多くの人に読んで欲しい本2013年07月28日


憲法は誰のもの?――自民党改憲案の検証 (岩波ブックレット) 伊藤真/著 (2013/7)

自民党憲法草案の問題点を指摘した解説書。自民党にだまされないためにも、多くの人に読んで欲しい。

 私が、学生のときに、一般教養で履修した法学概論の最初の講義が憲法論だった。そこで、憲法と一般法の違いとして、一般法が国家が国民に命じるものであるのに対して、憲法は国民が国家を規制する法であると習った。

 本書は、立憲主義として、憲法は国家を規制する法であることを説明し、その上で、自民党の憲法草案は、国家の規制ではなくて、国民の規制を強化するものに変質されていると指摘している。
 現憲法では擁護義務を、天皇、国務大臣、国会議員、裁判官、その他の公務員に課している。しかし、自民党憲法草案では、国民に憲法擁護義務を課し、天皇には擁護義務をなくし、その代わりに、天皇を国家元首であるとしている。現憲法が、国民と国家の契約に基づいて、国家に対して義務を課すものであるのに対して、自民党憲法草案では、天皇が国民に与えるものに変えられている。

 この点以外にも、恐ろしい改変がなされている。

 「日本国憲法第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 」

   「自民党憲法草案第十三条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。」

 一見すると似たようなものだが、日本国憲法では「公共の福祉に反しない限り」となっているところが、自民党憲法草案では「公益及び公の秩序に反しない限り」と変えられている。
 福島原発事故のときに、政府は「避難の必要はない」との見解を示していたが、実際には、将来の放射能被害を考えたら、出来れば退避したほうがよい地域もあった。私もこのBlogでそのようなことを書いたことがある。
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2011/03/18/5748247
 このような記述は、政府方針に反しており、場合によっては、政府の決めた公益や公の秩序に反する内容であることは分かっていた。しかし、「公共の福祉」に合致することであるとの確信によって記載したものである。自民党憲法草案のように憲法が変えられてしまっては、原発事故があったとしても、安全を呼びかける言説が圧殺される恐れがある。

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