北方領土問題関連の論文2010年11月16日

最近、北方領土問題関連の論文を読んだ。岩手県立大学・黒岩幸子先生の以下2件の論文である。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004682649
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006198620

 著者は、長年、北方4島交流の通訳を務めたことがある人で、日ロ双方の事情を知り尽くしているようだ。
 論文は、正確な歴史経緯から説き起こし、北方領土問題全体を概説している。戦前、北方領土は日本の領土だったが、そこに至った歴史的経緯が詳しく記され、日ロどちらか一方の意見を支持するという性格のものではなく、事実を淡々と記載している。終戦期の記述は、元島民の証言に基づいている。このため、終戦期の記述は、信ぴょう性には疑問が残る。
 北方領土問題について、個々人には、それぞれの意見があるだろう。しかし、その前提となる知識がデタラメでは、話にならない。そのような愚を犯している、主義主張が多いが、上記論文を良く読んで、知識に誤りがないか、一度、確認することは重要だ。

 論文の中に、通訳ならではと思える記述がある。
…「北方領土」に関する日本側の歴史は、…「北方領土は私達の祖父母が血と汗で開拓した土地であり、彼らは今もそこに眠っています」から始まる。父祖伝来とはいつ頃からを指すのか、祖父母が血と汗で開拓を始めたのはいつからか、明示されたことはない。
 なお、「血と汗で開拓」の決まり文句は、ロシア語に訳す場合には「血」は省いて、「汗を流して開拓」にする方が好ましいというのが、通訳者の間での共通の了解であった。この場合、ロシア語で「血」を使うならば、ロシア人は文字どおり、流血を伴う開拓、つまり、戦闘による殺繊を交えての開拓を連想する可能性があるからだ。…

 日本では、「私達の祖先が血と汗で拓いた我が国固有の領土」などと言われることが多い。日本人の祖先が、血を流したのは、いつのことだろうか。弾圧したアイヌの逆襲にあって、和人71人が殺されたことだろうか。まさか、アイヌの少女を慰みものにして、血を流させたことではあるまい。「開拓した」と、普通に言えば良いところを、「血と汗で拓く」と言うのは、心情に訴える表現だろうが、正しい歴史認識から、逸脱する恐れがあり、注意が必要だ。


北方領土問題は以下をご覧ください。
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/index.htm

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