本の紹介-「慰安婦」問題を/から考える ― 2015年12月18日

『「慰安婦」問題を/から考える』歴史学研究会・日本史研究会/編 岩波書店(2014/12)
タイトルの斜線は「慰安婦問題を考える」ことと「慰安婦問題から考える」ことの両方の視点で慰安婦問題を研究しているという意味。
本書は、歴史学研究会と日本史研究会の合同シンポジウムを元に作成された。本書の著者は、歴史学者19人。統一的に書かれた本ではなくて、各章ごとに異なったテーマで書かれているので、本としてのまとまりはあまりない。また、学会のシンポジウムという性格上、内容は高度であり、初学者には理解しにくいだろう。
朝鮮女性の従軍慰安婦問題に関係した本であるが、朝鮮人慰安婦を直接対象とした章は少ない。本書の内容は、従軍慰安婦の背景や、従軍慰安婦問題の展開など、従軍慰安婦に関連した話題を幅広く取り上げている。
本書の内容は大きく第1編と第2編に分かれる。
第1編では朝鮮人慰安婦問題を取り上げているが、朝鮮人慰安婦がどれだけ悲惨だったかとか、それに、日本軍がどのように責任があるかなどと言う話はあまりなく、朝鮮の植民地支配や当時の朝鮮における売春の実態や、日本人慰安婦の実態や、当時の日本人男性の意識として、外地での強姦をどのように理解していたか、どのような理由で積極的に強姦に走ったかなどを解明することにより、慰安婦の背景を解明している。さらに、西側国での軍慰安婦の実態に触れることにより、より広い視野で、従軍慰安婦問題をとらえようとしているのは、やはり、学会のシンポジウムのためだろう。
第2編では慰安婦問題が現在日本社会の中で、特に教育の場でどのような位置に置かれているかを中心に解説。