占守島の戦い2010年08月29日

 今日(2010年8月29日)の朝日新聞に、浅田次郎/著「終わらざる夏 上 ・下」の書評を、姜尚中が書いている。この本は、終戦末期の8月18日から始まった千島列島最北端・占守島の戦いを題材にした小説である。姜尚中は次のように書いている。

 「それにしても、なぜ彼らは無条件降伏を受け入れた国家の意思に反して戦ったのか。明らかに国家に対する反逆であった。」

 姜尚中のこの考えは正しいのだろうか。巷間に言われているように、8月15日に日本政府がポツダム宣言を受諾したのだとしたならば、日本軍は同宣言に従って、直ちに無条件降伏をするべき義務があったので、彼らは国家と天皇(大元帥)に対する反逆者になる。しかし、実際に戦闘が始まったのは18日未明で、北方軍司令部からの指令は、18日16時に停戦せよとのことだったので、占守島守備軍(第91師団)が戦闘したことは、指示通りのことだった。戦いは当日には終了して、翌日に停戦交渉が行われ、日本軍の武装解除が調印された。ところが、堤司令官は停戦合意を一方的に破棄した。翌日、合意に従って第2千島海峡に入ったソ連艦を奇襲攻撃、再び戦闘が開始された。堤司令官が停戦合意を破って武装解除を拒否した理由はよく分からないが、おそらく自分の名誉を守りたいとの私利私欲からの行為だったのだろう。

 もし、日本の無条件降伏が8月20日以前だったとしたならば、堤司令官・第91師団の行動は「明らかに国家に対する反逆」と言えるだろう。しかし、日本の無条件降伏は国際法上は9月2日なので、彼らの行為が戦争犯罪を問われることはなかった。

以上、姜尚中の文章を解説風にコメントしてみました。

 日本では、8月15日を終戦の日として、日本が先の戦争の被害者だったように振舞っています。姜尚中は8月15日がどういう日なのか、よく知っていながら、日本人の戦争に対する態度を揶揄しているのかもしれません。

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