本の紹介-北方領土・竹島・尖閣、これが解決策 ― 2013年09月08日

北方領土・竹島・尖閣、これが解決策 岩下明裕/著 (朝日新書 2013/7)
本のタイトル通り、日本の領土問題解決策の提案。
著者は、ロシア関係が専門だが、最近は、境界問題の研究者として有名。ロシアと中国では、長年の懸案であったアムール川の中島の領有権問題を折半する形で解決した。歴史的には中国領だったが、近現代の歴史の中でロシア領となったところなので、現状からすると、ロシアの大きな譲歩だった。著者はこの時の解決を元に、2005年には、北方領土解決策の提案を著わしている。
本書は、北方領土のほかに、竹島・尖閣についても、解決策を提示しているもの。
北方領土については、2島プラスアルファを提案している。以前は、歯舞・色丹の2島だったようだが、本書では、歯舞・国後の2島も視野に入れているようだ。しかし、現状では、どちらの提案も、日本が受け入れず、歯舞・国後の2島ではロシアも受け入れないだろう。
著者は、地元では領土問題を解決してほしいとの要望が多いとしている。確かにその通りなのだろうけれど、一方で、領土問題をエサに、税金を懐にする勢力が存在することも事実で、彼らにとっては、領土問題を解決させないことが課題なので、このような勢力をなんとかする必要があるが、本書では、この点については、まったく触れられていない。すでに、無視しうる程度に影響力を持たないのだろうか。
著者の竹島問題解決方法は、歴史問題と領土問題を切り離し、海洋資源利用の問題とすべきとの主張だ。日本の一部勢力には、歴史問題を絡めて、日本の過去を正当化しようとの主張も散見されるが、このような立場と決別することなしに、領土問題の解決はないだろうから、著者の主張には、一面では賛同できる。しかし、それならば、領土の領有は現状維持、すなわち竹島は韓国領ということになってしまうのではないだろうか。この点が明らかに示されていないので、著者の竹島解決崎が良いのか悪いのかどうもよく分からない。
尖閣についても、著者は竹島同様の主張だ。現在、尖閣は日本が実効支配しているので、歴史問題と領土問題を切り離し、海洋資源利用の問題とすることが、日本の領有権主張に、適している。日本は現状維持、すなわち、領土問題にならないように、努力すべきなのに、昨今の日本の政治勢力は逆のことをしている。
領土問題の解決案について、必ずしも同意できるわけではないが、自分の考えを反省するためにも、一読の価値はある本だと思う。
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