本の紹介-琉球王国2014年01月02日


琉球王国 東アジアのコーナーストーン 赤嶺守/著(2004/4/3) 講談社選書メチエ

 グスクの時代から明治の琉球併合まで、琉球王国の歴史を時代をおって書かれた記述で、琉球の歴史を学習するために向いている。著者の専門のためか、琉球国内史は多くなく、琉球と周辺国との関係史、特に、明・清との関係史の記述が多い。

 尖閣の領有権問題に関連して、尖閣の歴史を知ることは重要である。尖閣は、もともと中国・琉球の航路の標識として使われ、中国によって命名され、中国の文書に記載された島である。歴史学者で京都大学教授だった井上清はこの事実を指摘したが、これに対して、国士舘大学助教授の奥原敏雄は、中国から琉球に来た船よりも、琉球から中国にわたった船のほうが多いことを指摘したため、あたかも琉球のほうが尖閣をよく知っていたかのような誤った風説が、日本国内で流布している。
 琉球から中国への航海に使用された船舶は、当初、明国より琉球に下賜されたもので、航海は久米村(現・那覇市久米)のビン人(ビンは門構えに虫と書く文字で、中国・福建省の人をビン人と言う)が中心となっていた。久米のビン人は、ごく初期を除いて琉球生まれであったが、明治になるまで、彼等は、琉球王国において中国人とみなされていた。

 尖閣問題を考えるにあたって、中国・日本との単純な視点だけではなくて、琉球・中国交流史の視点が必要である。本書は、この目的のために、好適な教科書になるだろう。

靖国神社正式参拝2014年01月04日

 
新年に際して、靖国神社を正式参拝しました。
拝殿前にて、浄財10円を賽銭箱に投入し、二礼二拍手一礼しました。10円は遠縁のシャレです。

ちょっと骨のある本2014年01月10日

 
左:新琉球国の歴史 梅木哲人/著 法政大学出版局 (2013/4)
右:近代日本と小笠原諸島 石原俊/著 平凡社 (2007/09)
 
 
どちらも、骨のある本なので、娯楽的に読むものではない。
 
新琉球国の歴史
 古琉球から明治までの琉球国の通史。琉球の対外関係に主眼が置かれているようであるが、琉球国内の歴史記述も詳しい。本は、一般読者を対象としているようで、特に、予備知識無しに読むことが出来る。琉球史をまじめに学びたい人には読書の価値はある。琉球史の教科書として適当。
 
 
近代日本と小笠原諸島
 著者の学位論文に加筆修正したもののようで、教科書ではなくて研究書。
 小笠原に最初に住み着いたのは、日本人ではなかった。小笠原が日本に領有された後、日本に帰化することになった。このような歴史を綿密に考察している。

本の紹介-沖縄県謎解き散歩2014年01月11日

 
沖縄県謎解き散歩 (新人物往来社文庫) 下川裕治、仲村清司/編著 新人物往来社 (2012/2/7)
 
沖縄の歴史、民俗、自然、など、幅広く取り上げ、各トピックに対し、2~5ページ程度の簡単な解説を加えている。沖縄の魅力を知りたい人にはおすすめ。また、沖縄の歴史等をある程度学んだ後に、知識の再確認として気楽に読むのも良いでしょう。

本の紹介-琉球王国(岩波新書)2014年01月12日

 
琉球王国(岩波新書) 高良倉吉/著 (1993/1)
 
 琉球の歴史解説書。本書は、序章、第1~第5章、終章に分かれている。このうち第2章は琉球王国史、第3章は琉球王国の対外史。これら2つの章を読むと、琉球の歴史の概要が理解できる。
 第1章は琉球研究の意義のようなことが書いてあり、また第4、5章は琉球史研究の論考方法のようなことが書かれていて、歴史研究者でない私にとって、興味が持てなかった。
 琉球史に対する興味は、人それぞれだろうけれど、私には『赤嶺守/著 講談社選書メチエ』のほうが、有益だった。

群馬県高崎市の古墳2014年01月13日

群馬県高崎市のいくつかの古墳を見学した。
  
群馬八幡地区
   
剣崎長瀞西古墳(けんざきながどろにしこふん)
 高崎市八幡町の高崎市立西部小学校の隣にある。古墳の所在地は、高崎市剣崎。径約30mの円墳もしくは帆立貝式古墳。
 この付近に、剣崎長瀞西遺跡があったが、発掘調査後、今は更地や浄水場になってしまった。剣崎長瀞西遺跡には、積石塚墳墓や竪穴住居跡があって、そこから、金製の垂飾付耳飾や日本最古級の轡を装着した馬の骨、朝鮮式の土器など、渡来人のものと思われる遺物が発見された。古墳時代の朝鮮との関係を知る上で重要な遺跡。
  
  
観音塚古墳(上野国八幡観音塚古墳)
 高崎市観音塚考古資料館(高崎市八幡町800番地144)の北側にある、全長約100mの前方後円墳。前方部4段、後円部3段の構造。ここから、鏡・飾り金具・銅碗・刀剣・馬具・壷など、約300点の副葬品が出土した。出土品は、高崎市観音塚考古資料館に展示されている。
 石室内部も公開されている。石室を見学するときは、資料館で懐中電灯を貸してくれる。
 
 
  
平塚古墳
 高崎市観音塚考古資料館の南西にある前方後円墳。整備されておらず、竹や雑木に覆われているが、頂上には墓地があって、そこに続く道がつけられている。
  
  
八幡二子塚古墳(やわたふたごづかこふん)
 高崎市観音塚考古資料館の南東にある、全長66メートル、2段築造の前方後円墳。ここに、資料館の第二駐車場がある。
  
  
高崎市観音塚考古資料館
 高崎市観音塚考古資料館(高崎市八幡町800番地144)は、観音塚古墳出土品を中心にした展示館。
  
 資料館の庭には、八幡遺跡20号墳が復元されている。
  
  
綿貫地区
 高崎市綿貫町の群馬の森公園の中に、群馬県立博物館がある。
   
綿貫観音山古墳
 群馬の森公園の北には原子力研究所があったが、現在は「高崎量子応用研究所」と改名されているらしい。
 綿貫観音山古墳は、さらにこの北側にある、全長97mの前方後円墳。
  
 石室内部には入れないが、外から覗くことが出来る。
 
 
  
綿貫不動山古墳
 綿貫観音山古墳の南、「高崎量子応用研究所」に隣接して、国道354号線沿いにある。古墳は前方後円墳のようだ。後円部の頂上には不動尊があり、お堂の裏に船形石棺が置かれている。
 
 
  
倉賀野地区
 綿貫地区の西側、JR八高線を渡ったところ。
  
浅間山古墳 
 場所は、おひさま保育園(高崎市倉賀野町194)の南側。
 全長170mを超える大きな前方後円墳。前方部は2段、後円部は3段。前方部や後円部の一部斜面は畑になっており、葺石の一部が剥がされて、まとめて放置されている場所があるようだ。

 
    
大鶴巻古墳
 浅間山古墳の南東600m程のところにある、全長123mの前方後円墳。
 
 
  
小鶴巻古墳
 大鶴巻古墳のアパートをはさんだ北側に隣接する。全長90m弱の前方後円墳。前方部は墓地になっている。
  
  
  
上毛野はにわの里公園(保渡田古墳群)
 高崎市井出町・保渡田町にまたがる、広さ12.9ヘクタールの「上毛野はにわの里公園」には、大型前方後円墳が復元され、さらに、出土品の展示館がある。ここには、八幡塚古墳・二子山古墳・薬師塚古墳の3つの古墳がある。
  
八幡塚古墳
 全長96mの前方後円墳。発掘調査に基づき造られた当時の姿に近い形に復元されている。全面、葺石で、周囲には、多数の埴輪が置かれている。石棺も見学できる。
 
 
  
二子山古墳
 全長108mの前方後円墳で、草に覆われた形に復元されている。朝鮮半島製を含む多数の遺物が発見された。写真は、後円部頂上から撮った中島。これらは、墳墓の周りに掘られた堀の中に4つ作られており、被葬者に対する祭礼が行われた場所と推定されている。
  
  
かみつけの里博物館  
 周辺の出土品展示のほか、榛名山東南麓で出土された古墳時代の人物・動物埴輪や当時を再現した模型がある。

本の紹介―シベリヤ物語2014年01月16日

最後の鎮魂 シベリヤ物語  松下忠/著 (1996) 光人社

 シベリア抑留を扱った物語。シベリア抑留・抑留生活などについて、いくつもの項目ごとに、数ページづつ書かれている。本のタイトルは物語であるが、かなり史実には近い内容と思う。シベリア抑留関連本は、単に、つらかった、苦しかったと、主観的な感情をつづったものが多いが、本書はそうではなくて、いろいろなことを淡々と描いており、好感が持てる。文章も読みやすい。
 ただし、研究書・歴史書ではなくて、あくまでも物語なので、内容の真実性については、疑問のある部分も多い。シベリア抑留の雰囲気を理解するうえでは参考になる本だ。

本の紹介 〈日本國〉から来た日本人2014年01月19日


〈日本國〉から来た日本人 西牟田靖/著 (2013/12) 春秋社

 戦前、日本の植民地だった地域に住んでいた人たちは、敗戦に伴って日本に引き揚げた。このような人たちが、苦労して引き揚げたことを回想した本は数多く出版されている。1990年から2010年ごろにかけて平和祈念事業特別基金が編纂した「海外引揚者が語り継ぐ労苦」「軍人軍属短期在職者が語り継ぐ労苦」「シベリア強制抑留者が語り継ぐ労苦」は、多くの関係者の体験談として、内容豊富である。しかし、戦前世代が高齢化して、最近は、新たな体験談も出版される機会は少なくなってきた。

   本書は、朝鮮半島南部の鎮海に居住していた人たち、およそ20人に対し、戦前の鎮海での日本人の生活の様子や、戦争が深まっていく中での生活の変化、敗戦と引き揚げなどを、聞き取り取材して、それらをまとめたもの。
 本の内容には、著者の考えも含まれるが、中心は、体験者の話を、特定の立場にとらわれることなく、読みやすくまとめている。特定地域の一部の人の証言なので、歴史の全体像をつかめるものではないが、個人の体験談をまとめたものなので、外地や引き揚げについて、雰囲気を知る上では有益な本だ。
 平和祈念事業特別基金が編纂した本は、内容が豊富だが、体験者の手記なので読みにくい箇所が多いが、本書は、フリージャーナリストの記述で、読みやすく書かれている。

 本書の著者は、取材内容に、なるべく手を加えず、そのままの内容を書いているようだ。体験後、すでに50年以上経過しているので、戦後になってから加わった知識のほうが、遥かに多いので、実際に体験したこと以外に、その後、頭の中で作った、あるいは本を読んで事実と思ったことも、実体験のように語られることも多い。このため、本人の実体験と、戦後の政治宣伝との区別がつきにくい。本来は、取材者が、証言内容を精査して、きちんとした裏づけを取るべきであるが、本書の記述を読むと、このような努力が十分に払われているのか疑問だ。

 P223にソ連軍票を日本銀行や朝鮮銀行の円に交換したとの記述がある。ソ連軍票は日本人には交換できなかったとの話をどこかで読んだこともあるので、本書の記述が事実ならば、興味の持てるところだが、当時子供だった者のおぼろげな記憶ならば、信憑性は、心もとない。
 ソ連支配地域関連の記述には、信憑性に疑問がある点が多々あるが、P217の「ソ連兵の乱暴狼藉は10月ごろを境に少なくなっていった。日本人から奪うものが何もなくなったからだ。」との記述はいただけない。乱暴狼藉が10月ごろから少なくなったことと、奪うものがなくなったことが事実だとしても、奪うものがなくなったことが主たる理由であるかどうかは検証が必要なことだ。ソ連軍が最初にやってきたころは、国軍だったが、その後、KGBが現れると、ソ連兵による不法行為は激減するので、KGBの影響を考える必要があることが多いのだが、本書では、この点には触れられていない。

 ところで、この本のタイトルは、かぎ括弧と旧字があって、図書館の端末で検索しにい。

閩人2014年01月22日

閩  この字はビンと読む。
中国では福建省あたりのことを「閩」と言い、この地域出身者を「閩人」という。
 
「閩」の文字が、正しく表示されるかをみるための、意味のない記事です。

本の紹介-日ロ現場史2014年01月25日


北方領土周辺漁業・北方領土返還交渉の歴史を知る上で好適な本

日ロ現場史 北方領土―終わらない戦後 本田良一/著 北海道新聞社(2013/12)

本の前半は、北方領土周辺海域での漁業の話。戦後、この地域の漁業を時代を追って説明していて、分かりやすい。日 本漁民の密猟と、加担している水産庁・北海道の関係が描かれている。密漁には、暴力団も深く関与しているが、この話 は多くない。内容的には、2004年に出版された「密漁の海で-正史に残らない北方領土』と重複する点も多いが、北方領 土問題と、地元の関与を考える上で、読む価値はあるだろう。

本の後半は、終戦末期の占領以降の返還交渉の歴史。時間を追って、かなり詳しく書かれている。外交交渉は秘密のものが多いので、関係者の怪しげな情報や憶測が事実のように伝わっていることもあり、本書に書かれていることも、必ずしも真実であるとは思えないが、返還交渉の歴史を知る上で便利。

本書は600ページを越えるものだが、章、項に区切られていて、文章も読みやすいので、分量の割には、楽に読める。

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