2013年元旦 ― 2013年01月01日
つつしんで
新年のご挨拶を申し上げます
昨年は、尖閣問題を始めとして、領土問題の影響で、何かと騒がしい年でした。一昨年発生した福島原発事故も、未だに解決のめどが立っていませんが、今また、かつてのような、ずさんな原発推進を目論む勢力が台頭しそうな雰囲気です。
本年もよろしくお願い申し上げます。
新年のご挨拶を申し上げます
昨年は、尖閣問題を始めとして、領土問題の影響で、何かと騒がしい年でした。一昨年発生した福島原発事故も、未だに解決のめどが立っていませんが、今また、かつてのような、ずさんな原発推進を目論む勢力が台頭しそうな雰囲気です。
本年もよろしくお願い申し上げます。
創造学園大学 ― 2013年01月04日
本の紹介-ルポ イチエフ ― 2013年01月05日

布施祐仁/著『ルポ イチエフ――福島第一原発レベル7の現場』 (2012/9)岩波書店
今更、私が紹介する必要もない有名な本ですが、最近読んだので、記載来ます。
内容は、福島第一原発事故の現場で作業にあたる原発作業員の話。劣悪な労働環境で、違法派遣・請負、労災隠しなどが行われ、危険手当も、ピンハネされている、現場の実態を伝えている。
原発は近代科学の粋なので、合理的・理想的な職場であるかのような錯覚をもっていた人も多いだろう。ところが、実際は、日雇い作業員に被曝をさせて、人間を虫けら同然に使い捨てる、ヤクザ・手配師が横行する闇社会だった。原発事故以降、この実態はまったく変わっていない。今後、原発を廃止するのか、推進するのかの判断をする上でも、原発労働の実態を知っておく必要があるだろう。世の中、綺麗ごとでは済まされない。
本の紹介-「尖閣問題」とは何か ― 2013年01月06日

豊下楢彦/著 「尖閣問題」とは何か (岩波現代文庫)(2012/11)
本のメインテーマは、尖閣問題の解決方法の提言。尖閣問題の歴史的経緯や中・台・米の態度、さらには、他の領土問題である、北方領土問題についても詳しい。
著者は戦後史研究者の第一人者であるため、日本の立場に固執することなく、客観的な説明になっており、日本の領土問題を考える上で、大いに参考になる。著者の説には、賛否両論あるだろうが、尖閣問題に限らず、日本の領土問題を考える上で、欠かせない一冊だ。
本の紹介-日本の国境を直視する 2 竹島・北方領土 ― 2013年01月07日

山本皓一/著『日本の国境を直視する 2 竹島・北方領土』 (2012/12) KKベストセラーズ
この本は、読むことをお勧めしない。
同じシリーズに、『1 尖閣諸島』がある。どちらも全体の半分弱が写真。尖閣の写真は珍しく、できばえも良かったが、北方領土や竹島では、写真や動画はそれほど珍しくもなく、また、本書の写真のできばえが特に優れていることもないので、写真集として見た場合、たいしたことはない。
本文の半分が竹島問題で、残りの半分が北方領土問題。日本に都合の良い解釈だけであるうえ、事実関係も正確さを欠くため、この本を読むよりは、無料で外務省が配布しているパンフレットやpdfファイルを見たほうがずっと正しい理解が得られるだろう。
日本政府は「竹島は日本の固有の領土である」と主張しているが、実際には韓国の実効支配下にあるので、竹島に上陸するためには、ここが韓国の領土であることを前提として、韓国政府の手続きに従う必要がある。しかし、このような方法で、竹島へ上陸することは、日本国民が竹島において、韓国の管轄権に服し、竹島に対する韓国の領有権を認めたことに通じるため、日本政府は日本国民に対して竹島に上陸しないように要請している。
しかし、日本政府の要請を無視して、竹島に上陸したことのある日本人は少なくない。フリージャーナリストの西牟田靖氏もその一人であるが、西牟田氏は事実を取材し、有りのままに報道することを目的としたジャーナリストであるため、氏の行動には一貫性があり理解できる。本書の著者である山本皓一氏も日本政府の要請を無視して、竹島に上陸したジャーナリストであるが、山本氏は竹島日本領論者であるため、氏の行動は理解できなかった。本書P104に日本政府の要請を無視して竹島に上陸した理由が書かれている。
島への渡航方法が問題なのではなく、日本人が、自分たちの立場で撮影した写真や映像を使用して報道することが重要なのであって、「どうせ同じだから」と何も考えずに韓国の映像を使ったりするような感覚の報道が続く限り、日本人が竹島について正しい理解を得ることはできない。韓国人が撮影した映像は「独島」であって「竹島」ではない。この意味の違いを理解せず「大統領が上陸したのは許せない」と言うのはおかしいのである。小さな建前にこだわるよりも、どんな方法でも良いから自分のカメラで写真を撮る。それが私の信念であり、今後も必要があれば、「竹島行き」を敢行しようと思っている。勝手な言い分だ。山本皓一氏は、韓国政府にパスポートを提示して韓国に入国し、韓国滞在外国人の身分で、鬱稜島から「独島」観光船に乗船して、島に上陸している。そこが、韓国領独島であることを前提とした上陸であって、山本氏が、勝手な屁理屈をこねまわしても、日本国民の一人が、韓国領独島に上陸した事実には変わりは無い。
韓国側の映像を使うのが嫌ならば、第三国人カメラマンに依頼して撮影すれば良いではないか。そもそも、日本人である必要がどれほどあるというのだ。もし仮に、「日本は中国固有の領土」とイカレタ考えを持っている中国人がいたとする。彼が、東京に観光に来て、写真を撮ったら、「日本は中国固有の領土」との認識が得られるとでもいうのだろうか。
本書のレベルの程度は、北方領土の章にも表れている。P187に次の記述がある。類似の記述は多くの書籍に書かれているので、特に珍しいことではないのだが、「明らかに終戦後」と書いてしまうところがいただけない。
日本がポツダム宣言受諾を連合国に通告したのは8月10日のこと。軍部の反発があったため受諾の正式決定は8月14日まで延びたが、ともあれ、遅くとも第二次世界大戦は8月14日をもって終結している。ところが、ソ連が千島列島に進軍して北方領土を含む日本の領土を占領したのは、明らかに終戦後なのである。日経新聞電子版には池上彰の東工大講義が連載されているが、このうち2012/9/24には、以下の記事がある。
今回は戦後の日本がどのように復興していったかを振り返ります。東日本大震災からの復興を考えるにあたっても、参考になる点があるからです。これが「歴史に学ぶ」ということです。まずは君たちに質問しましょう。太平洋戦争が終わったのは、1945年のいつかな?「さすが東工大の学生」は、9月2日を知っているのに、山本皓一氏の才能では、この日付までは理解できなかったのだろうか。山本氏の出身大学である日大芸術の駿台偏差値は45程度、東工大は61程度と大きな開きがある。私大と国立の偏差値を単純に比較できないが、この違いは大きい。成績不振で、偏差値45程度の私大にしか入れなかった人が、その後もまじめに勉強することがなかった結果・・・、この本を読んでいるとそんな気がしてくる。
学生A 9月2日です。
あっちゃー。8月15日と答えるかと期待していたけど、ちゃんと答えたね。さすが東工大の学生だ。 (以下省略)
日大芸術のためにちょっと補足。芸術系や体育系は、学科試験の他に実技が要求されるので、学生の能力を単純に偏差値だけで判断することはできない。しかし、学科の偏差値が低くても入れることは確かだ。
北方領土交渉 ― 2013年01月08日
東郷元欧亜局長が証言 露、平成4年に秘密提案「平和条約待たず2島返還」
との記事がある。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130108-00000000-san-pol
1992年の渡辺美智雄外相とコズイレフ外相の会談の席上、口頭で行われた提案について、会談の席に居なかった東郷氏が証言したものである。当時のロシア外務次官ゲオルギー・クナーゼ氏が「歯舞・色丹の引き渡し手続きに合意した後に平和条約を締結し、その後、日露間でふさわしい雰囲気ができれば国後・択捉を協議する、との内容だった」と述べたことに対する反論として、東郷氏が証言したそうである。
しかし、これは、正式提案ではなく、単なる口頭打診なのだから、両国間で、訳文を正式に検討する様なことはなされておらず、解釈次第によっては、日ロ間の認識に齟齬が生じる可能性があるものだろう。こういうことは、両国に残る議事録が公開されたのちに、それを検証しなくては、正確なことは分からない。それに、会談に出席していなかった東郷氏が、提案内容を提案されたそのままの言語で正確に聞いたのかどうかも、東郷証言だけからは分からない。
との記事がある。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130108-00000000-san-pol
1992年の渡辺美智雄外相とコズイレフ外相の会談の席上、口頭で行われた提案について、会談の席に居なかった東郷氏が証言したものである。当時のロシア外務次官ゲオルギー・クナーゼ氏が「歯舞・色丹の引き渡し手続きに合意した後に平和条約を締結し、その後、日露間でふさわしい雰囲気ができれば国後・択捉を協議する、との内容だった」と述べたことに対する反論として、東郷氏が証言したそうである。
しかし、これは、正式提案ではなく、単なる口頭打診なのだから、両国間で、訳文を正式に検討する様なことはなされておらず、解釈次第によっては、日ロ間の認識に齟齬が生じる可能性があるものだろう。こういうことは、両国に残る議事録が公開されたのちに、それを検証しなくては、正確なことは分からない。それに、会談に出席していなかった東郷氏が、提案内容を提案されたそのままの言語で正確に聞いたのかどうかも、東郷証言だけからは分からない。
本の紹介-舟田次郎/著 千島問題を考える ― 2013年01月14日

舟田次郎/著 千島問題を考える 1979.4 たいまつ新書(たいまつ社)
北海道新聞記者による北方領土問題の解説。北方領土は日本固有の領土であり、日本の権利回復要求として、叫ばれているが、このような単純な図式に疑問を持った視点で、北方領土問題が捉えられている。
本の内容は、国際法上の問題、返還交渉の経緯、地元の利益と密漁など、筆者独自の視点で描かれている。特に、法理の章では、北島丸事件と寺沢鑑定を取り上げることにより、日本に都合の悪い事実もまじめに取り上げて、検討しようとする態度に、好感が持てる。
本書は、出版からだいぶ経ち、すでに、絶版となって久しいが、今なお、学習の価値は失われていない。
本書の中で、寺沢一/著「北方領土の法理と外交」(世界、昭和36年12月号)の紹介がある。こちらも、一読の価値はありそうだ。
また、本書によると、北洋鮭鱒漁業の乱脈ぶりを始めて伝えた大手新聞記事は、78年2月6日の朝日新聞がおそらく最初であろうと記されている。こちらの記事も、一読の必要があるだろう。
追記(2013.1.18):
寺沢一/著「北方領土の法理と外交」(世界、昭和36年12月号)は、次の本に収録されている。
寺沢一/著「国際法と現代」日本評論社(昭和43年10月) P157~P179
朝日新聞の記事 ― 2013年01月17日
朝日新聞の記事『東大、入札前に不正 国先端研究ソフト、業者に仕様相談』には、驚いた。
http://www.asahi.com/edu/articles/TKY201301160668.html
告発者自身が、書かれた行為の中心人物だと思っていた。
大連生まれで都立大出身の告発者は、学術能力はともかく、やり手だったことは確かだ。東大がからむ国の先端ソフトに関係している人は、東大教授以下、事業経営に興味のある者はあまりいない。そうした中、告発者は、事業経営に興味をもつ、数少ない人だった。
東大プロジェクトで儲けたところまでは良いのだけれど、息子を自分の会社に入れて主要ポストにつけたあたりから、会社の人間関係がおかしくなったのだろうか。
山口憲さん、三橋利玄さん、松原聖さん、浜野明千宏さん、お元気ですか。
http://www.asahi.com/edu/articles/TKY201301160668.html
告発者自身が、書かれた行為の中心人物だと思っていた。
大連生まれで都立大出身の告発者は、学術能力はともかく、やり手だったことは確かだ。東大がからむ国の先端ソフトに関係している人は、東大教授以下、事業経営に興味のある者はあまりいない。そうした中、告発者は、事業経営に興味をもつ、数少ない人だった。
東大プロジェクトで儲けたところまでは良いのだけれど、息子を自分の会社に入れて主要ポストにつけたあたりから、会社の人間関係がおかしくなったのだろうか。
山口憲さん、三橋利玄さん、松原聖さん、浜野明千宏さん、お元気ですか。
本の紹介-岩波ブックレット 「領土問題」の論じ方 ― 2013年01月20日

岩波ブックレット 「領土問題」の論じ方
新崎盛暉、岡田充、高原明生、東郷和彦、最上敏樹/著 (2013/1) 岩波書店
領土問題では、とかく自国の主張だけが絶対に正しいとする、偏狭なナショナリズムが主張されがちであるが、外交的解決を目指すならば、お互いに冷静な判断が必要である。
本書は、5人の著者が領土問題に取り組む姿勢(ことを荒立たせない智恵)を論じている。冷静になるためには、このような主張に耳を傾ける必要があるだろう。
もっとも、それぞれ、御説ごもっともなのだけれど、今一つ面白くなかった。
なお、現在、尖閣問題がもっともホットであるためか、本書の記述も尖閣に対するものが多い。
本の紹介-検証 尖閣問題 ― 2013年01月26日

孫 崎享/編「検証 尖閣問題」 (2012/12) 岩波書店
本の前半は、孫崎氏による尖閣問題解説。後半は、孫崎氏を含む数名の専門家との対談。
前半、孫崎氏の尖閣問題解説は、領土問題はどのように解決すべきかとの、外交的視点で尖閣問題について書 いている。尖閣問題の歴史的経緯などは少ない。
領土問題は、決まった土地を両国でどう分けるのかとの問題なので、どちらかがより多く取ると、一方は少な く取ることになる。言い換えれば、ゼロサムゲームである。これに対して、経済は、お互いの不足を補うため、 両者が勝者となる。戦争は、どちらが勝つにしても、両者ともに悲惨な破壊を受けるため、どちらも敗者の可能 性が高い。昨今の尖閣問題の先鋭化は、石原の尖閣買取に始まったものであるが、争いを仕掛けて、中国を敗者 とする目論見が会ったのかもしれない。より大きな敗北を中国に味あわせるためには、多少の損を日本がしても かまわないとの考えもあるだろう。
孫崎氏の主張は、尖閣問題を棚上げして、日中ともに勝者の道を歩むべきとの原則の下、どのような外交をす ればよいのか、このような視点での解説である。
中国が尖閣に攻めてきても、米国が日本のために戦ってくれるから、日本は無傷で必ず勝つだろうなどとの甘 い幻想を、孫崎氏は、きっぱり否定する。日本の利益のためには、日中相互発展以外に方法はないのだ。
なお、本書は、外交的解決策に主眼が置かれているので、尖閣を取り巻く条約・協定の説明は少ない。こちら に対しては、 孫 崎享/著 「日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 」(ちくま新書 905)
後半は、
小寺彰・天児慧・孫崎享・3氏による日中両国の尖閣問題主張の検証に関する対談
石川好・宗文州・孫崎享・3 氏による外交政策に関する対談
羽場久美子・岩下明裕・孫崎享・3氏による国境問題解決策の対談
の3つの 対談が掲載されている。
小寺・天児・孫崎氏の対談では、日本は尖閣棚上げに合意したのか、尖閣は領土問題か、との点で、見解が相違している。しかし、日中共同宣言のときに、尖閣問題を話し合わないことに合意したことは事実なので、「棚上げ」をどのような意味で使うのかという、言語の問題に過ぎないだろう。そもそも「棚上げ」は国際法上の用 語ではないので、政治的に、国内向けに、お互いが都合の良いように解釈する単語であるので、両国が対立する ように、用語の意味を解釈する必要はないのではないか。解釈の違いは、外交関係を重視する孫崎氏と、他の2氏との、立場の違いのように感じる。
他の2件の対談では、孫崎氏は司会進行役。羽場・岩下の両氏は、国境問題解決が専門なので、各地の国境問 題を参考に、尖閣問題に対する解決策を考察している。両氏の見解は、尖閣に限らず、日本の領土問題解決を考 える上で、参考になる点が多い。