閔妃暗殺事件・・・ホームページ追記しました2015年07月08日

 1895年に起こった閔妃暗殺事件(乙未事変)の概要は以下の通り。
 
 日清戦争で勝利した日本は、朝鮮への内政介入を強めてゆく。これに対抗して、朝鮮はロシアの影響力を利用して日本を排除しようとした。日本公使三浦梧楼らは、親ロシア派の中心と目した王妃(閔妃)殺害を計画し、日本軍守備隊、日本警察官、訓練隊(日本軍将校に指導された朝鮮軍隊)、日本人新聞記者、日本人壮士らを動員し、王妃殺害を実行した。三浦公使対面に国王・大院君(国王の父)が臨席し、親露派閣僚を解任して内閣を親日派でかためた。しかし、王妃殺害は列強に広く知れ渡ることとなり、国際的な非難を浴びたため、日本は三浦公使以下殺人関係者を召喚し裁判にかけたが、全員証拠不十分として無罪放免した。
 王妃を殺害され、自身や息子の生命の危機を感じた国王は、その後、息子を連れてロシア公館に逃れた。その結果、王妃殺害で成立させた親日政権は崩壊して、親ロ政権が誕生した。
 
 この事件は、ノンフィクション小説『角田房子/著 閲妃暗殺(1988)新潮社』で有名になった。しかし、それ以前から百科辞典をはじめ関連する事典類には掲載され、日本史教科書にも取り上げられることが多かったので、ある程度の日本史知識のある者には、小説以前からよく知られたことだった。
 ところが、今から7年ほど前のことだろうか、一部のネット右翼の書き込みで「日本人は殺害に関与していない」等の言説が見られたため、ネットや漫画しか見ることのない人の中には、三浦公使が実行の主犯であるとの定説を理解できない人も多いようだ。
 
 ところで、竹島問題に関連して、以下のページを公開している。
http://cccpcamera.photo-web.cc/Ryoudo/Takeshima/Takeshima.htm
 これは、竹島問題がロシアとまったく無関係と言う訳でもないことを示したものだ。内容は、大学受験用日本史年表の中から、ロシア・韓国に関するものを抜き出し、さらに少々の追記をしたもので、ほとんど全ての項目は学校で習う程度の知識にすぎない。このため、特に解説は必要としないと思っていた。
 
 最近、Mailで、日本公使が閔妃暗殺したというのは正確ではないので、ホームページの内容を、朝鮮王がそう思ったと、修正するようにとの内容の指摘を受けた。歴史上の定説が覆ることは珍しくないので異説を唱えることは問題ないが、それは学会発表等で行うべきことである。定説に反する内容にホームページを書き換えるようにと言われても、応じることはできないのでその旨回答した。
 
 以上で、十分なのだが、閔妃暗殺事件は中学校では習わないことが多いため、ネットや漫画しか見るこがなく読書や辞書調べができない人の中には、正しい理解ができない人が多いかもしれない。それで幾つかの歴史辞書などの記述を掲載した。
  http://cccpcamera.photo-web.cc/Ryoudo/Takeshima/ETC/Binhi.html
 
 また、大学入試にも出題されていることを示した。
  http://cccpcamera.photo-web.cc/Ryoudo/Takeshima/Takeshima.htm#Notice02
 1895年なので「イワク、ゴロウが閔妃暗殺」と覚えると良い。梧楼はどちらも木偏であることに注意。

本の紹介-「科学の目」で日本の戦争を考える2015年07月09日


不破哲三/著『「科学の目」で日本の戦争を考える』 (2015.3) 新日本出版社

 満州事変から太平洋戦争にいたる日本の戦争の特徴を明らかにした本。共産党赤旗祭りの講演を元にしているので、わかりやすい記述になっている。
 最初に、この戦争は侵略戦争であったことを説明し、次に、どのように戦争・敗戦へと突き進んだかを説明している。かつて、著者が国会質問で、真珠湾攻撃はだれの責任で行われたかを政府に問うた時、政府は全国務大臣の輔弼によって行われたと答弁したそうである。当時、統帥は国務と独立していたので、内閣は真珠湾攻撃決定に参加することはなかった。戦後、自民党政権による、戦争認識はいい加減なものであることが良く分かる。

 ところで、本書を読むと、戦争へのめりこんだ経緯として、大本営・天皇の問題であることが分かる。ではなぜ、このような誤りを犯したのかという点については、孫崎享/著「日米開戦の正体」に詳しい。

   本書では、戦争の経緯の説明に続いて、日本軍人戦死者の多くが餓死であったことを明らかにし、それは国民の生命軽視・補給軽視の日本軍にあったこと説明している。
 現在、安倍内閣により、憲法無視の集団自衛法案が審議中である。この法案の危険性を考える上で、過去、日本の犯した誤りの検証は意義のあることだ。本書は、この点で参考になるだろう。特に、孫崎氏の本と合わせて読むと、戦争にのめりこんでいった日本の問題点が、一層、理解しやすい。

 最後に、「靖国史観とアメリカ」のタイトルで、小泉総理靖国参拝の問題点を指摘した著者の論文を掲載しており、安倍内閣の右傾化の危険性を考える上で参考になる。

DVDの紹介-ヨーロッパの解放2015年07月19日


ヨーロッパの解放×ガールズ&パンツァー コラボレーションHDリマスターDVDパック(5枚組)

1970年代に製作されたソビエト映画。以前はビデオやLDがあったが、2000年ごろにはDVDが発売された。このDVDはリマスター版なので、2000年ごろのものに比べて、映像は格段に良くなっている。DVD5枚、8時間弱の大作。
1、クルスク大戦車戦
2、ドニエプル渡河大作戦
3、大包囲撃滅作戦
4、オーデル河大突破作戦
5、ベルリン大攻防戦 

 このDVDはガールズ&パンツァーとのコラボ商品だけど、ガールズ&パンツァーはジャケットの絵柄とおまけのバッチのみ。

本の紹介-尖閣問題の起源 沖縄返還とアメリカの中立政策2015年07月20日


ロバート・D・エルドリッヂ/著、吉田真吾・他/訳『尖閣問題の起源 沖縄返還とアメリカの中立政策』名古屋大学出版会 (2015/4)

 アメリカは沖縄返還とともに尖閣の施政権を日本に返還した。現在、尖閣が日本の施政下にあることを認めているが、領有権に対して、中立の立場を崩していない。本書は、このようなアメリカの態度は、沖縄返還以前から続いていることを明らかにし、その経緯を詳細に追っている。
 と、まあ、本書を一言で紹介すると、こうなるのだけれど、領土の領有権は関係当事国間で決めるものなので、アメリカの態度は特に奇異なものではなく、本書においても、領有権に対してアメリカが中立的態度をとったいきさつが明らかにされているわけではなくて、初めからそうであったかのような記述になっており、当たり前のことを、資料を基に繰り返し説明しているようで、余り興味が持てなかった。

 著者は日本人ではないので、日本の領土問題や日本史に対する知識が貧弱のようだ。P221あたりに、台湾で発行された地図に、尖閣と台湾の間に国境線が引かれている地図があることを理由に、奥原敏雄説を参考に、次のように書いている。
地図などが公式の刊行物として出版されていたことは、それらが中国政府と国府の承認を受けていたことを意味しており、したがってその内容は、両政府の立場を反映していた。国府と中国は、その立場を撤回することはできないにもかかわらず、一九七〇年以降、尖閣諸島への日本の領有権の主張に挑戦しようとしたということになる。
 日本でも、文部省検定済み教科書に国後・択捉がソ連領となっている地図は珍しくないし、日本政府による国会答弁でも、国後択捉はサンフランシスコ条約で放棄した千島に含まれると説明していたことがある。だからと言って、このことを根拠に「国後択捉へのロシアの領有権の主張に挑戦しようとしたということになる」などとは言わない。

本書は5章と序章・結論からなる。

   第1章は、尖閣諸島の歴史的経緯が示される。内容は、奥原敏雄説の踏襲であって、特に目新しいものはない。奥原論文は、その後、日本政府の尖閣主張の元にもなっているので、時代とともに内容が訂正された、日本政府の主張を読むほうが良いだろう。このため、奥原論文を踏襲した本書の記述を読むべき理由は感じられない。本書を読むよりは、日本政府のパンフレットを読んだほうがよいだろう。

 第2章は米国統治下の沖縄・尖閣の話で、台湾住民が尖閣に上陸したときの沖縄統治軍の対応等が示される。この部分は、他書においても書かれているものが多いので、訳本ではない本を読んだほうが読みやすい。

 第3章は石油資源関連の話題。1970年前後、ECAFEが尖閣周辺海域で大量の原油埋蔵の可能性を伝えると、日本政府や台湾政府が周辺海底の原油掘削剣を主張するようになり、このことが契機となって、日本では尖閣の主張が脚光を浴びるようになる。当時、高橋庄五郎が幾つかの論文で指摘した内容と比較すると、特に目新しい重要なものはない。それに、1994年調査により、尖閣周辺海域の原油埋蔵量は、たいした量でないことが知られているので、この章の記述が、現在の尖閣問題を理解する上で重要であるとは思えない。

 第4章・第5章が本書の中心で、他章に比べてページ数も多い。米国公文書や関係者の後述記録などをもとに、沖縄返還協定批准承認ごろまでの時期に、米・日・台であった駆け引きなどを明らかにしている。米国の態度は、施政権を日本に返還すること、領有権には中立なこと、日台の対立を望まないことで一貫している。
 書かれている内容は、米・日・台ともに、よく知られたことなので、詳細な記述ではあるが、冗長な感じがする。現在の尖閣問題を理解する上で、はたしてどれほど必要な知識なのか疑問に感じた。

本の紹介-イザベラ・バード 朝鮮紀行2015年07月22日

 
イザベラ・バード 朝鮮紀行 時岡敬子/訳 講談社(1998.8)
イザベラ・バード 朝鮮奥地紀行1、2 朴尚特/訳 平凡社・東洋文庫(1994.1)
 
 イザベラ・バードはイギリス人女性旅行家、紀行作家。19世紀末に日本や朝鮮を旅行し旅行記を執筆した。本書は3度にわたる朝鮮旅行記で、最後の朝鮮旅行直前に、日本公使らが王妃を暗殺する事件が起きた。著者は、王妃が殺される数ヶ月前に、王宮に招待され、王妃・国王・皇太子と会談している。
 
 原書は、1898年にロンドンで出版された。  
  Mrs. Bishop(Isabella L. Bird) Korea & Her Neighbours: a narrative of travel, with an account of the recent vicissitudes and present position of the country
 
 第21章が朝鮮王一家との会見の様子で、23章が朝鮮王妃暗殺事件の経緯。著者は、事件直後に朝鮮に渡り、イギリス公使館でヒリア総領事と会談している。著者が暗殺現場を直接目撃したわけではないが、事件を目撃した米国人ダイ将軍やロシア人サバチンの公式記録を元に、事件の様子を記述し、さらに見聞に基づき、事件直後の朝鮮の様子を記録した。

本の紹介-向かいあう日本と韓国・朝鮮の歴史 近現代編2015年07月23日


『向かいあう日本と韓国・朝鮮の歴史 近現代編』歴史教育者協議会・全国歴史教師の会/編 大月書店(2015/1)

 タイトルを見ると、日本・韓国の近代史教科書のような雰囲気であるが、内容はだいぶ異なる。
 本の主要テーマは、日本と関係した韓国・朝鮮の近現代史であって、日本の歴史は少ない。また、通史ではなく、テーマを取り上げた記述になっているので、時代が前後することも多く、あらかじめ近代韓国史の多少の知識がないと、理解しにくいところもある。記述も、特定の人物を取り上げて、その人を通して、時代を理解させるところがあり、日本の歴史教育に慣れた者にとって、多少の違和感を感じる。
 日韓の歴史学者・教育者による記述であるため、北朝鮮の視点はない。また、日本・韓国の視点に偏っていることはないが、韓国の歴史が記述の中心であるため、韓国寄りに感じる人も多いだろう。
 いずれにしても、日本に関連した韓国・朝鮮史や、韓国・朝鮮史を通して日本史を理解しようとするためには、有益な本だ。

領土対立を煽る人たち2015年07月24日


 尖閣問題で日中の対立が続いている。東シナ海の日中境界線も定まっていない。
 中国は、日本が主張する東シナ海の境界線の中国側でガス田探索を行っているが、この場所は、中国以外に経済水域を主張する国はないので、国際紛争になることはない。それにもかかわらず、日本政府は、中国のガス田探索に抗議している。海底のガス田が中間線をまたいで日本側にも広がっている可能性があり、日本の資源が吸い取られる恐れがあるとの理由だが、日本は、東シナ海のガス田掘削調査を行ったことがないので、日本の主張は単なる憶測にすぎない。苦情を言う前に、きちんと掘削調査して、事実を確認すればよいのに。

 日本で尖閣問題が騒がれるようになったのは1960年代の終わりのことだった。1967年、台湾の人が尖閣に上陸して住みついているのではないかとの報道があったが、このとき日本政府は目立った対応をしなかった。1969年、ECAFE(国連アジア極東経済委員会)により、1000億バレルが見込める大規模海底油田の可能性が指摘されると、沖縄返還気運とも相まって、日本では、尖閣の主張が急激に高まった。
 このころ、日本は「エコノミックアニマル」として軽蔑されていた。エコノミックアニマルとは、文字通り訳せば「経済動物」となるが、アニマルは単に生物学上の動物と言うよりも、「ケダモノ」「蓄類」の意味に近い。「金儲けしか考えていないケダモノ」そんな軽蔑表現だった。エコノミックアニマルに尖閣の重要性を意識させるためには、「石油がいっぱいあるぞ」「儲かるぞ、カネ・カネ・カネ」と宣伝することが一番効果的だったのだろう。

 その後、海底地層探査技術が向上したため、1994年になって、経済産業省の石油審議会開発部会がまとめたところによると、日中中間線の日本側東シナ海の原油埋蔵量は約30億バレルと1/30に下方修正された。この約30億バレルという数値も、当時の地層探査技術を使った推定値なので、技術の向上により、さらに下方修正される可能性がある。実際に原油があるかどうかは掘削して調査してみないと分からないが、日本は、掘削調査をしていない。いずれにしても、採算に見あう原油・天然ガスが実際に埋蔵されているかどうか疑わしいし、もしそうだとしても、大した量ではないだろう。

 さて、最初に掲載している本を読んで驚いた。著者は、海洋政策が専門の東海大学教授で、ときどきテレビ出演して、中国の脅威を煽る発言をしている。

山田吉彦/著『日本は世界第4位の海洋大国』 講談社α新書 (2010.10)

 尖閣諸島の領有権問題は、国連アジア極東経済委員会が東シナ海の海底調査を行い、一九六九年に、尖閣諸島周辺海域に埋蔵量豊富な油田がある可能性が高いことを発表したのが発端である。その直後、日本は調査を行い、同海域の海底油田の推定埋蔵量は一〇〇〇億バレルを超えることが判明。一〇〇〇億バレルとは、世界第二の石油埋蔵国イラクの、全油田埋蔵量の合計にほぼ等しく、七〇〇兆円に相当する。
 また、中国は一九八〇年代に独自の調査を行い、尖閣諸島の海底には七〇〇億から一六〇〇億バレルの石油が埋蔵されている可能性が高いとしている。中国にとってエネルギー資源は垂誕の的であり、島の領有権を虎視眈々と狙っているのだ。
 では、尖閣諸島周辺海域に油田があるとして、それをどのように開発すればいいのか。(P159,P160)
 この本の出版は2010年なので、1994年調査から16年も経過している。専門家が、16年前の調査を知らずにいるなんて、恥ずかしくないのだろうか。1994年調査結果は、2006年の国会審議で紹介されているので、東シナ海の石油埋蔵に多少関心がある人ならば、誰でも知っていたことだ。
 と言いたいところだが、山田吉彦氏がそんなおバカさんであるはずはなく、おそらく知っていながら、ガメツイ日本人の心情に訴えて、中国脅威論を煽りたてたのではなかろうかと思う。2010年9月に、尖閣周辺で中国漁船と海保との衝突があったとき、日本の国内世論は中国脅威論で沸き立った。この時以降、国内世論は中国の軍事脅威論に変わったので、中国脅威論を煽りたてる人たちの多くも、そのように変節してきている。

 かつて、尖閣周辺には巨大油田があるとの宣伝を真に受けた人は多いが、今では、大間違いだったことが分かっている。現在、中国の軍事的脅威の宣伝があり、これを真に受けている人が多いだろう。本当なのか、大間違いなのか。日本の軍備増強によって儲ける人たちがいることは確かだ。

アプト式動輪2015年07月26日

 
暑い日が続きます。昨年親が死んで相続した実家が空き家になっています。こんなに暑い日が続くと、ダニやムカデがウヨウヨ。そういうわけで、実家の各部屋にバルサンを炊きました。2時間ほど家にいられないので、近所の「碓氷峠鉄道文化むら」を見学。
http://www.usuitouge.com/bunkamura/
 
写真は、ED42のアプト式車輪。

本の紹介-戦争と平和(歴博フォーラム)2015年07月27日

 
『戦争と平和―総合展示第6室“現代”の世界〈1〉 (歴博フォーラム)』 国立歴史民俗博物館・安田常雄/編集 東京堂出版 (2010/3)
 
 千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館(略称・歴博)第6室は「現代」がテーマで、主に日中戦争から近年までを扱っている。歴博は国立の歴史博物館であるという性格上、現代展示は、国家による現代日本史の評価という色彩を帯びるので、海外に日本の歴史観を発する重要性を持っている。
 この時代の歴史展示としては、歴博の他に、昭和館・平和祈念館・しょうけい館・遊就館などがあり、それぞれ、力点の置かれ方が異なる。歴博現代展示は、政治経済史ではなく、民衆史に力点が置かれている。昭和館も民衆に力点が置かれているが、昭和館の力点は日本で暮らす日本人の戦争中の苦労話に力点が置かれているのに対して、歴博は軍人・民間人の国内外での状況や他の諸国に与えた影響など幅広い視点による展示となっている。
 
 本書は、歴博現代展示が始まる前に、展示の視点を解説した講演会記録。
 歴博現代展示の着眼点の説明がなされているので、事前に本書を読んでおくと、展示を見る目がいっそう深まる。また、日本の現代史を考える上で、どのような着眼点を持てばよいのかを知る上で有益。

本の紹介―日清・日露戦争をどう見るか2015年07月28日


『日清・日露戦争をどう見るか―近代日本と朝鮮半島・中国 (NHK出版新書 444)』原朗/著 (2014/10)

 日清戦争・日露戦争から第一次世界大戦の日本戦争史の説明。
 日清戦争は朝鮮の権益をめぐる日清の対立が原因だった。日露戦争は朝鮮半島および満州の権益に対する日露の対立が原因だった。両戦争に勝利した日本は、朝鮮の植民地化を完成した。
 本書では、日清日露戦争が朝鮮支配の問題であったことを明確化して、その後、中国へ進出していった過程を明らかにする。  日清・日露から中国進出へつながる戦争を政治の面から理解するために適切な教科書になっている。

 高等学校の日本史教育では、個々の事象を覚えることに汲々として、歴史の流れを見失う生徒が多い。しかし、上位大学の入試問題の日本近代史では、歴史の流れを記述させる出題も多いため、上位大学を日本史で受験する生徒は、本書のような視点は、学校や塾で習っていることも多い。本書のカバーには「近代日本の戦争を朝鮮半島・中国との関係を中心に大胆に読み直す」と書かれているが、それほど大げさなことではないように感じる。

 いずれにしても、日本の戦争史を政治の面から理解して、日本史の流れを考え直すためには最適な参考書だ。なお、戦争の歴史書と言うと、軍人の武勇伝を並べ連ねた本もあるが、本書にはそのような視点はない。

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