トムラウシ山遭難考―体調不良者は小屋で停滞したくないものです ― 2010年08月20日
2009年7月16日、トムラウシ山で高齢者ツアー登山の大量遭難事故があった。登山客15人、ツアースタッフ3人のパーティーのうち8人が低体温症で凍死した未曽有の大惨事だった。
トムラウシ山遭難に関して報告書、解説本・雑誌記事、ネット上のおしゃべり、など、いろいろな発言がなされている。これらは、立派な登山家や登山無経験者の発言が多く、高齢者ツアー登山の実態を理解していない点があるのではないかと感じる。そうした中、生還した遭難者の一人である戸田新介氏は、自分の主張を繰り返している。随分と登山の常識に反していると思われる点もあるが、体力不足の高齢者ツアー登山者の実態に則した発言で、多いに賛同できる点も多々ある。
かくいう私も、高齢者ではないけれど、体力不十分・技術不十分の情けない登山者の一人である。
以前、表銀座から穂高を歩いた時、体調不良になったことがある。燕山荘を出た時は快調だったのに、西岳ではずいぶん疲れた。その日は槍岳山荘まで行く予定だったけれど、ヒュッテ大槍に宿泊。翌朝は頭痛と倦怠感で体調不良。この日は大キレットを越えて穂高岳山荘にゆく予定だったけれど、絶対に無理と思った。とにかく、槍に登り、亀の歩みで中岳を越えて、水場のところで少し寝た。南岳小屋に着いたのは3時近くなっていた。天気は快晴、気温も低くなかったのに、厚手のセーターを着て、布団にもぐりこんで、それでも寒かった。
寝ながら考えたこと。①うんと具合が悪くなったら上高地からヘリを呼ぶ(小屋にはヘリポートがあった)。②ちょっと具合が悪かったら飛騨側に下りる。③体調が良かったら大キレットを越えて北穂にゆく。
しかし、「停滞する」との選択肢はありません。前日、ヒュッテ大槍に宿泊中に体調が非常に悪くなったのだから、宿泊していたらさらに悪化するかもしれない。
朝起きたら、前日と同じ状態。洗面所の鏡を見ると、顔がマンマルに膨らんでいた。「これは軽い高山病だ、少し下りればすぐ良くなる」と安心して、大キレットに行った。思った通り、キレットを降りるに従って、体調は良くなる。でも、登り返すと再び悪くなったので、北穂高岳から上高地(横尾)に下山した。
槍の頂上で、岳人の取材者がいたので、集合写真に私も収まったら、翌年の雑誌に、自分が写った写真がのっていた。顔が膨らんでおり、この時から明らかに高山病だった。3000mでも高山病になる人がいることは知ってはいたが、まさか、自分がそんなに情けない体力だとは思っていなかったので、顔を見るまで、高山病とは気付かなかった。
トムラウシ山で最初に行動に支障をきたした者は、ひさご沼避難小屋を出て2時間足らずのようだ。おそらく、小屋を出た時点で、何らかの体調不良があったのだろう。「体調不良の登山客は小屋で休んでいたかったのに、ガイドが無理に歩かせた」と思っている人も多いことだろう。病院がそばにあれば、体調不良の人が無理に歩くことはないので、登山経験のない人や、体調不良になったことがない人が、そのように誤解することは仕方ないのかもしれない。しかし、山小屋で休んでいる間に、どんどん体調不良になった場合、無理してでも下山して病院に行きたいと思うのは、当然なのだ。
トムラウシ山遭難に関して報告書、解説本・雑誌記事、ネット上のおしゃべり、など、いろいろな発言がなされている。これらは、立派な登山家や登山無経験者の発言が多く、高齢者ツアー登山の実態を理解していない点があるのではないかと感じる。そうした中、生還した遭難者の一人である戸田新介氏は、自分の主張を繰り返している。随分と登山の常識に反していると思われる点もあるが、体力不足の高齢者ツアー登山者の実態に則した発言で、多いに賛同できる点も多々ある。
かくいう私も、高齢者ではないけれど、体力不十分・技術不十分の情けない登山者の一人である。
以前、表銀座から穂高を歩いた時、体調不良になったことがある。燕山荘を出た時は快調だったのに、西岳ではずいぶん疲れた。その日は槍岳山荘まで行く予定だったけれど、ヒュッテ大槍に宿泊。翌朝は頭痛と倦怠感で体調不良。この日は大キレットを越えて穂高岳山荘にゆく予定だったけれど、絶対に無理と思った。とにかく、槍に登り、亀の歩みで中岳を越えて、水場のところで少し寝た。南岳小屋に着いたのは3時近くなっていた。天気は快晴、気温も低くなかったのに、厚手のセーターを着て、布団にもぐりこんで、それでも寒かった。
寝ながら考えたこと。①うんと具合が悪くなったら上高地からヘリを呼ぶ(小屋にはヘリポートがあった)。②ちょっと具合が悪かったら飛騨側に下りる。③体調が良かったら大キレットを越えて北穂にゆく。
しかし、「停滞する」との選択肢はありません。前日、ヒュッテ大槍に宿泊中に体調が非常に悪くなったのだから、宿泊していたらさらに悪化するかもしれない。
朝起きたら、前日と同じ状態。洗面所の鏡を見ると、顔がマンマルに膨らんでいた。「これは軽い高山病だ、少し下りればすぐ良くなる」と安心して、大キレットに行った。思った通り、キレットを降りるに従って、体調は良くなる。でも、登り返すと再び悪くなったので、北穂高岳から上高地(横尾)に下山した。
槍の頂上で、岳人の取材者がいたので、集合写真に私も収まったら、翌年の雑誌に、自分が写った写真がのっていた。顔が膨らんでおり、この時から明らかに高山病だった。3000mでも高山病になる人がいることは知ってはいたが、まさか、自分がそんなに情けない体力だとは思っていなかったので、顔を見るまで、高山病とは気付かなかった。
トムラウシ山で最初に行動に支障をきたした者は、ひさご沼避難小屋を出て2時間足らずのようだ。おそらく、小屋を出た時点で、何らかの体調不良があったのだろう。「体調不良の登山客は小屋で休んでいたかったのに、ガイドが無理に歩かせた」と思っている人も多いことだろう。病院がそばにあれば、体調不良の人が無理に歩くことはないので、登山経験のない人や、体調不良になったことがない人が、そのように誤解することは仕方ないのかもしれない。しかし、山小屋で休んでいる間に、どんどん体調不良になった場合、無理してでも下山して病院に行きたいと思うのは、当然なのだ。