本の紹介-国際法学者がよむ尖閣問題 紛争解決への展望を拓く2015年03月01日


松井芳郎/著『国際法学者がよむ尖閣問題 紛争解決への展望を拓く』(2014/12) 日本評論社
 
 
 国際法の立場での尖閣問題の解説なのだけど、歴史的立場への考察もある。
 著者は、日本の領土であることに好意的であるが、現在日本政府の取っている「尖閣には領土争いはない」との主張には否定的。
 
 1895年、日清戦争のさなか、日本は尖閣を秘密裏に領有した。その後、下関条約で台湾が日本に割譲されたため、尖閣が日本領となることになった。1945年日本の敗戦に伴って、台湾は中国に返還されることとなったが、尖閣は、沖縄とともに、米国の支配となり、日本は施政権を失った。日本に施政権が回復するのは、1972年の沖縄返還以降である。中国・台湾が、尖閣領有権を主張するのは、沖縄返還直前のことである。
 著者は、この点を捕らえて、日本の尖閣に対する領域主権の継続的かつ平和的な表示が否定できないとするが、それでよいのだろうか。日清戦争中は、平和的とはいえない。戦後、米国占領統治下において「日本による領域主権の表示」と言えるのだろうか。

DVDの紹介-ジョバンニの島2015年03月02日

 
DVD『ジョバンニの島』 (ポニーキャニオン)  
 
2014年2月、同名のタイトルの物語が出版された。
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2014/03/25/7253169
 
このDVDは、本書をアニメ化したもの。本とアニメで若干異なっているところはあるが、おおむね、同じ内容。
 
主人公は色丹島の少年で、この少年を通して、終戦前後、ソ連兵進駐、ソ連少女との交流など、この時期の色丹島の様子が分かる。
 
1時間20分程度です。

両面粘着テープをはがすのに苦戦しました2015年03月03日

両面粘着テープをはがすのに苦戦しました。
 昨年3月、ニトムズ網戸用花粉フィルターをアルミサッシの網戸に、付属の両面テープではりました。
 今年、新しくするため、剥がそうとしたのですが、両面テープがはがれない。そこで、「エーモン1691両面テープはがし剤」を使って、プラスチックスクレーパーを使って、少しづつ、悪戦苦闘2時間余りかけて、両面テープの紙をはがしました。日光があまり当らないところは、剥がしやすいのですが、日光が当たっていたところは、かたく付着し、おまけに紙が切れやすく、剥がすのが、ものすごく大変でした。
 紙を剥離した後には、まだ、糊がべったり残っている。ニトムズのホームページを見ると、「Qテープの上手なはがし方と、のり残りの取り方を教えてください」の中に、「テープはがしカッターと灯油やベンジン等の溶剤を使い、そぎ落とします」とあるので、ベンジンをつけてスクレーパーで落とそうとしたのだけれど、紙の剥離以上に大変な作業です。ところが、アセトンを脱脂綿にしみこませで拭いてみたら、さっと落ちる。こんなことなら、初めからアセトンを試すのだった。もっとも、アセトンはすぐに乾くので、紙が残っている場合は、あまり有効ではないかもしれないと思います。

本の紹介-アイヌ民族否定論に抗する2015年03月04日

 
岡和田晃、マーク・ウィンチェスター編『アイヌ民族否定論に抗する』河出書房新社 (2015/1)
 
 
 ギャグマンガ家・小林よしのりが、アイヌ民族はいないなどと、おかしなことを言っていた。本書は、歴史学者・文学者・作家・精神科医師など、いろいろな分野の人により、小林よしのりのような無知を正すことを目的として執筆されている。
 有力政治家が、日本は単一民族であるような誤った発言をすることが時々あるので、アイヌ民族否定論のような誤った考えを持っている日本人は多いのかもしれない。
 
 本書は、多方面の専門家による執筆なので、内容が多方面に渡り、やや散漫な感じがする面もあるが、民族とは何か、アイヌの歴史は何か、アイヌ否定論の病根は何かなど、アイヌ問題の入門として読みやすい。
 
 榎森進氏の「歴史からみたアイヌ民族―小林よしのり氏の「アイヌ民族」否定論を批判する」は、アイヌ研究の第一人者による小林よしのり氏批判なのだけれど、小林氏の説が、あまりにも貧弱なので、せっかくの榎森氏の説が、あまり輝いていないように感じる。

本の紹介-”国境・国土・領土”教育の論点争点2015年03月11日


草原和博 他/編・著『”国境・国土・領土”教育の論点争点』明治図書 (2014.8)
 
 現在話題の日本の国境問題に矮小化することなく、領土や国境についてどのように教えるのか、社会科教師が考えてゆく上での情報・視点を提供するもの。小学校・中学校の社会化授業を対象にしている。本書は、教育者のために書かれたものであるが、日本の領土問題をどのように考えるべきであるかという根本的なところを視野の中心に据えているので、教育者以外にとっても、たいへん参考になる内容になっている。
 
 本書は「戦前の日本における領土教育はどのようなものだったか」「諸外国の領土教育はどのようになされているか」「日本の領土教育はどのようになされているか」「領土教育のヒント」にたいして、教育学者20数名による論文をまとめたもの。
 
 戦前の日本の領土には、内地のほかに外地や関東州があって、同じ領土と言っても、それぞれ意味合いが違っていたので、これらを教えることに主眼が置かれていた。戦後になると外地や関東州を失い、内地のみとなったため、戦前・戦後の領土教育は目的が違っていた(P37-P44)。
 諸外国を見ると、欧米では、政府の定めたスタンダードを教えることよりも、教師独自の努力が多いため、統一的に領土教育を説明することは一般に困難だが、本書では、代表的な例を取り上げて、特徴を説明している。アメリカは領土拡大の歴史がそのまま国土の範囲なので、領土の歴史に主眼が置かれる(P73)。イギリスでは、UKとイングランドの違いなど、領土そのものの定義が人により異なるので、多様な価値観を教えることになる(P82-P83)。
  
 現在の、日本の領土教育では、日本の領土が歴史的に変動するものであることにはあまり触れずに、いきなり「日本の固有の領土」の単語を持ち出し、子供たちに理解しやすい内容というよりも、日本政府の正当性を教えることに主眼が置かれる内容になっている(P47)。
 
 本書の後半では、優れた授業作りを目的として、いくつかの実践の紹介や、授業作りの参考になる考察が提供されている。
 P132~P139に掲載されている後藤賢次郎氏の論文は、日本の領土(国境)教育の実践例であるが、①教科書に従って日本の国境問題を紹介するもの ②生徒に材料を提供して日本の立場の正当性を認識させるもの ③いろいろな立場を紹介して判断を留保するもの の3通りの学習が紹介されている。年少者への教育は、正解を教えるものなのだけれど、領土問題のように、正解がないものは、どう扱えばいいのだろう。日本のように、国土教育を国境教育に矮小化するのではなくて、もっと、幅広い知見が持てるような教育が良いのではないかと感じた。
 
 P173~P180に掲載されている藤瀬泰司氏の論文は、授業づくりのヒントとして、西牟田靖/著「ニッポンの国境」を紹介して、「旅」を使った領土教育を提唱している。領土係争地への渡航方法を知るだけでも、現在の問題が、ある程度客観的に理解できるだろう。日本の国境問題を教える場合、日本政府の主張を教え込むのではなくて、客観的な現実を理解させた方が、教育効果が上がるのではないかと思う。
  
ところで、本書の主題とは直接関係ないかもしれないが、台湾の領有権に関して、興味の持てる記述があった。1903年(明治36年)の第一期国定歴史教科書には次のように書かれており、台湾征伐の時(明治7年)には、台湾は清国の領土だったと教えていたそうだ(P38)。
 台湾征伐のことおこれり。これよりさき、わが民の、漂流して台湾にいたれるもの、蕃人のために害せられたることありき。この時、台湾は清国の領地なりしに、清国は、蕃人を化外の民なりとして、少しもこれを顧みざりしかば、佐賀の乱平らぎて後、政府は、西郷従道を将として、台湾の蕃人を伐たしめたり。しかるに、清国はにはかに、異議をとなへしかば、ついに、談判の末、償金を出さしめて、兵を収めたり。

本の紹介-史料徹底検証 尖閣領有2015年03月16日


村田忠禧/著『史料徹底検証 尖閣領有』花伝社 (2015/1)

 日本政府は、尖閣はどの国の領土でもない無主の地であることを慎重に調査した上で領有したと説明している。本書は、公開公文書を丹念に調査し、尖閣に対する日本政府の説明を否定している。事実を綿密に調査した上で、結論に至る著者の真摯な態度には好感が持てる。
 本書によると、日本が尖閣は無人島であることを調査したのは、1885年10月の一回だけで、このときの調査結果を受けた日本政府は、清国との係争を懸念して、日本領土への組み入れをしていない。日本が、尖閣領有を決めたのは、日清戦争で日本の勝利が確定的となった1893年のことだった。その間、尖閣を調査した事実はない。
 本書の内容は「明治の琉球処分の経緯」「沖縄県令・西村捨三の沖縄統治」「尖閣領有の経緯」である。また、本の後ろ1/3には、重要な公文書が掲載されているが、手書きの文書が活字化されているため、領土問題の研究や高度な学習に便利。

本の紹介-環りの海 竹島と尖閣国境地域からの問い2015年03月21日

 
琉球新報、山陰中央新報/著『環りの海 竹島と尖閣国境地域からの問い』岩波書店(2015/2) 
 
正直言って、あまり、面白くなかった。
 
 竹島問題・尖閣問題のために、漁業が制約を受けているので、それを漁民を中心に、地元新聞である山陰中央新報・琉球新報が取材したもの。領土問題そのものの解説は少なく、領土問題のために居民がこうむっている迷惑が話題の中心。でも、領土問題がない地域でも、乱獲の問題は珍しくないことや、漁業の衰退は、全国的傾向なので、領土問題と捉えてよいのか疑問だ。
 本書には、漁業問題の他に、オーランド諸島など、世界の領土問題解決事例が記載されているが、状況や歴史的経緯が異なるので、そのまま当てはめることはできないが、領土問題に関心が余りない人が、領土問題を考える上で、参考になるのかもしれない。

本の紹介-知られざる日露国境を歩く2015年03月22日

 
相原秀起/著『知られざる日露国境を歩く』ユーラシアブックレット(2015/2)
 
 かつて、日ロの国境だった樺太の北緯50度線には、国境を示す標石が4個置かれていた。本の前半では、この標石が現在どのようになっているか、あるいは、当時置かれていた場所はどうなっているのかを取材した結果を記載している。
 4つの国境標石のうち、1号はサハリンの資料館にある。2号は根室資料館にあり、4号はサハリン在住個人が所蔵している。3号は行方不明とのことだ。
 後半では、エトロフ島と、占守島の現在の様子。
 
 60ページ余りの薄い本に、樺太・エトロフ島・占守島を記載しているので、それぞれの内容が貧弱に感じる。また、3つのテーマは日ロの国境という点で共通しているが、それ以外に共通点はないので、内容が散漫に感じる。薄い本なのだから、テーマを1つに絞ったほうが良かったと思う。

本の紹介-アホウドリと「帝国」日本の拡大 南洋の島々への進出から侵略へ2015年03月31日

 
平岡昭利/著『アホウドリと「帝国」日本の拡大 南洋の島々への進出から侵略へ』明石書店 (2012/11)
 
 2015年3月に岩波新書で『アホウドリを追った日本人 一攫千金の夢と南洋進出』が出版された。本書は、岩波新書と同様な内容だが、記述が詳しい。重要な点をざっくり理解したい人は、岩波新書を読めば十分だろう。
 
 本書のなかで尖閣について書かれた部分では、尖閣所有者だった古賀辰四郎について、その履歴をめぐって通説に事実誤認があると指摘している。

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