本の紹介-逆説の日本史2012年04月23日

   
逆説の日本史 17 江戸成熟編 アイヌ民族と幕府崩壊の謎
井沢元彦/著 小学館 (2011/2)

特にお薦め本とは思わないけれど、読んだので忘れないために書きとめておく。

AMAZONの内容説明には、以下のように書かれている。

『第1章では、東北地方から北海道、さらには千島列島まで、独自の文化を育んできたアイヌの歴史を照射する。和人が蝦夷地に進出する契機となった北東北の争いから和人の過酷な仕打ちに端を発した「アイヌ三大蜂起」。さらには、老中・松平定信が蝦夷地調査報告書を黙殺した理由にも迫る。第2章では、幕末に燎原の火の如く盛り上がった尊皇攘夷思想の源流ともいえる国学思想の成り立ちを荷田春満、本居宣長、賀茂真淵、平田篤胤ら「国学四大人」の軌跡を通じて解読する。第3章では、天保の改革に挑んだ徳川幕府が「祖法大事」と変革の波に乗り遅れる様を詳述。優秀な官吏が国の行く末を見誤っていく歴史をあますところなく活写する。第4章では「なぜ日本の道路舗装率が中国・韓国などより低いのか?」という命題からいたずらに開発に走らず、身の丈にあった暮らし、完全リサイクル社会を実現した江戸の暮らしに陽をあてている。』

 第1章はアイヌ3大蜂起、すなわち、コシャマインの戦・シャクシャインの戦・クナシリメナシの戦を取り上げている。アイヌの歴史を知らない人は、この本を読むことで、アイヌ史に興味を持つのも良いだろう。しかし、他の通史的な歴史書では、アイヌ3大蜂起のみを取り上げるのではなくて、アイヌと和人との関係の歴史的文脈の中で、アイヌ3大蜂起を理解するように書かれていることが多いので、もし、アイヌ史に興味があるのならば、山川出版の日本史リブレットのような他書により知識を得た方が良いように思う。
 第1章の後半は田沼から松平定信時代になって、蝦夷地経営がおろそかになった理由を、朱子学の宗教観に求めている。そういう面があったことも否定できないが、このような単純な考えで松平定信が政策決定していたとも考えられず、著者の一方的意見にすぎないと感じる。本書は、歴史書ではなく、歴史を題材にしたノンフィクション小説の面があるので、為政者の心情が重要なのかもしれない。
 第3章は開国の事情。最近の歴史書が、史実と社会的背景を中心に描かれるのに対して、本書では、為政者・官僚の資質を中心に描く。この方が、娯楽的要素が強くなり、気楽に面白く読める人も多いのかもしれないが、歴史を学習したいのならば、普通の歴史書を読んだ方が良いし、娯楽書が良いならば、普通の小説を読んだ方が気がきいているように感じる。
 第3章で、読む気が失せたので、第4章は読んでいない。

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