本の紹介-日本人はなぜ終戦の日付をまちがえたのか ― 2011年11月24日
色摩力夫/著 日本人はなぜ終戦の日付をまちがえたのか 黙出版(2000/11)
お勧め本とは思えないが、読んだので、忘れないように書き留めておきます。
終戦の日の日付についての解説は非常に少なく、本の大半は、日本の降伏は無条件降伏ではないとの主張を展開している。
論の基本は、ポツダム宣言第5条に条件と書かれており、以下の条は降伏条件であり、さらに降伏文書で、ポツダム宣言の条件を履行することになっているので、日本の降伏は無条件降伏ではないとの趣旨である。
しかし、この論はおかしい。ポツダム宣言第5条は「terms」であり「条件」とは異なる語が使われている。ポツダム宣言英文を和訳するときに、訳者が6条以下を条件であると思って、5条の「terms」を「条件」と訳すことはあるが、5条の「terms」の訳が「条件」となっているからといって、直ちに、6条以下が条件であることを意味しない。
さらに、この件に関して、本書の中にはとんでもない誤った記述がなされている。P32に「降伏文書の中でポツダム宣言の条件の履行が義務付けられている」となっているが、降伏文書の日本語訳を見ると、「ポツダム宣言の条項」となっており、著者が言うように条件とは訳されていない。原語は「provisions」である。
著者は、長年外交官を勤め、退官後は、大学教授になっているが、そのような経歴を考えると、P30には、不思議な記述がある。
降伏文書には「subject to」となっている英文が「制限の下に置かるる」と訳されている件に対して、『軍部や日本国民一般への配慮からか、一見あたりさわりのない訳文とされたようである』と説明している。
この件に関連して、ポツダム宣言受諾に対する米国回答の日本語訳について、下田武三は『"subject to"は"隷属する"の意味では有るが、これでは軍部が受け入れないので、"制限の下に置かれる"と意訳した』と説明している(下田武三/著 戦後日本外交の証言 上 1984年(昭和59年)8月、行政問題研究所)。
日本語訳の正確性を吟味する上で、必要な情報を十分に調査しないで本書は書かれているのだろうか。
お勧め本とは思えないが、読んだので、忘れないように書き留めておきます。
終戦の日の日付についての解説は非常に少なく、本の大半は、日本の降伏は無条件降伏ではないとの主張を展開している。
論の基本は、ポツダム宣言第5条に条件と書かれており、以下の条は降伏条件であり、さらに降伏文書で、ポツダム宣言の条件を履行することになっているので、日本の降伏は無条件降伏ではないとの趣旨である。
しかし、この論はおかしい。ポツダム宣言第5条は「terms」であり「条件」とは異なる語が使われている。ポツダム宣言英文を和訳するときに、訳者が6条以下を条件であると思って、5条の「terms」を「条件」と訳すことはあるが、5条の「terms」の訳が「条件」となっているからといって、直ちに、6条以下が条件であることを意味しない。
さらに、この件に関して、本書の中にはとんでもない誤った記述がなされている。P32に「降伏文書の中でポツダム宣言の条件の履行が義務付けられている」となっているが、降伏文書の日本語訳を見ると、「ポツダム宣言の条項」となっており、著者が言うように条件とは訳されていない。原語は「provisions」である。
著者は、長年外交官を勤め、退官後は、大学教授になっているが、そのような経歴を考えると、P30には、不思議な記述がある。
降伏文書には「subject to」となっている英文が「制限の下に置かるる」と訳されている件に対して、『軍部や日本国民一般への配慮からか、一見あたりさわりのない訳文とされたようである』と説明している。
この件に関連して、ポツダム宣言受諾に対する米国回答の日本語訳について、下田武三は『"subject to"は"隷属する"の意味では有るが、これでは軍部が受け入れないので、"制限の下に置かれる"と意訳した』と説明している(下田武三/著 戦後日本外交の証言 上 1984年(昭和59年)8月、行政問題研究所)。
日本語訳の正確性を吟味する上で、必要な情報を十分に調査しないで本書は書かれているのだろうか。
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