トムラウシ山遭難考(22)-遭難の真の原因(推測) ― 2010年08月04日
2009年7月16日、トムラウシ山で高齢者ツアー登山の大量遭難事故があった。登山客15人、ツアースタッフ3人のパーティーのうち8人が低体温症で凍死した未曽有の大惨事だった。
トムラウシ山遭難事故調査特別委員会よる「トムラウシ山遭難事故調査報告書」が、今年の3月初めに作成・公開されている(http://www.jfmga.com/pdf/tomuraushiyamareport.pdf) 。
報告書では、低体温症の原因は「強風を最大の要因」とし、ガイドの責任を強調している。本Blogでは、着衣がまともならば、当時の風程度であるならば低体温症とはならないことを簡単な計算により確認し、(http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2010/07/08/5205609 )低体温症の原因として考えられる要素には以下の3つがあることを指摘した。
a)気象条件 b)不十分な着衣 c)登山技術の問題
一応、大真面目に検討した結果ですが、低体温症の原因として考えられるものを3つのカテゴリーに分類したに過ぎず、内容のない結論です。
遭難者の着衣(実際に何を着ていたのか、防寒具は何を持っていたのか)や、体力・技術を明らかにしない限り、気象条件・着衣・登山技術が、今回の遭難にどのようにつながったのかを解明することはできません。
さらに、濡れは低体温症に重要な影響を及ぼすけれど、この点も解明されていません。当初は全員がビショヌレだったかのように言われたけれど、実際には、濡れなかった人がいることは確実で、さらに濡れなくても低体温症になった人もいるので、個々の登山者の濡れがどのようだったかを解明すべきです。ただし、当時の気象条件では、まともな登山用雨具を正しく着用していれば着衣を濡らすことはありませんでした。
重要なことが解明されておらず、遭難原因を特定することは困難な状況ですが、何も書かないのも面白くないので、以下、推測を書きます。
普通、早朝に小屋を出発すると、日が高くなるにつれて気温が上がってくるものだけれど、この日は、逆に気温が下がったため、小屋に比べて北沼では気温が4~5℃低くなった。おまけに、強風になったため、小屋を出発した時に比べ、ずいぶん寒くなっていた。(これは事実です。)
前日、雨の中、悪路を歩いたために、多くの人はかなり疲労したが、小屋で一泊した朝になっても、高齢者のため、疲労が回復しなかった。このため、歩行は、かなり遅いペースだったので、身体が冷えてきた。なかには、不十分な雨具の着用や発汗のために、歩行途中に着衣を濡らした人がいたかもしれない。(推測です。)
ロックガーデンを越えて、北沼につくと、そこで停滞することになるが、気温は下がり、風は強く、運動による発熱もなくなったので、かなり寒くなった。このような場合は、幾つかの対処法が考えられる。
①寒くても平気な体力がある。
②日頃、薄着を心がけ、寒さに強くなる。
③その場で走るなり運動して体を温める。
④着衣を増やす。
⑤ホカロンなどで温める。
ところが、高齢者で、体力がなく、日ごろ寒さ慣れもしておらず、おまけにその場で運動する気も起きなかったので①②③の対処はできなかった。ホカロンは持っていなかったので、⑤もできなかった。つまり④の対処しか方法がなかった。なお、北沼到着以前にかなり寒くなっていた人もいた。寒さ対策のため、着衣を増やした人もいたが、多くの人は、着衣を増やすことがなかった。結局、気温が下がり風が強くなったのに、防寒対策をしなかったことが大量遭難につながった。(これは、推測です。)
注意)寒さ対策にホカロンは有効です。薄くて軽いので、イザと言うときのために、普通の大きさのホカロンを持つことをお勧めします。2つ持つと良いです。1つは自分のため、もう1つは誰かにあげるため。
では、なぜ、着衣を増やさなかったのか。防寒具を持っていなかったとか、濡らして使えなかった人もいるかもしれないけれど、多くの人は持っていたけれど使わなかったのではないだろうか。高齢者は、たいてい、防寒対策は結構しっかりしています。登山用品店に夏用ダウンジャケットを勧められ、それを持っていた人も多かったでしょう。(推測です。)
ダウンジャケットは保温性に優れているのだけれど濡れに弱いので(一部の商品は防水・ハッ水加工されている)、雨の中、着るのは大変です。風が強ければ、誰か手伝ってくれる人がいなければ、着用はたいへん。(これは事実です。)購入のときに「濡らしてはだめですよ」とのアドバイスを受けた人は、一人で着用する気がしなかったでしょう。(これは推測。)生還男性登山客の中には、ガイドが着用指示をしなかったと、ガイドを非難している人がいますが、普通の人なら、周りに寒がっている人がいたら「寒いですね、厚着したほうがいいですよね、手伝いましょうか」ぐらい言うよねー。(これは、疑問。) しかし、高齢者の集まりだったため、お互いに協力し合うということができなかった。(単なる推測です。)
と言うことで、遭難被害を拡大した最大の要因は、登山客自身の性格的な問題があったのではないだろうか。別な言い方をすると、登山客は、非常時でも、お互いに協力しあって危機を乗り越えるものではないという事実に、ガイドたちは気づいていなかったのではないだろうか。ガイドはツアー登山ガイドの経験は豊富だったろう。また自分自身が山で困難になった経験や、遭難の話は知っていたと思うけれど、ツアー登山ガイドとして遭難に遭遇した経験はなかったのではないだろうか。だから、自分が勉強・見聞した遭難対処をしたのだろう。これがいけなかったと言うべきか、登山客の教育がいけなかったと言うべきか、登山にふさわしくない人たちを募集してツアーを組んだと言うべきか。
トムラウシ山遭難事故調査特別委員会よる「トムラウシ山遭難事故調査報告書」が、今年の3月初めに作成・公開されている(http://www.jfmga.com/pdf/tomuraushiyamareport.pdf) 。
報告書では、低体温症の原因は「強風を最大の要因」とし、ガイドの責任を強調している。本Blogでは、着衣がまともならば、当時の風程度であるならば低体温症とはならないことを簡単な計算により確認し、(http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2010/07/08/5205609 )低体温症の原因として考えられる要素には以下の3つがあることを指摘した。
a)気象条件 b)不十分な着衣 c)登山技術の問題
一応、大真面目に検討した結果ですが、低体温症の原因として考えられるものを3つのカテゴリーに分類したに過ぎず、内容のない結論です。
遭難者の着衣(実際に何を着ていたのか、防寒具は何を持っていたのか)や、体力・技術を明らかにしない限り、気象条件・着衣・登山技術が、今回の遭難にどのようにつながったのかを解明することはできません。
さらに、濡れは低体温症に重要な影響を及ぼすけれど、この点も解明されていません。当初は全員がビショヌレだったかのように言われたけれど、実際には、濡れなかった人がいることは確実で、さらに濡れなくても低体温症になった人もいるので、個々の登山者の濡れがどのようだったかを解明すべきです。ただし、当時の気象条件では、まともな登山用雨具を正しく着用していれば着衣を濡らすことはありませんでした。
重要なことが解明されておらず、遭難原因を特定することは困難な状況ですが、何も書かないのも面白くないので、以下、推測を書きます。
普通、早朝に小屋を出発すると、日が高くなるにつれて気温が上がってくるものだけれど、この日は、逆に気温が下がったため、小屋に比べて北沼では気温が4~5℃低くなった。おまけに、強風になったため、小屋を出発した時に比べ、ずいぶん寒くなっていた。(これは事実です。)
前日、雨の中、悪路を歩いたために、多くの人はかなり疲労したが、小屋で一泊した朝になっても、高齢者のため、疲労が回復しなかった。このため、歩行は、かなり遅いペースだったので、身体が冷えてきた。なかには、不十分な雨具の着用や発汗のために、歩行途中に着衣を濡らした人がいたかもしれない。(推測です。)
ロックガーデンを越えて、北沼につくと、そこで停滞することになるが、気温は下がり、風は強く、運動による発熱もなくなったので、かなり寒くなった。このような場合は、幾つかの対処法が考えられる。
①寒くても平気な体力がある。
②日頃、薄着を心がけ、寒さに強くなる。
③その場で走るなり運動して体を温める。
④着衣を増やす。
⑤ホカロンなどで温める。
ところが、高齢者で、体力がなく、日ごろ寒さ慣れもしておらず、おまけにその場で運動する気も起きなかったので①②③の対処はできなかった。ホカロンは持っていなかったので、⑤もできなかった。つまり④の対処しか方法がなかった。なお、北沼到着以前にかなり寒くなっていた人もいた。寒さ対策のため、着衣を増やした人もいたが、多くの人は、着衣を増やすことがなかった。結局、気温が下がり風が強くなったのに、防寒対策をしなかったことが大量遭難につながった。(これは、推測です。)
注意)寒さ対策にホカロンは有効です。薄くて軽いので、イザと言うときのために、普通の大きさのホカロンを持つことをお勧めします。2つ持つと良いです。1つは自分のため、もう1つは誰かにあげるため。
では、なぜ、着衣を増やさなかったのか。防寒具を持っていなかったとか、濡らして使えなかった人もいるかもしれないけれど、多くの人は持っていたけれど使わなかったのではないだろうか。高齢者は、たいてい、防寒対策は結構しっかりしています。登山用品店に夏用ダウンジャケットを勧められ、それを持っていた人も多かったでしょう。(推測です。)
ダウンジャケットは保温性に優れているのだけれど濡れに弱いので(一部の商品は防水・ハッ水加工されている)、雨の中、着るのは大変です。風が強ければ、誰か手伝ってくれる人がいなければ、着用はたいへん。(これは事実です。)購入のときに「濡らしてはだめですよ」とのアドバイスを受けた人は、一人で着用する気がしなかったでしょう。(これは推測。)生還男性登山客の中には、ガイドが着用指示をしなかったと、ガイドを非難している人がいますが、普通の人なら、周りに寒がっている人がいたら「寒いですね、厚着したほうがいいですよね、手伝いましょうか」ぐらい言うよねー。(これは、疑問。) しかし、高齢者の集まりだったため、お互いに協力し合うということができなかった。(単なる推測です。)
と言うことで、遭難被害を拡大した最大の要因は、登山客自身の性格的な問題があったのではないだろうか。別な言い方をすると、登山客は、非常時でも、お互いに協力しあって危機を乗り越えるものではないという事実に、ガイドたちは気づいていなかったのではないだろうか。ガイドはツアー登山ガイドの経験は豊富だったろう。また自分自身が山で困難になった経験や、遭難の話は知っていたと思うけれど、ツアー登山ガイドとして遭難に遭遇した経験はなかったのではないだろうか。だから、自分が勉強・見聞した遭難対処をしたのだろう。これがいけなかったと言うべきか、登山客の教育がいけなかったと言うべきか、登山にふさわしくない人たちを募集してツアーを組んだと言うべきか。
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