2015年1月1日2015年01月01日

 
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            2015年元旦

本の紹介-領土問題は「世界史」で解ける2015年01月07日

 
領土問題は「世界史」で解ける 八幡和郎/著 宝島社(2014.11)
 
 特に読むことを推奨しない。歴史の事実は事実だとしても、実際の「歴史」は事実すべてを網羅するのではなくて、分かっている事実の中から取捨選択して、歴史認識に従って解釈されたものである。このため、取捨選択・解釈によって、いろいろな歴史認識が生まれる。
 このようにして生まれた歴史認識の一つを取って、これで、領土問題が解けるなどと考えるほと、現実政治は甘くは無い。本書の表題にある「解ける」とは、どのような意味であるのか定かではないが、領土問題を解決できるという意味ならば、完全に誤りだ。実際、本書には、現実的に領土問題を解決する処方箋は示されていない。
 もっとも、自分勝手な妄想に浸り、だれにも聞こえないように、「日本は素晴らしいんだ」と叫ぶためならば、本書の手法でも足りるかもしれない。
 
 著者の歴史解説は???だ。北方領土関連では、「蝦夷の松前氏が蝦夷以北の支配を任されアイヌを支配下におく(P71)」と書かれているが、慶長9年徳川家康黒印状では、「夷之儀者 何方へ往行候共 可致夷次第事 (夷人はどこへ行っても、夷人の自由である)」とあるように、支配を任されたわけでもなく、アイヌを支配下に置いたとも言えないのが実情だった。
 
 また、P104には、「外交的な正義ということでは、日ソ中立条約を侵犯して宣戦布告したのはソ連なのですから、それに報酬を与えることは何としても理不尽ですし、永遠に許すべきではありません」と書かれている。しかし、1945年7月31日、トルーマンのスターリン宛書簡では、ソ連が日本との中立条約を破棄して参戦することは国際法上合法であるとの公式見解が示され(萩原徹/著「大戦の解剖」1950 読売新聞社 P261-P267)ているので、大日本帝国軍隊に都合の良い一方的な主張だけでは、国際理解は難しいだろうし、こんな見解で、領土問題が解決するなど、とても無理なことだ。

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