事実から目をそむけるな2011年04月15日

 福島原発の事故レベルが7に引き上げられた件に関して、IAEAやフランスでは、チェルノブイリよりはるかに影響は小さいと説明しています。また、レベル7を引き下げるべきとの論調もあります。
 チェルノブイリでは、環境に放出された放射性物質の総量は520万テラベクレル。これに対して、福島第1原発では、大気中に放出された放射性物質だけで37万~63万テラベクレル。福島第1原発の場合は、このほかに、海に流した大量の放射性物質があります。海に流した(あるいは流れた)放射性物質の総量がどれくらいなのか分かりませんが、2号機トレンチから漏れ出た高濃度汚染水を数日間にわたって垂れ流したのだから、決して無視しえない量になっているでしょう。
 福島とチェルノブイリでは、原発立地も事故内容も違うけれど、どちらも深刻な事故であることには変わりありません。福島はチェルノブイリよりもマシだから、深刻な事態ではないと強弁しても、仕方のないことです。

 昨日、菅総理が、原発周辺には10年20年は住めない、と発言したと報道されました。事実は異なっていたようです。菅が言った言わないは別として、放射性セシウムに汚染された土地に、しばらく住めないことは明らかです。セシウムの半減期は30年なので、放射線が1/10になるには100年かかります。雨水で汚染物質が他の地域に流れる影響があるので、もう少し早く放射能が減少するかもしれません。客観的な事実として、放射性セシウムに汚染された土地が、自然に回復するためには、相当の年月がかかります。このような、冷厳な事実は、たとえ嫌でも、直視する必要があります。

 報道によると、福島県知事は「一日も早く住民が古里に戻れるように願ってきた。信じられないの一言」と、政府の説明を批判したそうです。
 2011年4月7日福島民友ニュースによると、福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーは10マイクロシーベルト毎時未満の放射線を、屋外運動の目安としたそうですが、これだと、年間で最大87ミリシーベルトと、13日に原子力安全委員会が見解を示した子供に対する年間被曝量の8倍を越えます。子供に浴びせるには、信じがたい放射線量です。こんな恐ろしい県には絶対に住みたくない。
 福島県が望む程度の放射能に、福島県の子供をさらしても平気であるならば、比較的早期に、汚染地区に戻ればいいのです。福島県の子供が、少しぐらい、将来、癌になろうが、奇形児が生まれようが、死のうが、どうでも良いのならば、今すぐに戻れば良いのです。
 しかし、福島の子供たちの、将来の健康を真剣に考えるならば「原発周辺には10年20年は住めない」可能性があることを、肝に銘じるべきです。

福島市の放射能はいつになったら平常値に戻るのか2011年04月16日


 上の図は、福島県のホームページに公開されている数値から書いた、福島市北保健福祉事務所事務局東側駐車場の環境放射能測定結果(暫定値)。
http://www.pref.fukushima.jp/j/index.htm
http://www.pref.fukushima.jp/j/7houbu53.pdf
 横軸は、放射能が急に大きくなった3月15日17時を0とした経過日数。縦軸は放射線強度で、単位はマイクロシーベルト毎時。縦軸は対数メモリで書いています。
 
 放射性物質が単一核種のときは、放射線強度は、縦軸を対数で書くと、直線的に減衰します。しかし、複数の核種があるときは、最初のころは、順調に放射線が減るけれど、徐々に、減少時間が遅い放射性核種の影響が大きくなり、思いのほか放射線が減ってくれないことがあります。

 福島市の放射線強度も最初のころは、10日もすれば1マイクロシーベルト以下になる勢いだったのに、減少速度はだんだん遅くなり、今の減り方だと、1マイクロシーベルト以下になるのは、あと1ヶ月は必要なようです。今後、さらに遅くなって、長期間1.14μSv/hを越える状態が継続するかもしれない。
 原子力安全委員会は今月13日、学校再開基準として、年間の被曝量が10mSv以下との見解を示しましたが、これを時間当たりに直すと、1.14μSv/hになります。

飯舘村2011年04月17日

 福島県飯舘村は「計画的避難区域」に指定され、1ヶ月をメドに、退避することが求められています。昨日、行われた、福山哲郎官房副長官らの説明には、村民の批判が相次ぎました。


 上の図は、3月15日以降の飯舘村役場の放射線強度の変化。横軸は日数で、縦軸が放射線強度です。縦軸は、対数メモリで書いています。原発事故前の放射線は0.05μSv/h程度だったので、このグラフの一番下よりもさらに下です。今後も、放射線は、なかなか減らないだろうと推察できます。
 飯舘村居住者は事故以来、すでに、直接被爆だけでも、8mSv程度の被曝をしている恐れがありますが、このまま住み続けたならば、年間20mSvを超えることは、ほぼ間違いないでしょう。100mSv以下では、すぐに健康被害が出ることはないし、将来に渡っても健康被害が起こるとの確かな証拠はありません。このため、爺さん・婆さんが飯舘村に残ったとしても、危険はないとの考えもありうるけれど、子供や妊婦などは早めに退避すべきでしょう。
 放射能の知識に乏しい村民が政府方針について納得いかないのは分かるのだけれど、村民にも、もう少し現実を冷静に見てほしい。いつになったら戻れるのかと、政府に詰め寄った村民も多かったようですが、政府に判断をゆだねるのではなく、上のグラフをよく見て、いつになったら1μSv/h以下になるのか、いつになったら元の状態に戻るのか、冷静になって考えて見る必要があるでしょう。自分たちの子孫の健康が問題なのだから、冷静を失ってはいけない。
 政府方針もよく分からないのですが、爺さん婆さんを含めた全員を退避させる必要があるのだろうか。

工程表2011年04月18日

 『6~9カ月で原子炉の冷温停止目指す』との工程表を東電が発表したけれど、そんなにうまく行くのだろうか。現場の技術者の意見を聞かないで、事務屋さんと官僚が机上の空論を技術者に指図して作り上げたものではないか心配です。これが、普通の事故で、放射能がなければ、作業のメドは立つのですが。
 もし工程表程度の期間で、冷温停止と放射能漏れ防止が出来れば、上出来です。 
 
 原発事故を収束させるためには、それなりの作業員が必要ですが、本当に確保できるのだろうか。現在、作業している人は、250ミリシーベルトを超える被曝をしたら、戦線離脱です。
 今後、東電が、会社としてこのまま無傷で存在するとは考えられず、東電社員が高給を保証されることは無いでしょう。そういう状況なのに、身の危険を冒してまで、率先して作業する人がどれだけいるだろうか。

本職2011年04月18日

確率:
 数値計算が本職です。
 コンピュータを使って計算した結果は、事実を厳密に再現したものではなくて、ある一定の仮定の下で、事実を推測したものです。このため、コンピュータ計算結果が、正しいかどうかは、本来、分からない。コンピュータ計算結果をどのように使って、どのように生産に役立ててゆくのか、それは、数値計算屋の仕事ではない。『それは、あなたの仕事ですよ』と言えば、能力ある技術者は理解してくれるけれど、理解しようとしない人も多い。

 低レベル放射線の長期健康被害は分からないことが多く、危険確率を大雑把に推定したものです。『危険か安全かを明確に言い当ててくれ』と言われても、誰もそんなことはできない。政府は神様ではないのだから無理。危険確率をもとに、どのように行動するのかは、本来、自分自身で決めること。


注)最近は、原子力関係からは、すっかり遠ざかっています。もっとも、放射性廃棄物関連の解析業務はしたことがあるのですが、原子力発電所関連の経験はほとんどありません。

 
菅内閣:
 福田内閣以来、支持率が低い短命内閣が続いています。菅内閣の原発事故対応にも批判的な人が多いようです。神様以上の対応が出来ていないと不満を漏らしてもねー。
 しかし、菅内閣の原発事故対応は、きちんとしていて、かなり優れていると思います。爆発事故以来、菅の周りには、原発に詳しい、まともな学者がいるのではないだろうか。ただし、爆発以前の初期対応は悪かった。原子力行政官僚と電力業界に癒着した学者のアドバイスで、誤った対応をしたけれど、そのうち気付いて、まともな学者を連れてきたのかな。

 斑目先生が批判されています。鈴木先生も国会で謝罪していました。こういう人が、事故の初期には、菅の周りに居たのかなー。お世話になったことがあるので、あまり批判がましいことは言えないけれど。
 別の鈴木先生が、TVの解説で、東電の事故対応は正しいと思うと言っていました。鈴木先生の弟子たちが、事故対応の中に居るのだろうから、当然なのですが。私も、こちらの鈴木先生に、流体解析を習った身であるためか、東電の事故対応は基本的に正しいと感じています。

ホームページの追記-渡来銭2011年04月19日

北方領土問題のページの下に、全く関係の無い『渡来銭』のページを作りました。
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/index.htm
http://cccpcamera.photo-web.cc/COIN/Toraisenn/
数ヶ月前から、書いているのですが、一応、完成したので、今後は大幅に加筆する予定はありません。
ありふれた渡来銭の写真を掲載したものです。ありふれたものなので、ほとんどが、10円から500円ぐらいで買えます。

択捉島で寛永通宝が見つかったことを理由に「択捉が日本固有の領土であることを証明する1つでもある」とBlogに書いている人がいました。この人は、大学で客員教授を務める知識人です。日本には、渡来銭(宋銭など)ぐらい、いくらだってあるが、だからといって「日本列島は中国の固有の領土であることを証明する1つでもある」などと考えるような人はいないだろう。 エトロフ島で寛永通宝が見つかると、なぜ「択捉が日本固有の領土であることを証明する」ことになるのか良く分かりません。
日本に渡来銭が多数あることは、小学校の社会科で習うはずですが、良く知らない人もいるのだろうかと思い、作ったページです。

 ただし、掲載した写真は、渡来銭ではなくて、中国に残されていたものを、最近になって輸入したものもあります。また、当時、日本で鋳造された鐚銭である可能性もあります。

3.8マイクロシーベルト2011年04月20日

 文部科学省は、福島県内の小中学校の校舎などを通常利用する際の限界放射線量を、1時間当たり3・8マイクロシーベルトに設定すると発表。この値以下の場合は、屋外で通常の運動をすることが可能になります。

 3.8マイクロシーベルト毎時で1日8時間屋外に居ると、それだけで年間11ミリシーベルトの外部被曝になります。残りの時間は屋内に居るものとして、屋内被曝量を屋外の1/2とすると、年間の外部被曝量は22ミリシーベルトになります。

注)いまどきの学校はほとんどが鉄筋コンクリートなので、校舎内に居れば、外部被曝を避けるために、それなりの効果があります。

 さきごろ、原子力安全委員会は、学校再開基準として、年間の被曝量が10ミリシーベルト以下との見解を示しましたが、福島の被曝量は、外部被曝だけでこの2倍。

 屋外で運動すれば、粉塵を吸うこともあるだろうから、放射性セシウムの内部被曝も相当に有るだろう。一般には、外部被曝よりも内部被曝の方が影響は大きいけれど、全く同じと考えると、福島の子は、内部外部被曝合わせて、年間最大44ミリシーベルトの被曝となる。福島産の野菜も食べるだろうから、その影響も考慮すれば、年間50ミリシーベルトを超えるだろう。放射能があまり減らないとすると(放射性セシウムの半減期は30年です)、小学校6年間で、300ミリシーベルト被曝する。大人でも十分に白血病になりうる被曝量です。(一般に、子供の方が、放射線被害が出やすいとされています。)

このように、机上計算すると、恐ろしくなってきます。
福島市・伊達市・郡山市の人は、本当に、3.8マイクロシーベルトで良いのかな。

 もっとも、日本は雨が多いので、汚染物質は雨で流され減少する可能性があり、6年間も、高濃度汚染が継続することは無いのかもしれません。でも、もし、このまま汚染が継続したらどうする!!!

 ところで、政府の災害対策本部は、子どもたちが受ける放射線量をできるだけ低く抑えるための留意事項として、ウガイと手洗いを推奨しています。しないよりも、した方が良いけれど、粉塵は、のどより、鼻につくので、鼻洗いをしないと、あまり効果がありません。また、手よりも髪の毛や衣服に付くことが多いので、外で体育の授業後は、すぐに、入浴、着替えをした方が良い。学校に風呂場を作った方が良いのではないだろうか。

福島・伊達・郡山市の小学校PTAの皆さま。校庭に砂埃が立たないように、児童が校庭を利用する前に、校庭に散水をしたらいかがでしょう。


注)新聞によると「学校の汚染調査から、放射性物質が沈着した砂ぼこりを吸い込むことによる内部被曝の影響は、高い学校でも全体の被曝量の3.5%ほどで、考慮する必要はないと結論付けた(asahi.com 2011年4月20日1時36分)」そうです。校庭の土壌を汚染している放射能が、砂埃と同程度の飛散であるならば、考慮する必要ないのかもしれません。しかし、放射性セシウムは、元々、原発から数十キロも飛んできたものです。砂埃と同程度に飛散するものと考えて良いのだろうか。
 なお、内部被曝の影響は考慮する必要がないほどわずかなものならば、ウガイなどは、特に必要ないはず。政府の説明は、どこか矛盾していて、必ずしも、そのまま信用するわけにはいかないように感じます。

 もし、政府の言う通り、内部被曝の影響を無視してよくても、年間20ミリシーベルト被曝すると6年で120ミリシーベルトになります。大人でも、健康被害が現れる可能性がある被爆量。
 ところで、福島の子供は、政府の基準内の放射能がついた野菜は食べないのでしょうか。内部被曝を無視するならば、基準内でも汚染された食材は食べられない。

今日は土曜日なのに出社2011年04月23日

 今日は、職場の一般公開日にあたっているので、私も出社。でも、公開とは、特に関係ない場所なので、平常勤務です。廊下やトイレには子供たちが多い。今年は、地震関係と、放射線関係に見学者が集まるだろう。放射線関係では『霧箱』を展示している人がいるだろうか。放射線測定の基本だから、学習には最適。

話は変わって。。。

 最近は、簡易で高精度な放射線測定器が売れていて、まともなものは、売り切れでなかなか手に入らないようです。安いものでも、10万円は超えるので、簡単に入手できるものではないけれど、もし、自分が福島に住んでいたら、入手してますね。ウクライナでは、放射線測定器を持っている人は、結構多いのだとか。食品を購入する時、放射線量を調べる人もいるようです。
 
 日本人の中には、日本政府の安全基準を満たしていれば、絶対安全と思っている人も多いと思います。水道水の日本政府の安全基準は、放射性ヨウ素で300Bq/L。国際基準の1/10だから安全との宣伝がなされます。でも、WHOの基準は10Bq/Lなので、日本の基準は、その30倍。本当に、こんなに汚染された水を子供に飲ませて平気なの??
http://www.who.int/hac/crises/jpn/faqs/en/index8.html
 日本の基準は、原発推進機関であるIAEAが、非常時の緊急基準として定めた汚染の1/10ということです。福島原発が非常時であることは分かるけれど、だからと言って、一般人がその汚染を甘受し続ける理由にはならない・・・と思う・・・そんなの嫌だ。

 チェルノブイリで事故対策に当たった科学者の生き残りの人の文章が、ダイヤモンドオンラインに掲載されています。
http://diamond.jp/articles/-/11970
 「国民にとって大切なのは政府発表を鵜呑みにするのではなく、自ら学び、考え、主体的に判断をして行動することである。」

サクラソウ2011年04月24日

埼玉県 さいたま市 田島が原 のサクラソウ公園では、サクラソウが見ごろです。ここは、最大のサクラソウ自生地で、保護区に指定されています。


こんな感じで、一面に咲いている。周りの草が伸びてきたので、1週間ほど早いほうが見ごろだったかも知れない。


白花は珍しい。この1株だけ見つかりました。



サクラソウ以外にもいろいろな花が咲いています。上の写真はヒキノカサ。キンポウゲ科の植物でウマノアシガタに似ている。ウマノアシガタはどこでも見かけるけれど、ヒキノカサは珍しい。


ノウルシも咲いているけれど、若葉がすでに緑になりつつありました。もう少し早いほうがよかった。



これは、ジロボウエンゴサク。



アマドコロも咲いています。


本の紹介―原発のある風景2011年04月25日

 
 
原発のある風景 上・下
柴野 徹夫 (著)   1983年発行(未来社)


福島原発事故では、作業員の過酷な労働が報道されているが、なかでも、もっとも過酷で、放射線の直接被爆にさらされているのは、最底辺の孫請け労働者である。彼らは『原発ジプシー』などと称される。

1990年代の終わりごろ、共産党の新聞「赤旗」に原発問題が連載された。この本は、赤旗連載をまとめたもの。
この本の第1章では、今回事故を起こした『福島原発』の孫請け労働者『原発ジプシー』問題を取り上げている。

原発では、定期点検等の作業に、ある程度の被曝を余儀なくされる作業が発生する。この時、被曝をしながら作業をするのは、東電の社員ではなくて、東電の孫請け会社の労務者であり、彼らは、ヤクザの親方のような人によって、全角各地から集められた日雇いの作業員で、法定限度の被曝をすると、作業を外れる。法定限度の被曝後は、名前を変えて、別の原発で作業をすることもあり、被爆実態は十分に把握されていない。法律では、未成年者の雇用は禁止されているが、年齢を偽って、未成年者が雇われることも珍しくない。骨肉腫や白血病で若くして死亡するものも珍しくないが、原発作業が原因であると特定されることは、めったにない。

なお、いわゆる原発ジプシーの実態を詳細に明らかにした本としては、堀江邦夫/著『原発ジプシー』(現代書館 1979.10)が有名。この本は、1984.10に講談社文庫から再版された。

* * * * * *

<< 2011/04 >>
01 02
03 04 05 06 07 08 09
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

RSS