本の紹介 歴史認識を問い直す2013年05月22日


東郷和彦/著『歴史認識を問い直す』角川書店(2013.4.10)

  著者は元外務官僚で、条約局長・欧亜局長などの要職を歴任したが、鈴木宗男事件をきっかけに、外務省を去ることになった。本書は、領土問題、歴史問題を外交の視点から説明している。
 領土問題は、ロ・韓・中・台との問題であるが、歴史問題は、韓・中・台の問題。
 領土問題には、歴史的視点と外交的視点があるが、本書の解説には歴史的視点は少ない。歴史問題も歴史的視点ではなくて、靖国問題・従軍慰安婦問題等の外交問題を扱っている。本書は、新書版で、一般の人に簡略に解説した本であるので、簡略すぎると感じる点は多々あるが、外務省の主要ポストに居た人の解説であるので、領土問題などの外交問題を知る上で参考になる。

 P94~P100に、北方4島に対するロシアからの秘密提案の説明がある。秘密提案起案者のクナッゼの説明を一部否定する説明である。事実はどうだったのか、良く分からない。

 P162に「日本は人権否定者か」との項があり、従軍慰安婦問題に対する米国人の見解が示されている。
 日本の一部勢力は、従軍慰安婦問題に対して『軍が強制連行したことの裏づけとなる資料は見つかっていないにもかかわらず、慰安所の設置、管理、慰安婦の移送について軍の関与を認めた河野談話により、日本政府が旧日本軍による慰安婦の強制連行を認めた、という曲解が広まった』との主張がなされる。これに対して、本書では、『慰安婦がだまされて来たという事例があっただけで、完全にアウトである。強制連行と甘言でだまされて気がついたときには逃げられないのと、どこが違うのか(一部省略)』等の米国人の見解を示し、日本の議論と、米国の見解との間に、大きなギャップがあると説明している。
 昨今の橋下大阪市長の従軍慰安婦発言を考える上でも、本書は大いに参考になる。

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