福島市の放射能はいつになったら平常値に戻るのか ― 2011年05月15日

福島市の放射線:
上の図は、福島県のホームページに公開されている数値から書いた、福島市北保健福祉事務所事務局東側駐車場の環境放射能測定結果(暫定値)。
横軸は、放射能が急に大きくなった3月15日17時を0とした経過日数。縦軸は放射線強度で、単位はマイクロシーベルト毎時。縦軸は対数メモリで書いています。
放射性物質が単一核種のときは、放射線強度は、縦軸を対数で書くと、直線的に減衰します。しかし、複数の核種があるときは、最初のころは、順調に放射線が減るけれど、徐々に、減少時間が遅い放射性核種の影響が大きくなり、思いのほか放射線が減ってくれないことがあります。
福島市の放射線強度も最初のころは、10日もすれば1マイクロシーベルト以下になる勢いだったのに、減少速度はだんだん遅くなり、今の減り方だと、1マイクロシーベルト以下になるのは、あと3ヶ月は必要なようです。
同じ福島市内でも、場所によって、放射線がもっと強いところもあります。2倍程度の場所に1年間いたら、年間被曝量は15mSvになるかもしれません。福島市にお住まいで、お子さんのいる人は、ご自分の住んでいる場所の放射線量を計測して、高い場合は転居したほうがよいように思います。
4万2千円 :
自衛隊の被災地派遣手当を大幅に増加して、福島第一原発の事故対応などでは、最大4万2千円にするそうです。一般に言われている100mSv被曝の発癌率を0.5%として、8mSv被曝したときの発癌率をLNTモデルで計算すると、0.04%。癌になったときの損害を1億円とすると、4万円。このように計算すると、自衛隊員の災害派遣手当ては、妥当な金額です。
100mSv被曝の発癌率が0.5%というのは、広島・長崎の原爆の統計調査結果ですが、ずいぶん低い発癌率なので、あまり正確な数値ではないでしょう。ざっくり、計算するとこの、目安程度のものだと思います。
でも、この値がないと、放射能の危険性が決まられないことになり、そうすると、被災地派遣手当の上限が決められず、これでは、経費が無尽蔵に増大しかねないことになります。また、放射能の安全性が確認されるまでは、微量放射線を放出することも許されなくなり、原発建設が不可能になります。放射能の危険確率は、原発の安全性を証明する目的で使われてきた過去があります。しかし、それでも、発癌確率が正の値だと、納得しない人がいるので「しきい値モデル」「ホルミシス」などが提唱されました。
これらの値は、原発の安全性を主張する数値だったのに、想定外の巨大事故を起こしてしまうと、かえって、放射線の危険性を主張する値になっています。
飯舘村:
飯舘の避難がようやく始まりました。原発事故から2ヶ月も経ってしまった。今まで、何をしていたのだ。不必要な被曝を、子供たちにさせたことに対し、怒りを感じます。とは言え、今からでも、退避したほうがずっと良い。
上の図は、福島県のホームページに公開されている数値から書いた、福島市北保健福祉事務所事務局東側駐車場の環境放射能測定結果(暫定値)。
横軸は、放射能が急に大きくなった3月15日17時を0とした経過日数。縦軸は放射線強度で、単位はマイクロシーベルト毎時。縦軸は対数メモリで書いています。
放射性物質が単一核種のときは、放射線強度は、縦軸を対数で書くと、直線的に減衰します。しかし、複数の核種があるときは、最初のころは、順調に放射線が減るけれど、徐々に、減少時間が遅い放射性核種の影響が大きくなり、思いのほか放射線が減ってくれないことがあります。
福島市の放射線強度も最初のころは、10日もすれば1マイクロシーベルト以下になる勢いだったのに、減少速度はだんだん遅くなり、今の減り方だと、1マイクロシーベルト以下になるのは、あと3ヶ月は必要なようです。
同じ福島市内でも、場所によって、放射線がもっと強いところもあります。2倍程度の場所に1年間いたら、年間被曝量は15mSvになるかもしれません。福島市にお住まいで、お子さんのいる人は、ご自分の住んでいる場所の放射線量を計測して、高い場合は転居したほうがよいように思います。
4万2千円 :
自衛隊の被災地派遣手当を大幅に増加して、福島第一原発の事故対応などでは、最大4万2千円にするそうです。一般に言われている100mSv被曝の発癌率を0.5%として、8mSv被曝したときの発癌率をLNTモデルで計算すると、0.04%。癌になったときの損害を1億円とすると、4万円。このように計算すると、自衛隊員の災害派遣手当ては、妥当な金額です。
100mSv被曝の発癌率が0.5%というのは、広島・長崎の原爆の統計調査結果ですが、ずいぶん低い発癌率なので、あまり正確な数値ではないでしょう。ざっくり、計算するとこの、目安程度のものだと思います。
でも、この値がないと、放射能の危険性が決まられないことになり、そうすると、被災地派遣手当の上限が決められず、これでは、経費が無尽蔵に増大しかねないことになります。また、放射能の安全性が確認されるまでは、微量放射線を放出することも許されなくなり、原発建設が不可能になります。放射能の危険確率は、原発の安全性を証明する目的で使われてきた過去があります。しかし、それでも、発癌確率が正の値だと、納得しない人がいるので「しきい値モデル」「ホルミシス」などが提唱されました。
これらの値は、原発の安全性を主張する数値だったのに、想定外の巨大事故を起こしてしまうと、かえって、放射線の危険性を主張する値になっています。
飯舘村:
飯舘の避難がようやく始まりました。原発事故から2ヶ月も経ってしまった。今まで、何をしていたのだ。不必要な被曝を、子供たちにさせたことに対し、怒りを感じます。とは言え、今からでも、退避したほうがずっと良い。
狭山茶は飲まない ― 2011年05月18日
足柄の茶葉から、国の定めた野菜の基準値(500Bq/kg)を超える放射性セシウムが検出されました。
埼玉県狭山茶は最大468Bq/kgとぎりぎり基準をクリアしたそうです。こんなの飲む??
もともと、狭山茶は好きではないので、私には、あまり関係ないことなのですが。。。
でも、セシウムは茶葉だけにつく性質があるわけではないので、埼玉県の野菜は、それなりに汚染されているのでしょう。放射性セシウムは、お好きですか?
風評:
近頃、塩分濃度の濃い食品が嫌われています。食塩を毎日30g以上摂取しても、高血圧等の成人病にはなりません。私の家系では。食塩を毎日30g以上摂取して、高血圧などにならず、90歳以上生きた人など、親戚にはいくらでもいます。田舎者だから、食塩が多いんです。
それに、ただちに健康被害が出る量ではないことなど、明らかではないか。それなのに、みんなで寄ってたかって、高濃度の塩分が健康に悪いかのような、風評を広めるものだから。。。
放射能が政府の基準以下ならば安全であるかのようなことを言う人がいます。お前の家系は安全かもしれないよ、でも、私の家系は、そうでないかもしれない。
埼玉県狭山茶は最大468Bq/kgとぎりぎり基準をクリアしたそうです。こんなの飲む??
もともと、狭山茶は好きではないので、私には、あまり関係ないことなのですが。。。
でも、セシウムは茶葉だけにつく性質があるわけではないので、埼玉県の野菜は、それなりに汚染されているのでしょう。放射性セシウムは、お好きですか?
風評:
近頃、塩分濃度の濃い食品が嫌われています。食塩を毎日30g以上摂取しても、高血圧等の成人病にはなりません。私の家系では。食塩を毎日30g以上摂取して、高血圧などにならず、90歳以上生きた人など、親戚にはいくらでもいます。田舎者だから、食塩が多いんです。
それに、ただちに健康被害が出る量ではないことなど、明らかではないか。それなのに、みんなで寄ってたかって、高濃度の塩分が健康に悪いかのような、風評を広めるものだから。。。
放射能が政府の基準以下ならば安全であるかのようなことを言う人がいます。お前の家系は安全かもしれないよ、でも、私の家系は、そうでないかもしれない。
韓国の国会議員、北方領土訪問 ― 2011年05月20日
韓国国会「独島領土守護対策特別委員会」所属の複数の国会議員が、近々、国後島を訪問する予定だそうです。
日本では、批判的な論調が多いようだけれど、韓国の国会議員が、周辺国の情勢に関心をもって、視察旅行をするのは当然でしょう。ロシアのビザで訪問させるのが嫌ならば、日本政府が外交力を発揮して、日本政府に好ましい方法で訪問させる便宜を図ればよい。日本政府に外交能力がないことの責任を韓国議員に押し付けるのは、良くない。
さきごろ、イワノフ副首相がクナシリ・エトロフを訪問したことに対して、日本政府は批判しています。クナシリ・エトロフはロシアが実行支配し、ロシア人が住んでいるのだから、ロシアの政治家が訪問するのは当然のことです。択捉島出身者が政治家になって、故郷に住む親を尋ねることだって、ありうるでしょう。
日本では、批判的な論調が多いようだけれど、韓国の国会議員が、周辺国の情勢に関心をもって、視察旅行をするのは当然でしょう。ロシアのビザで訪問させるのが嫌ならば、日本政府が外交力を発揮して、日本政府に好ましい方法で訪問させる便宜を図ればよい。日本政府に外交能力がないことの責任を韓国議員に押し付けるのは、良くない。
さきごろ、イワノフ副首相がクナシリ・エトロフを訪問したことに対して、日本政府は批判しています。クナシリ・エトロフはロシアが実行支配し、ロシア人が住んでいるのだから、ロシアの政治家が訪問するのは当然のことです。択捉島出身者が政治家になって、故郷に住む親を尋ねることだって、ありうるでしょう。
ワタスゲの花 ― 2011年05月22日
足尾銅山 ― 2011年05月23日
簀子橋堆積場:
昨年10月、ハンガリーの西部で、アルミニウム精錬工場の汚水貯水池堤防が決壊し、下流のコロンタール村が、赤い廃液に覆われたことがありました。その後、どうなったのだろう。
通洞には、銅山観光施設があって、人形展示で、昔の銅山労働の様子を再現しています。
通洞にある、変電所あと。
上流の足尾地区に行くと、昔の精錬所などが残されています。 下の写真は、精錬所あとで、3つある丸いものは、硫酸タンク。
煙突。
労働者住宅。今は、空家。
精錬所に続く鉄道は、今では、廃線になっています。
精錬所上流の松木渓谷は煤煙のため禿山になったところ。今では、植林が少しづつ、続けられています。写真は、松木渓谷の入り口付近で、足尾ダムのあるところ。ここから先は、許可車両以外進入禁止。
昨年10月、ハンガリーの西部で、アルミニウム精錬工場の汚水貯水池堤防が決壊し、下流のコロンタール村が、赤い廃液に覆われたことがありました。その後、どうなったのだろう。
日本で、同様な汚水堆積場は、栃木県足尾の簀子橋堆積場です。
通洞の町を見下ろす山の中腹にあって、古河金属系の子会社が管理しています。立ち入り禁止になっているけれど、東側の山に登ると、見下ろすことが出来るので、一度、見たいと思っています。ただし、山は、登山道などないに等しいので、草木の繁茂した季節は無理。そういうことで、冬になったら一度見たいと思っているのですが、下見をかねて、足尾に行きました。登山の入り口は、大体分かった。登山靴と軍手は必携だろう。長袖、長ズボン、帽子は欠かせない。とは言え、比較的容易に登れる山のようです。慎重に行けば、危険はないだろう。
写真は通洞の町から見た、簀子橋堆積場。実際に見えているのは、堆積場に通じるジグザグ道のある斜面です。
通洞の町を見下ろす山の中腹にあって、古河金属系の子会社が管理しています。立ち入り禁止になっているけれど、東側の山に登ると、見下ろすことが出来るので、一度、見たいと思っています。ただし、山は、登山道などないに等しいので、草木の繁茂した季節は無理。そういうことで、冬になったら一度見たいと思っているのですが、下見をかねて、足尾に行きました。登山の入り口は、大体分かった。登山靴と軍手は必携だろう。長袖、長ズボン、帽子は欠かせない。とは言え、比較的容易に登れる山のようです。慎重に行けば、危険はないだろう。
写真は通洞の町から見た、簀子橋堆積場。実際に見えているのは、堆積場に通じるジグザグ道のある斜面です。
通洞には、銅山観光施設があって、人形展示で、昔の銅山労働の様子を再現しています。
通洞にある、変電所あと。
上流の足尾地区に行くと、昔の精錬所などが残されています。
煙突。
労働者住宅。今は、空家。
精錬所に続く鉄道は、今では、廃線になっています。
精錬所上流の松木渓谷は煤煙のため禿山になったところ。今では、植林が少しづつ、続けられています。写真は、松木渓谷の入り口付近で、足尾ダムのあるところ。ここから先は、許可車両以外進入禁止。
デタラメ春樹 ― 2011年05月23日
原子力安全委員会委員長の班目春樹先生が、海水注入で再臨界の危険性があると言ったとか言わないとか、話題になっています。班目先生は、「再臨界の可能性はゼロではありませんと申し上げた」「細野補佐官も、『再臨界の可能性』と『再臨界の危険性』がどれだけ違うか、どうもあんまりよくお分かりになってなかったみたいだ」と述べたそうです。
何を言っているのだ。再臨界になれば、中性子線が放出されるのだから、人体に危険性があるに決まっているではないか。班目先生は、再臨界の可能性はあるけれど、再臨界が大規模に起こってチャイナシンドロームに至るとか、大爆発を起こすとか、そういう、大規模な危険性は無いと言いたかったのだろう。だったら、そういえば良いのに。
『再臨界の可能性』があるならば、近くに原発労働がいたら、中性子線被曝の危険性があることになります。班目先生は、悪気があって発言したわけではないのだろうけれど、班目先生の発言を文字通り受け取ると、「原発労働者や、周辺住民が中性子線被曝しても、そんなことどうでも良いのだ」と、言っているように、私には聞こえてしまう。
班目先生とは直接面識は無いのだけれど、かつて、お世話になったことがあるので、あまり悪口は言いたくないのですが、もう少し、まともな態度を取ってほしい。
それにしても、良く分からないのは、初めから、ホウ酸水を注入しておけばよかったのに。再臨界防止のためには、ホウ酸水注入が常道のはず。
5月15日のヨミウリオンラインによると、
「東京電力は15日、福島第一原子力発電所3号機の原子炉で再臨界が起きないよう、原子炉の冷却水に、中性子線を吸収するホウ酸を溶かした上で、同日から原子炉への注水を始めたと発表した。1、2号機も今後、同じ措置を取る。」とのことです。再臨界防止のため、ホウ酸水を注入したけれど、たびかさなる注水で、ホウ酸濃度が低下したので、安全のための注入なのでしょう。
何を言っているのだ。再臨界になれば、中性子線が放出されるのだから、人体に危険性があるに決まっているではないか。班目先生は、再臨界の可能性はあるけれど、再臨界が大規模に起こってチャイナシンドロームに至るとか、大爆発を起こすとか、そういう、大規模な危険性は無いと言いたかったのだろう。だったら、そういえば良いのに。
『再臨界の可能性』があるならば、近くに原発労働がいたら、中性子線被曝の危険性があることになります。班目先生は、悪気があって発言したわけではないのだろうけれど、班目先生の発言を文字通り受け取ると、「原発労働者や、周辺住民が中性子線被曝しても、そんなことどうでも良いのだ」と、言っているように、私には聞こえてしまう。
班目先生とは直接面識は無いのだけれど、かつて、お世話になったことがあるので、あまり悪口は言いたくないのですが、もう少し、まともな態度を取ってほしい。
それにしても、良く分からないのは、初めから、ホウ酸水を注入しておけばよかったのに。再臨界防止のためには、ホウ酸水注入が常道のはず。
5月15日のヨミウリオンラインによると、
「東京電力は15日、福島第一原子力発電所3号機の原子炉で再臨界が起きないよう、原子炉の冷却水に、中性子線を吸収するホウ酸を溶かした上で、同日から原子炉への注水を始めたと発表した。1、2号機も今後、同じ措置を取る。」とのことです。再臨界防止のため、ホウ酸水を注入したけれど、たびかさなる注水で、ホウ酸濃度が低下したので、安全のための注入なのでしょう。
原発は止めた方が良いように思います ― 2011年05月25日
原爆と原発事故:
原爆は一時的に放射線が大量に放出されるけれど、放射性物質はそれほど多くは無い。このため、一時に多数の人を殺傷します。これに対して、原発事故は、放射線はそれほど多くは無いけれど、放射性物質が大量に放出され、時間をかけて、健康被害が現れます。このように、両者には、明確な違いがあります。
広島原爆の直後には、黒い雨が降りましたが、その中には、放射性物質が含まれていました。京都大学の今中氏は黒い雨が降った地点でのセシウム濃度を数百Bq/m2程度、最大でも2000Bq/m2と推定しています。
一方、福島原発事故では、飯舘村、浪江町、葛尾村の放射性セシウムの濃度は147万Bq/m2を越えているそうです。これは、チェルノブイリで強制退去となった汚染量です。これほどの高濃度汚染地には、長期間住む人は少ないだろうけれど、55万Bq/m2を越えた汚染地には、妊婦や子供が住んでいます。
「ただちに健康被害は生じない」ことは、確かだろうけれど、あまりにも多いようで心配です。
福島県では、今後30年にわたって、原発周辺自治体の住民約15万人に対して、健康診断を行うそうです。微量放射能被曝の健康に及ぼす影響が、詳細に調べられる可能性があります。その結果、心配が杞憂だったことが判明すれば良いのだけれど。
配管:
今日の朝日新聞の一面トップ記事は、3号機の冷却配管が、津波前に地震で破損していた可能性を伝えるものです。1号機でも、津波前に、放射能レベルが急激に上昇していることを観測しており、地震で配管が破断していた可能性を強く示唆しています。
今回の津波は想定外だったけれど、地震の揺れは想定の範囲内でした。もし、地震で配管に損傷が起こっていたならば、他の原発もすべて危険であることになります。日本中のすべての原発は、即刻停止して、安全性を詳細に調べる必要があるかもしれない。
計算:
原発の地震に対する安全性は、数値計算により十分に確認されていることになっています。
本職は数値計算屋です。自分の感覚としては、原発の構造安全性解析結果は必ずしも信用できない。もちろん、現在可能な、最高の計算をしていることは確かです。だからと言って、計算結果が正しいことにはならない。ただし、大事故確率解析に比べれば、構造安全性解析は、はるかに優れています。
仕分け:
理研のスーパーコンピュータプロジェクトは、レンホウさんの仕訳で、だいぶ削減されたけれど、これが完成していれば、原発の構造安全性解析結果は、もう少し進んでいたかもしれない。でも、信頼できる解析には、まだまだ遠いように感じる。スーパーコンピューターは理研が担当だけれど、原発の構造安全性解析は大学が中心になって、実際の作業は。。。と、これ以上書くと、職業の守秘義務に抵触しそうなのでやめます。
原爆は一時的に放射線が大量に放出されるけれど、放射性物質はそれほど多くは無い。このため、一時に多数の人を殺傷します。これに対して、原発事故は、放射線はそれほど多くは無いけれど、放射性物質が大量に放出され、時間をかけて、健康被害が現れます。このように、両者には、明確な違いがあります。
広島原爆の直後には、黒い雨が降りましたが、その中には、放射性物質が含まれていました。京都大学の今中氏は黒い雨が降った地点でのセシウム濃度を数百Bq/m2程度、最大でも2000Bq/m2と推定しています。
一方、福島原発事故では、飯舘村、浪江町、葛尾村の放射性セシウムの濃度は147万Bq/m2を越えているそうです。これは、チェルノブイリで強制退去となった汚染量です。これほどの高濃度汚染地には、長期間住む人は少ないだろうけれど、55万Bq/m2を越えた汚染地には、妊婦や子供が住んでいます。
「ただちに健康被害は生じない」ことは、確かだろうけれど、あまりにも多いようで心配です。
福島県では、今後30年にわたって、原発周辺自治体の住民約15万人に対して、健康診断を行うそうです。微量放射能被曝の健康に及ぼす影響が、詳細に調べられる可能性があります。その結果、心配が杞憂だったことが判明すれば良いのだけれど。
配管:
今日の朝日新聞の一面トップ記事は、3号機の冷却配管が、津波前に地震で破損していた可能性を伝えるものです。1号機でも、津波前に、放射能レベルが急激に上昇していることを観測しており、地震で配管が破断していた可能性を強く示唆しています。
今回の津波は想定外だったけれど、地震の揺れは想定の範囲内でした。もし、地震で配管に損傷が起こっていたならば、他の原発もすべて危険であることになります。日本中のすべての原発は、即刻停止して、安全性を詳細に調べる必要があるかもしれない。
計算:
原発の地震に対する安全性は、数値計算により十分に確認されていることになっています。
本職は数値計算屋です。自分の感覚としては、原発の構造安全性解析結果は必ずしも信用できない。もちろん、現在可能な、最高の計算をしていることは確かです。だからと言って、計算結果が正しいことにはならない。ただし、大事故確率解析に比べれば、構造安全性解析は、はるかに優れています。
仕分け:
理研のスーパーコンピュータプロジェクトは、レンホウさんの仕訳で、だいぶ削減されたけれど、これが完成していれば、原発の構造安全性解析結果は、もう少し進んでいたかもしれない。でも、信頼できる解析には、まだまだ遠いように感じる。スーパーコンピューターは理研が担当だけれど、原発の構造安全性解析は大学が中心になって、実際の作業は。。。と、これ以上書くと、職業の守秘義務に抵触しそうなのでやめます。
1mSv以下 ― 2011年05月27日
福島県内の、学校・幼稚園・保育園の放射線について、文部科学省はこれまで、年間で20ミリシーベルトを超えないようにするとしていました。このため、3.8μSv/h以下の線量ならば、子供が校庭を使っても差し支えないとの、とんでもない方針になっていました。いくらなんでも、これでは、保護者は納得しない。
27日、文部科学省は、福島の子供が受ける放射線を、年間1ミリシーベルト以下を目指すとの方針を明らかにしました。子供の健康にとって、大きな前進です。しかし、一方で、屋外活動の基準として定めた、3.8μSv/h(これは、年間20mSvに相当する)は、当面撤回しないそうです。
20mSvが1mSvになったのだから、大きな前進ではあるけれど、3.8μSv/hの校庭で、子供が運動することを撤回していないのは、どうにも理解できません。こんな高濃度の校庭を使わされるとしたら、子供が気の毒でなりません。実際には、各学校で、汚染された表土をはぎ取っているだろうから、こんなに高濃度汚染された校庭を使っている学校は無いでしょうね。幼稚園や保育園の砂場の砂は入れ替えたかな。
国の方針では、1μSv/h以上の学校で、表土入れ替え費用を全額国が負担するそうです。どのような根拠で、このような高い線量にしたのでしょう。3.8μSv/hが年間20mSvに相当するのだから、年間1mSvを達成するためには、0.2μSv/hでなくてはならない。0.2μSv/hを越えている地域では、放射線を減らすために、表土の入れ替えを含む、いろいろな努力をすべきです。
今回の方針転換は不十分ではあるけれど、少しホッとしました。
27日、文部科学省は、福島の子供が受ける放射線を、年間1ミリシーベルト以下を目指すとの方針を明らかにしました。子供の健康にとって、大きな前進です。しかし、一方で、屋外活動の基準として定めた、3.8μSv/h(これは、年間20mSvに相当する)は、当面撤回しないそうです。
20mSvが1mSvになったのだから、大きな前進ではあるけれど、3.8μSv/hの校庭で、子供が運動することを撤回していないのは、どうにも理解できません。こんな高濃度の校庭を使わされるとしたら、子供が気の毒でなりません。実際には、各学校で、汚染された表土をはぎ取っているだろうから、こんなに高濃度汚染された校庭を使っている学校は無いでしょうね。幼稚園や保育園の砂場の砂は入れ替えたかな。
国の方針では、1μSv/h以上の学校で、表土入れ替え費用を全額国が負担するそうです。どのような根拠で、このような高い線量にしたのでしょう。3.8μSv/hが年間20mSvに相当するのだから、年間1mSvを達成するためには、0.2μSv/hでなくてはならない。0.2μSv/hを越えている地域では、放射線を減らすために、表土の入れ替えを含む、いろいろな努力をすべきです。
今回の方針転換は不十分ではあるけれど、少しホッとしました。
本の紹介―原発ジプシー ― 2011年05月29日

原発ジプシー
堀江 邦夫(著) 1979/10発行 (現代書館)
文庫本も出版されたようだが、長い間、どちらも絶版になっていた。
福島原発事故があって、原発の実態に、世間の関心が高まってきたので、現代書館から単行本が、講談社文庫からは、文庫版が再版された。
原発ジプシー 増補改訂版 ―被曝下請け労働者の記録
原発労働記 (講談社文庫)
福島原発事故対応では、東電のずさんな労働管理が明らかになっているが、この本は、30年以上前から、原発のずさんな放射線管理の実態を明らかにしている。原発労働は、下請け、孫請け・・・とピラミッド構造になっているが、原発労働では、著者は、自ら、日雇い労務者として、美浜原発、福島原発、敦賀原発の労働に従事した。この本は、そのときのルポルタージュ。特に、福島原発は、今回大事故を起こした福島第一原発2号機での作業である。
原発は高度科学技術を駆使して作られているとの宣伝とは裏腹に、実際の作業は、日雇い労務者に大量被曝をさせることにより、何とか、維持されている。また、公にされない事故や、労働者災害は、現場でうやむやにする等の、脱法行為がまかり通っているが、著者の明らかな労働災害も、うやむやにしたことが、記されている。
本の紹介-密漁の海で ― 2011年05月31日

〈新訂増補版〉密漁の海で
本田良一/著 凱風社 (2011/3/20)
2004年に発行された、同名の本の改訂新版。最後の章が追加になっている。北方領土海域の漁業問題に関心があるならば、旧版を読んでいる人も多いだろうが、もし、まだ読んでいないのならば、ぜひとも一読してもらいたい。
1965年に起こった北島丸事件から取り上げている。レポ船(日本の情報をソ連に渡して、違法操業を見逃してもらう船)・特攻船(協力エンジンを積んだ高速船で警備を逃れる違法操業船)の実態が詳しく、内容の2/3を占める。残りの1/3は、ゴルバチョフ以降の日ソ・日露領土交渉にさかれていて、鈴木宗男問題等も詳しく説明されている。しかし、この部分は、北方領土周辺海域の漁業とは関係なく、前半の2/3と後半の1/3の関連性が乏しい。ゴルバチョフ時代以降の北方海域の漁業実態にもう少し触れて欲しかった。
最終章、続・エピローグ『停滞する領土問題、拿捕・銃撃事件が続く「国境の海」』が追加されている。この章は、鈴木宗雄逮捕とそれ以降の国境交渉の停滞が主題。また、2006年の坂下登船長の密漁船銃撃死、2009年のVMS不法停止事件にも触れられている。坂下登船長は、かつて、レポ船の乗組員として名を馳せた人であり、著者は、そのことは当然よく知っているはずなのに、本書では、何も触れられていない。