尖閣(釣魚)問題 -中国地図を領有の根拠とするのは滑稽です ― 2010年10月31日
以下、M先生に出した手紙です。
M先生
今回の事件の発端となった、不良漁船の行為は、国家とは関係のない民間人の単純犯罪でしょう。これまで、自民党政権のときは、尖閣に上陸した場合でも、48時間以内の強制退去処分とし、二国間問題になることを避けていました。今回は上陸したわけでもないのに、逮捕・再逮捕と、これまでの政府の対応に比べ、強硬姿勢が際立ちました。中国政府は、尖閣の領有権を主張しているので、日本に抗議することは当たり前です。北方海域で、日本の漁船が密漁で逮捕されたときも、日本政府は一応の抗議をします。
中国国民が反日活動を行い、中国政府が苦境に立たされることを見越して、あえて、強行対応したのでしょうか、不思議です。
レアアースについては、この問題が発生する以前から、中国は輸出を絞っており、酸化セリウムの値段は年初の5倍に跳ね上がっていました。尖閣問題が原因で、レアアースの輸出を止めているとの見解は、必ずしも事実ではないと思います。尖閣問題もあるかもしれないけれど、十分な検証がなされていないので、判断しかねます。
尖閣が日本領であることを主張する人たちの根拠は、主に次の4点です。
①明治時代に、日本は無主地であることを十分に確認した上で尖閣を領有した。
②日清戦争以降、日本の領土であることを中国も認めていた(大正8年の資料が持ち出される)
③1970年以前の中国の地図でも、尖閣は日本領になっている。
④中国が領有主張をしたのは、石油が見つかったからだ。
以下の竹下義朗氏の下記論文について感想を書きます。
http://aizax.fc2-rentalserver.com/repo5/051080.html
竹下氏の論文は、このうち、②③が根拠となっています。
②の論点に対する竹下論文の記述について
日清戦争の結果、台湾は日本の領土になりました。日清戦争以降、太平洋戦争敗戦までは、尖閣も日本の支配下にあったことは明白です。大正8年(1919年=中華民国8年)の文書は、当時、尖閣を日本が支配していたことを表しています。
竹下論文は、日清戦争以降、日本が支配していたことを説明しているだけです。
ポツダム宣言受諾により、日本には強奪した領土の返還義務が課されました。尖閣が強奪領土に含まれないとする明白な根拠や、台湾同様に強奪領土に含まれるとする明白な根拠はないと思います。ポツダム宣言の結果、日本の各地点は連合国の占領下に置かれました。琉球・尖閣は米国の担当、台湾は中国の担当、歯舞を含む千島はソ連の担当です。連合国は、各担当地域に対して合意しています。すなわち、中国は、尖閣がアメリカ占領地となることに合意しています。だからと言って、将来、日本に返還されることに合意したとは言えません。
もちろん、尖閣を日本が放棄する義務はありません。外交は、どちらか一方が100%正当と言うことはないでしょう。
③の論点に対する竹下論文の記述について
中国の地図で、尖閣が日本の領土になっていたとの竹下論文の記述ですが、これは、地図読図能力・歴史知識が乏しい人の妄言だと思います。
中国・台湾と尖閣の間に引かれた線は、アメリカ統治地区と、中国との境界線かも知れず、中国と日本の境界線とは断言できません。
http://aizax.fc2-rentalserver.com/photo2/td/101022_2.jpg
この地図を見ると、日本と、アメリカ統治地区の境界線も書かれています。
ただし、もっとよく探せば、尖閣を日本領としたことが確実な中国地図があるかもしれません。地図を根拠とするならば、そういう地図を探すべきです。右翼は、自分の努力不足を、言葉で言いくるめようとしていて、嫌いです。
私は、北方領土をソ連の領土と記載されていた、文部省検定教科書地図を掲載しています。
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/MAP_Kyoukasho/Kyoukasho.htm#S25
昭和30年代初めごろまでの、文部省検定済み教科書地図の多くは、北方領土をソ連領としています。現在、日本政府は、北方領土要求をしていますが、これを不当不法と考えるのか、正当と考えるのか、それは、個人個人の問題でしょう。
ソ連領と認めていた(あるいは放棄したと認めていた)島を、その後、領有主張する日本国を棚に上げて、米国信託統治だったために返還主張できなかった中国を、批判するのは、いかがなものかとも思います。
『中国の地図で尖閣が日本の領土になっているから日本の領土だ』『日本地図で北方領土がソ連領になっていても日本の領土だ』と言ったら、あきれます。
以上
M先生
今回の事件の発端となった、不良漁船の行為は、国家とは関係のない民間人の単純犯罪でしょう。これまで、自民党政権のときは、尖閣に上陸した場合でも、48時間以内の強制退去処分とし、二国間問題になることを避けていました。今回は上陸したわけでもないのに、逮捕・再逮捕と、これまでの政府の対応に比べ、強硬姿勢が際立ちました。中国政府は、尖閣の領有権を主張しているので、日本に抗議することは当たり前です。北方海域で、日本の漁船が密漁で逮捕されたときも、日本政府は一応の抗議をします。
中国国民が反日活動を行い、中国政府が苦境に立たされることを見越して、あえて、強行対応したのでしょうか、不思議です。
レアアースについては、この問題が発生する以前から、中国は輸出を絞っており、酸化セリウムの値段は年初の5倍に跳ね上がっていました。尖閣問題が原因で、レアアースの輸出を止めているとの見解は、必ずしも事実ではないと思います。尖閣問題もあるかもしれないけれど、十分な検証がなされていないので、判断しかねます。
尖閣が日本領であることを主張する人たちの根拠は、主に次の4点です。
①明治時代に、日本は無主地であることを十分に確認した上で尖閣を領有した。
②日清戦争以降、日本の領土であることを中国も認めていた(大正8年の資料が持ち出される)
③1970年以前の中国の地図でも、尖閣は日本領になっている。
④中国が領有主張をしたのは、石油が見つかったからだ。
以下の竹下義朗氏の下記論文について感想を書きます。
http://aizax.fc2-rentalserver.com/repo5/051080.html
竹下氏の論文は、このうち、②③が根拠となっています。
②の論点に対する竹下論文の記述について
日清戦争の結果、台湾は日本の領土になりました。日清戦争以降、太平洋戦争敗戦までは、尖閣も日本の支配下にあったことは明白です。大正8年(1919年=中華民国8年)の文書は、当時、尖閣を日本が支配していたことを表しています。
竹下論文は、日清戦争以降、日本が支配していたことを説明しているだけです。
ポツダム宣言受諾により、日本には強奪した領土の返還義務が課されました。尖閣が強奪領土に含まれないとする明白な根拠や、台湾同様に強奪領土に含まれるとする明白な根拠はないと思います。ポツダム宣言の結果、日本の各地点は連合国の占領下に置かれました。琉球・尖閣は米国の担当、台湾は中国の担当、歯舞を含む千島はソ連の担当です。連合国は、各担当地域に対して合意しています。すなわち、中国は、尖閣がアメリカ占領地となることに合意しています。だからと言って、将来、日本に返還されることに合意したとは言えません。
もちろん、尖閣を日本が放棄する義務はありません。外交は、どちらか一方が100%正当と言うことはないでしょう。
③の論点に対する竹下論文の記述について
中国の地図で、尖閣が日本の領土になっていたとの竹下論文の記述ですが、これは、地図読図能力・歴史知識が乏しい人の妄言だと思います。
中国・台湾と尖閣の間に引かれた線は、アメリカ統治地区と、中国との境界線かも知れず、中国と日本の境界線とは断言できません。
http://aizax.fc2-rentalserver.com/photo2/td/101022_2.jpg
この地図を見ると、日本と、アメリカ統治地区の境界線も書かれています。
ただし、もっとよく探せば、尖閣を日本領としたことが確実な中国地図があるかもしれません。地図を根拠とするならば、そういう地図を探すべきです。右翼は、自分の努力不足を、言葉で言いくるめようとしていて、嫌いです。
私は、北方領土をソ連の領土と記載されていた、文部省検定教科書地図を掲載しています。
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/MAP_Kyoukasho/Kyoukasho.htm#S25
昭和30年代初めごろまでの、文部省検定済み教科書地図の多くは、北方領土をソ連領としています。現在、日本政府は、北方領土要求をしていますが、これを不当不法と考えるのか、正当と考えるのか、それは、個人個人の問題でしょう。
ソ連領と認めていた(あるいは放棄したと認めていた)島を、その後、領有主張する日本国を棚に上げて、米国信託統治だったために返還主張できなかった中国を、批判するのは、いかがなものかとも思います。
『中国の地図で尖閣が日本の領土になっているから日本の領土だ』『日本地図で北方領土がソ連領になっていても日本の領土だ』と言ったら、あきれます。
以上