本の紹介-内部被曝の脅威 ― 2011年11月14日

内部被曝の脅威 ちくま新書(541)
著者の肥田氏は、軍医として、広島原爆投下直後から、原爆被災者の治療にあたり、原爆症の様態を観察した第一人者。原爆症は、原爆投下による直接被爆以外に、内部被曝の影響による健康被害を古くから指摘している。
この本は、イラク戦争の時に、米軍が投下した劣化ウラン弾による内部被曝を警告するものであり、福島原発以前に書かれているので、福島原発の話は無い。
内部被曝の健康被害は、放射線吸収エネルギー換算で、外部被曝と同じに扱うことが出来るとの説があり、現在政府の安全対策はこの説に基づいている。しかし、著者は臨床経験からこの説に反対し、内部被曝の影響はもっと深刻であると主張する。
どちらの説が正しいのか、私には分からないが、こういうときは、安全側に判断して、内部被曝はなるべく避けるべきだ。将来、内部被曝を外部被曝と同じに扱ってよいと分かったならば「心配しすぎでしたねー」と笑い話で終わるだろう。逆に、もし、内部被曝の健康被害は深刻であることが分かったら「心配が足りなくて子供が癌で死んだ」では、済まされない。