福島の放射能汚染-退避すべきか2011年04月29日

 原発事故から1ヵ月半が経過しましたが、福島市・伊達市・郡山市では、環境放射線濃度が高い状態が続いています。
 福島市の、これまでの、環境放射線の積算は、4ミリシーベルト程度です。原発事故以降福島市に住み続けていた場合、4ミリシーベルト程度の外部被曝をした可能性があります。コンクリート建築等に避難していれば、外部被曝は少なかった可能性がある一方、放射性物質吸引による内部被曝の影響もあったはずです。

 もし、4ミリシーベルトの被曝をしても、直ちに健康被害が発生することはないし、将来の健康被害の確率も小さいものです。確率は小さいのですが、万一健康被害が生じたら、その結果は甚大です。確率の概念を理解していないと、確率が小さいことに目を奪われる場合と、結果が甚大であることのみにとらわれることがあります。

 4ミリシーベルト程度被曝すると、平均的にはどの程度の損害をこうむるのか、確率論で言うところの期待値を計算してみます。確率論では「期待値」と言いますが、別に損害をこうむることを期待しているわけではありません。

 広島・長崎原爆被害から類推した100ミリシーベルト被曝による発ガン確率は、大人で0.5%、10歳の子供で2%です。4ミリシーベルト被曝は発癌確率が小さいので、よく分かっていません。低線量の被曝では、被曝線量と発癌確率は比例するとの仮定をします。これをLNTモデルといい、世界的に広く用いられている方法です。LNTモデルによれば、4ミリシーベルト被曝の発癌確率は、大人で0.02%、10歳の子供で0.08%になります。
 次に損害の期待値を計算します。発癌したら、いくら損するか、人によって違うでしょう。発癌すると死ぬかとも多いので、人間一人の値段を1億円程度と考えて、発癌したら1億円損害をこうむると考えます。
 そうすると期待値は簡単な掛け算で、大人では2万円、10歳の子供では8万円になります。

 確率論の期待値のみを考えると、大人2人と、10歳程度の子供2人の家族は、1ヵ月半の退避費用が20万円以下ならば、退避したほうが損害が少なかった、と結論できます。現在、福島市の環境放射線は1.5μSv/h程度なので、1ヶ月で1mSvになります。同様の計算をすると、大人2人と、10歳程度の子供2人の家族は、1ヶ月の退避費用が5万円以下ならば、退避したほうが、損害が少ないと言えます。
 (注:この計算では、環境放射線を100%被曝すること、内部被曝はないものとして、さらに、発癌の損害を1億円として計算しました。またLNTモデルを使っています。これらの前提が異なれば、計算結果も違ってきます。)

 以上は、確率論の期待値の考えだけで計算しました。しかし、確率論でよく使う数値には、期待値のほかに、標準偏差があります。期待値は同じでも、バラツキが大きいものと、小さいものとでは価値が違います。
 たとえば、生命保険は、死亡時返戻金の期待値は、保険金の費用よりも小さくなります。宝くじでは、当選金の期待値は、くじの料金よりも小さくなります。そうしないと、保険会社や銀行などの利益が出ない。
 それなのに、生命保険に加入する人や、宝くじを買う人が多いのは、これらは、期待値よりも標準偏差が大きいためです。
 放射能被害の発癌確率も同様に、バラツキが大きい現象なので、期待値だけで考えるのではなくて、期待値以上に経費がかかることは、ある程度容認できることでしょう。宝くじでは、くじの代金は当選金の2倍程度ですので、原発被害も経費が2倍までは仕方がないとすると、次のようになります。 
 福島市で大人2人と10歳程度の子供2人の家族は、原発事故後1ヵ月半の退避費用が40万円以下ならば、退避したほうが損害は少なかった。今後は、1ヶ月の退避費用が10万円以下ならば、退避したほうが、損害は少ない。

 皆さんは、どのように考えますか。

* * * * * *

<< 2011/04 >>
01 02
03 04 05 06 07 08 09
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

RSS