても、0℃・8m/secは、5℃・20m/secよりも、体感温度はむしろ低い。0℃・8m/secの気象条件に対処できる着衣ならば、トムラウシ遭難当時の気象条件は十分に対処可能だったはずである。
 
 それにもかかわらず、遭難した原因は何だったのだろう。

安達太良山2010年07月11日

昨日(2010年7月10日)は、雨の合間に、安達太良山に登りました。
ゴンドラリフトを使って、頂上直下まで行って、・・・とゴンドラ駅に行ったら、
「強風のため運休」
ということで、ゴンドラにそって、登山。1時間ちょっとで、ゴンドラ頂上駅がある、薬師岳到着。

ここから、安達太良山頂上までは1時間ちょっとです。途中シャクナゲが咲いていました。

これは、なんだっけ。


頂上直下に、山頂の標識。ここまで、半袖シャツ1枚で登ってきたのだけれど、霧と強風で腕が冷たくなってきたので、雨具の上着を着用。


頂上ドームに登ると、そこには「紀元二千六百年」記念標柱。「八紘一宇」と大書されてました。安達太良山って、もっと信仰の山かと思っていたのだけれど、そういうものは一切なし。

強風で立っていられないので、早々退散。ドームの登下山路には鎖も付けられているけれど、特に必要ありません。
下山は、峰の辻を通って、勢至平経由で。くろがね小屋経由にしようと思ったのだけれど、人が多そうだったのでやめました。


振り返ると、多くの登山者。(写真では、分かりませんね。)


下山すると、風も収まって、ゴンドラが動いていました。
4時間ぐらいの軽いハイキングです。

トムラウシ山遭難考―体感温度はどのような条件で風速1m当たり-1℃に相当するのか?2010年07月12日

人間の断熱性能(熱抵抗率)はどれくらいなのだろうか。このような数値は見たことがないので、一般に言われている他の値から推定する。ものすごく、おおざっぱではあるが、以下のような値が知られている。

  人体の発熱量のうち、体表から失われる熱量=40W
  快適な皮膚温度=体温-3℃
  体表面積=1.5m2

この条件で計算すると、人体の熱伝達率はh=8.9W/m2・Kとなる。(熱抵抗率はhの逆数。)
これは、皮下脂肪22㎜の断熱性能に相当し、発泡ウレタン3.6㎜の断熱性能に相当する。実際には皮下脂肪のほかに、皮膚や肉などにも熱抵抗があり、これらの総和を皮下脂肪に置き換えた値なので、皮下脂肪が22㎜もあるわけではない。

 次に、冷風が裸体に当たっているときに、人体から奪われる熱量を計算で推定する。(計算方法は、3つ下の記事「トムラウシ遭難考(15)―体感温度」を参照ください。)
 人体の代わりに、直径30cm高さ150cmの円柱に、厚さ3.6㎜の発泡ウレタンが巻きつけられているものとする。この時、風速5m/sec、温度0℃の風が吹き付けているとすると、308Wの熱が奪われる。10m/sec、温度4.9℃の風が吹き付けているとすると、同じく308Wの熱が奪われる。

つまり、5m/sec・0℃の風と、10m/sec・4.9℃の風が、裸体から奪う熱は同じことが分かる。これは、風速1m当たり-1℃に相当している。

体感温度は風速1m当たり-1℃に相当すると言われることがある。裸体に対して、0℃程度・風速5~10m/secの風のときに、あてはまる値なのだろう。
着衣がある場合は、大きく異なる。たとえば、発泡ウレタン6.4㎜の断熱材に相当する着衣だと、5m/sec・0℃の風と、10m/sec・2.2℃の風が奪う熱が同じであることが分かる。これは、風速1m当たり-0.44℃に相当している。

トムラウシ山遭難考(17)―事故は特別な気象条件で起こったのか?2010年07月13日

昨年7月16日に、北海道大雪山系トムラウシ山で、中高年ツアー登山パーティーの大量遭難事故があった。夏としては低温で強風という気象条件の中で、低体温症を発症して凍死したものである。トムラウシ山遭難事故調査特別委員会より、今年の3月初めに最終報告書(トムラウシ山遭難事故調査報告書)が作成・公開されている。(http://www.jfmga.com/pdf/tomuraushiyamareport.pdf
 本遭難の原因が低体温症であることは明らかであるが、低体温症に至った原因について、正確なことは分かっていない。報告書では低体温症に至った最大の要因を「風の強さ」としている。
 では、どれだけ風が強くて、また、どの程度低温だったのだろうか。

 昨日、2010年7月12日は風が強い日だった。トムラウシ遭難の風速・温度と、昨日の富士山の風速・温度と比べてみる。
 下の図が、トムラウシ遭難の風速・温度。風速20m前後、気温10度弱である。(画像をクリックすると拡大します)

 こちらが、2010年7月12日の富士山の風速・温度。風速25m前後、気温7度弱である。(画像をクリックすると拡大します)


 トムラウシ遭難は、昨日の富士山よりも気温が高くて、風が弱い気象条件で起きています。

 昨日の富士山は強風だったけれど、富士山としては、特に珍しい気象条件ではなくて、ひと夏のうちに、何日かは、この程度の強風の日があります。同様な気象条件は、北海道大雪山系や北アルプスでも、珍しくありません。
 昨年8月に、富士山に登った時は、気温7℃、風速10m程度と、富士山としては比較的穏やかな天気でした。
 オーロンのTシャツとポロシャツで登りましたが、登っているときは、うっすら汗を書きました。頂上で、昼食にしたときは、しばらく座っていたので寒くなり、雨具の上衣を着ました。下山のときは、登山と同じ格好。

 また、昨年9月13日に、木曽駒ケ岳に登った時、輪島上空3000mでは、気温3℃風速23mでした。木曽駒ケ岳頂上もこの程度だったでしょう。頂上の天気はキリ。その時の服装は、Tシャツ、ポロシャツ、雨具の上衣。でも、これだとさすがに頂上でじっとしていると寒くて仕方ないので、薄手のセーターを1枚着ました。寒くないだろうと高をくくって、車の中に、フリースジャケットを置いてきてしまった。薄手のセーターでは、寒いので、ケルンの陰に隠れたり、そこら中歩き回って身体を動かして体温を上げたりしてました。

 下の写真は、2009年9月13日8時54分の木曽駒ケ岳山頂の様子。皆さん防寒してますね。


このように考えると、トムラウシ遭難時の、風速20m前後、気温10度弱って、山では珍しくないのです。

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