本の紹介-波よ鎮まれ (尖閣への視座) ― 2014年05月11日

『波よ鎮まれ (尖閣への視座)』 渡辺豪, 嘉数よしの,又吉嘉例/著, 沖縄タイムス「尖閣」取材班/編 旬報社 (2014/4)
本の内容は、八重山の人と、台湾の人に対する尖閣問題のインタビュー。
戦前から米国占領時代にわたって、尖閣は、台湾漁民と、沖縄漁民が出漁する漁場だった。沖縄返還に伴い、日本政府は、尖閣周辺海域から台湾漁民を締め出し、その範囲が拡大していった。そうした中、日台中3国間で、ナショナリズムを背景とした、領有権争いが起こった。
このような偏狭なナショナリズムは、地元民には、迷惑極まりない場合もあり、本書では、地元で生活する立場に立って、偏狭なナショナリズムを批判し、これを克服することを求める、地元民の見解をまとめている。ただし、本書に収録された、地元民の声が、平均的なものであるかどうかは、疑問だ。領土問題があると、地元には、国の金が落ちるので、その利権に預かる人と、排除される人がある。利権派は、尖閣での対立を望んでいるはずなので、本書に記載された証言は、利権に関係ない人たちの声を、集めたものなのだろう。
かつて、沖縄が米軍統治下にあった時代、本土復帰運動を進めていた勢力があった。現在、八重山には、ナショナリズムを鼓舞して、尖閣領有を声高に叫ぶ人も多い。米軍統治下で本土復帰運動に熱心だった勢力と、ナショナリズムを掲げて尖閣運動をしている人たちとは、相容れないようだ。日本の領土問題との切り口で見ると、同じような問題なのに、運動の目的には、大きな違いがあるのだろう。
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