本の紹介 23分間の奇跡2013年07月01日

 
「23分間の奇跡」の青島幸男の翻訳を読みました。
 
「教育とは何か」を考えさせる短編小説。戦争に敗れた国の小学校に新任教師がやってきて、23分間で児童たちの考えを変えてしまう過程を描いている。
 児童の心理を巧みについて、洗脳していく過程を描き、暴力や情報遮断を使わずに、自由選択の中で洗脳が行われることを示したものと捉える人が多いのだろう。でもね、私には、そうは思えないのです。これまで教育されていなかった児童に、適切な手段で教育すれば、容易に児童たちの考え方を変えることができることを示しているのではないかと思えるのです。意味も教えずに呪文のように国旗に忠誠を誓わせる言葉を唱えさせる行為は、まともな教育ではないので、それをやめさせることは簡単。
 しかりつけたり、小遣いをやるなどして教え込むよりも、目に見える形で提示して納得させたほうが、まともな子供には教育効果が高い。この短編小説の示していることは、そういうことだと感じた。作者の意図は違うのかもしれないが。

二風谷2013年07月02日

 
 7月1日毎日新聞に『2013参院選の現場:二風谷ダム土砂堆積なのに新たなダム事業』との記事がある。現政権は、「アベノミクス」と称して、かつての無駄遣い公共事業を推進しようと動いている。新聞記事によれば、北海道平取に新たなダム建設が始まろうとしている、とのことだ。
http://senkyo.mainichi.jp/news/20130701ddm041010143000c.html
 
 ここには、二風谷ダム(写真)が作られたが、大量の土砂でほとんど埋まってしまった。このダムは、下流に工業団地を造り、そこに供給する水を確保するためと称して作られたものだが、工業団地などできることのないまま、ダムが大量の土砂で埋まり、すでに用をなさなくなっている。ここはアイヌの聖地なので、強い反対を押し切って作ったダムだった。
 下流に工業団地などできる見込みのないまま、再びダムを造るようだ。作っても、すぐに土砂で埋まるだろう。そんなことを分かっていながら、税金を浪費し、国土を荒廃させるための計画だ。アベノミクスの本性が現れている。

本 ・・・ 日本の領土があぶない2013年07月04日

 
「日本の領土があぶない」 矢野義昭/著 (2013/6) ぎょうせい
 
 この本を購入した人は、損をした気がするだろう。お勧めしない本だが、読んだので忘れないように書いておく。
 
  領土の一般論・尖閣・竹島・北方領土と、日本で問題になっている領土問題が一応理解できるような内容になっている。引用箇所は、枠で囲ってあり、区別しやすい。ところが、尖閣・竹島・北方領土に対しては、外務省のホームページのコピペ。これに、少しの解説があるだけ。この本を読むならば、外務省ホームページを見ても、たいした違いはない。買うだけ無駄。
 
 もう少し具体的に書く。
 第1章は、国際法における領土概念の説明。この章は、山本草二/著「国際法]を引用して若干の説明をつけている。ところが、著者の説明は我田引水の曲解が多い。
 一例をあげると、P13に以下の記述がある。まず、山本草二の引用として『各国は、その国家領域についての土地制度を原則として自由に決定する権能を持つ』を示して、著者は『尖閣諸島が日本の固有の領土であるとするならば、日本政府はその上にどのような工作物を設置するにも他国の了解は必要としない』と書いている。山本草二は『原則として』と書いているように、『自由に決定する権能を持つ』ことは、絶対的に成り立つわけではないことを含意しているので、尖閣を日本の固有の領土であるとしても、自由に工作物を作れるか否かは、個別の検討が必要だ。
 正しい知識を得るためには、この本の強引解釈を読むのではなく、山本草二/著「国際法」を、真面目に読む必要があるだろう。
 
 第2章は竹島、第3章は尖閣。どちらも、外務省のホームページのコピペに、わずかな解説をしただけ。中韓の主張を掲げ、反論している部分もあるが、中韓の主張と著者が記載しているものは、著者がいい加減に推測したもので、中韓政府が、こんな単純な主張をしていることはない。もう少し、きちんと調べて書いたらよいのに。
 
 第4章は北方領土。1/2強は、竹島・尖閣同様に、外務省のホームページのコピペに、わずかな解説をしただけ。ロシアの主張として掲げ、反論しているとする部分もあるが、著者が推測したもので、検討の価値はない。
 このほか、第4章には「ソ連による占領、併合の無法性の証拠」の項などがある。1991年に出版された戸丸広安氏の著書を引用して、ソ連もウルップ以北を千島だと思っていたかのような記述をしている。確かに、戸丸の本は、水津満少佐の供述に従って、そのように書いている。ソ連崩壊後、旧ソ連の資料が公開されるにおよび、これら記述とは異なる事実が明らかになり、ボリス・スラビンスキーの著書も日本で出版されているのだから、新しい研究成果によって、検討しなおしてほしかった。それにしても、ソ連崩壊から20年以上たっているのに、この間、不勉強だったのだろうか。
 なお、この問題については、以下に詳述しているので、参照ください。(以下の、「3.2.4 水津満の嘘? と日本の説明」のところです。)
 http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/Hoppou3.htm
 また、第4章の「問われるべき米国の責任」の項も、現実政治の視点を欠いた、独りよがりな駄弁だ。 
 
 第5章、第6章は、「教訓と今後の対応」「領域を守るため国・自治体等のなすべきこと」。1章から4章までが、事実の説明で、5,6章が、結論になっている。ところが、第1章から第4章の内容が無いので、5,6章の結論も空疎に感じる。
 色々と、あきれるところがあるが、一例を掲げる。
 竹島問題の解決策として、P191には、以下の記述がある。

「日韓交流については、韓国からの旅行者の受け入れ制限、韓国からの要人訪問の禁止、各種交流事業の停止、在日韓国人にのみ認めている永住権の撤廃といった処置もとりうる。経済制裁、交流禁止は現在、北朝鮮に実施している処置でもあり、韓国に対しても実行可能である。我が国にはこれらのさまざまの非軍事的処置を実行する能力はある。」

 あまりのバカさ加減に呆れ果てる。韓国との貿易でどれだけの日本人が生計を立てているのか、考えたことがあるのだろうか。日韓交流を停止すれば、韓国に痛手ではあるが、同時に日本国内にも計り知れない損害が生じる。その損害をどのようにして補填するのか、その具体策がなければ、制裁など実施不可能だ。

本・・・尖閣一触即発 中国の圧力を跳ね返すことが出来るのか2013年07月05日


『尖閣一触即発 中国の圧力を跳ね返すことが出来るのか』山田吉彦、井上和彦/著 (2013/4/19) 実業之日本社

 全6章のうち、3つの章が対談。山田の解説が1章、井上の解説が2章。二人は、もともと意見が近い人なので、対談ではあっても、一人の解説のようで、読みやすい。本書は、全体として、中国脅威を唱えるものなので、この問題に関心のある人には、ある程度、役に立つのかもしれない。尖閣問題の歴史的経緯等の解説本ではない。

 著者らの中韓に対する認識は甘いのではないだろうか。
 いずれにせよ、中国軍のこうした挑発行為は、武力衝突を招きかねない極めて危険な行為です。その理由は、中国の兵器の信頼性に問題があるからです。中国軍が運用する中国製兵器は、そのほとんどが欧米露などの外国製兵器を模倣したような"コピー兵器"です。海外の兵器や機器を入手し、これを分解調査して完成品を作る"リバースエンジニアリング"による兵器だから信頼性に疑問があるわけです。
 そもそも携帯電話が通話中に突然爆発したりするなど、家電製品ですらまともに作れない国が、こうした科学技術の粋を結集したハイテク兵 器を本当に作れるのかということです。中国版パクリ新幹線の事故や手抜き工事などが、その現状をなにより雄弁に物語っているのではないでしょうか。
 もっとも中国軍の兵器は確実にハイテク化しているので決して侮れないのですが、私が懸念しているのは"誤作動"が起きる危険性です。少なくともその確率は、自前で兵器を製造出来る列国に比べてはるかに高いと思われます。(P18)
 「家電製品ですらまともに作れない国」とは、いったい何を考えてるのか。日本の家電製品に中国製はかなり入り込んでいます。一昔前の中国観に凝り固まった頭で、現在の政治情勢を考えてはいけない。中国は、有人宇宙船を打ち上げていることを忘れてはならない。日本の最先端研究所には、中国人がたくさんいます。そういう事実を知らないのかな。
 韓国は若手の優秀な研究者というのが海外に流出したまま帰らない国なので、最先端技術というのは創り得ないのです。ノーベル賞みたいな賞に達するような研究者というのは韓国では少ない。国内ではそれを適切に処遇する環境になっていないことと、儒教の影響で年配の教授の影響力が強いので、若い研究者は伸びないのです。それはいくつかの研究成果の捏造事件などに表れています。
 韓国の優秀な学者は1回アメリカや日本に出たら帰国したがらない人が多いようです。例え帰ってきてもすぐにまた出ていきます。(P104)
 欧米に比べると、日本のノーベル賞受賞者はものすごく少ないので、韓国に「ノーベル賞みたいな賞に達するような研究者」が少なくても、 驚くに値しない。日本の研究所で研究成果を上げて、韓国に帰る若手技術者は、多いですよ。サムソンなど経営好調なので、優秀な技術者を抱えるようになっています。

 国際法の説明もいい加減だ。
 まず、占有には3つの過程があります。第1段階が不法占拠です。これは、例えば1952年に韓国の当時の李承晩大統領が勝手に引いた李承晩ラインで、1954年に竹島を韓国が武力で占拠したケースです。また、ロシアが北方四島で1945年、第二次世界大戦後すぐに入って占拠したことも同じで、いずれのケースも不法占拠に当たります。武力などで、ある地域を一方的に占拠してしまうのを不法占拠と言います。(P80)
日ソ共同宣言が審議された、昭和31年11月29日の国会で、下田武三政府委員は「従来は、これらの島々に対するソ連の占領は戦時占領でございました」と、当然の説明をしている。戦争中の占領は「不法占拠」にはならないので、著者の説明は誤りだ。もし「戦争は不法行為だから、日本の台湾占領や南樺太の占領などもふくめ、不法占拠だ」との理論ならば、そのように説明すればよい。

 この本は、学問的成果の公表ではなく、一般大衆に働きかけることを目的として書かれたので、厳密正確性を求めるものではないのかもしれない。尖閣問題を冷静に理解しようとする人は、別の著書を読んだほうが良さそうだ。

ホームページ少し更新2013年07月06日

ホームページ少し更新

日本切手にみる日露・日ソ関係史(葉書を中心として)
の中のGHQの占領のページに、シベリア抑留の消息を連絡する葉書を掲載しました。

http://cccpcamera.photo-web.cc/Hi-Ho/Stamp/Japan/GHQ/Ghq.html

失格技術者2013年07月10日

 福島第一原発事故の責任者・吉田元所長が死亡したそうです。
 困難に立ち向かったと称賛する向きもあるようだけれど、原発の構造や安全性をよく知らなかったために、未曽有の災害を引き起こした張本人でした。
 津波対策を取らなかったこと、非常用電源を同一フロアに置き全電源喪失させたこと、ベントが後手に回り2号機の損壊を招いたこと、ベントの構造を把握していなかったため水素爆発を招いたこと、などなど、技術者として最低限把握して置くべき原発の構造を理解していなかったための事故でした。
 吉田所長は、ヤクザに近いような作業員をまとめる力があったので、所長を務めたのだろう。しかし、技術を的確に把握し判断するという、最低限の技術者モラルが欠如していた。

 軍隊と同じで、トップは技術内容を詳しく把握している必要はないのかもしれない。しかし、それならば、周りに、技術者を置かなくてはならなかったのに、そうはしない。
 もともと、東工大ボート部だったようです。東工大体育系サークルの中で、唯一、活動していたところ。まじめに技術を勉強していた者はいない。そして、それが正しいかのような錯覚に陥っていた。こういう人は、官僚にでもなっていればよかったのに。

 日本の原発はどこも同じような状況でしょう。非常時には対応できない。

本―欝陵島・独島(竹島)歴史研究2013年07月11日

 
『欝陵島・独島(竹島)歴史研究』 宋炳基/著、朴炳渉/訳 (2009/12) 新幹社
 
 この本は、竹島韓国領論なのだけど、そのことを論証するというより、竹島が韓国の領土であることを前提として、歴史的経緯を説明している。
 本の内容は、古代の鬱陵島・竹島、安龍福証言、鬱陵島の歴史、近代の竹島領有の話など。竹島問題よりも、鬱陵島の歴史の話が多い。
 
 安龍福証言について、竹島日本領論を唱える人たちは、信用できないとして切り捨て傾向にある。本書では、安龍福証言には、誇張・誤りがあるが、おおむね事実であるものとしている。安が言った内容が事実であるかどうかはともかくとして、安が言ったこと自体は事実と思われるので、安証言を単純に切り捨てることはできない。特に、八道正図に子山島が描かれていること、および、子山島は日本で言う松島(現・竹島)であることは事実だろう。このため、竹島が朝鮮領であることを日本に対して直接主張した、最初の朝鮮人であることは、ほぼ間違いない。
 
 本書の記述内容には賛否両論あるだろうけれど、安龍福証言・鬱陵島史などを知るうえで、重要な参考書だ。また、参考文献が詳細豊富で、研究にも便利。
 
 竹島が古来から朝鮮の領土であるとする証拠はたくさんあるようだ。ただし、現在の国際法における領土に該当するか、あるいは、裁判の証拠として、十分な挙証能力を持つかというと、怪しい。
 一方、古来、竹島が日本の領土でないとする証拠もたくさんある。もちろん、昔のことなので、文献解釈は絶対ではないため、反論の余地はある。

本の紹介―コロポックルとはだれか2013年07月12日


『コロポックルとはだれか 中世の千島列島とアイヌ伝説』瀬川拓郎/著 新典社 (2012/4) (新典社新書58)

 コロポックルとは、北海道に伝わる小人伝説。本書は、コロポックル伝説の色々なバリエーションや、語られている地域を説明し、さらに千島アイヌの歴史を示したのち、コロポックルは千島アイヌのことであろうとの推定をしている。コロポックルを、単なるおとぎ話ではなく、辺境民族史として捉えることにより、歴史のロマンに思いが至る。
 千島アイヌは、カムチャツカ南部に進出していた時期もあり、カムチャツカのイテリメンとの混血もある程度進んでい。そういうことを考えながら読むと、さらに、北方に対するロマンが広がる。

 ロマンとして読むならば十分なのだが、書かれていることが本当に史実と考えてよいのだろうか、著者の推理の範囲を出ないのではないのだろうかとの疑問を感じた。

本の紹介-尖閣諸島 尖閣上陸 日本領有の正当性2013年07月13日

   
『尖閣諸島 尖閣上陸 日本領有の正当性』 牧野清・仲間均/編 尖閣諸島を衛る会(1997)

 尖閣には、広域暴力団・住吉会系の右翼団体が灯台を立て、保守名目で時々上陸している。本書は、地元活動家(市議)と産経新聞記者が、海保の要請を無視して、尖閣に上陸した時の様子が書かれている。また、その後、非弁活動で有罪が確定する国会議員と共に上陸したときの様子にも触れられている。前者はある程度詳しいが、後者はあまり詳しくない。

 このほか、尖閣が日本の領土であるとの説明もなされているが、この部分は、政府の説明を超えるものではなく、政府説明のほうがむしろ分かりやすい。このため、この部分を読む意義はあまりないだろう。

防潮壁の浜岡原発2013年07月15日

中部電力浜岡原子力発電所は東海・東南海沖地震が起こると、津波被害が見込まれるため、菅直人が停止させたところ。
現在、原発再稼動に向けて、急ピッチで防潮壁工事が進められている。
  
 
公道から防潮壁が見えるところは少ない。
 
  
 
しかし、砂浜に入ると、よく見える。
民家のブロック塀のような雰囲気だ。
 
 
  
もっと近づくと、こんな感じ。
  
 
中部電力の施設は立ち入り禁止だけれど。。。
 
  
海岸は立ち入り禁止がないので、潮の状況では、発電所にかなり近づける。これも、防潮壁工事関連なのだろうか。
 
   
沖合いには、冷却水取入れ口がある。 
 
 
そばにはPR館
 
 
 ここの展望台から、発電所と防潮壁が良く見える。昨年までは、写真撮影可だったけれど、今は撮影禁止になっている。政府の指示らしい。
 

 
一旦作った防潮壁も高さ不足が判明し、追加工事がなされている。写真はPR館の説明パネル。
 
 
PR館の模型によると、地下深くまで安全に作られているのだとか。
 
 
もし、浜岡で原発が再稼動しても、想定される津波による被害は起こらないだろう。だからといって重大事故が起こらないかどうかはわからない。想定外の事態は、いくらでも起こりうるのだから。

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