本の紹介 - シベリア出兵 ― 2016年12月17日

麻田雅文/著『シベリア出兵 近代日本の忘れられた七年戦争』(2016/9)中公新書
シベリア出兵は日本の侵略戦争の失敗だったので、戦前においては、あまり多く語られることはなかった。戦後になってからは、正しく歴史を利愛する上で必須項目とも思えるのだけれど、日本史教科書などでは、あまり行数を割いていない。
本書は、新書版で出版されたシベリア出兵の通史。尼港事件や北樺太占領についても触れられている。
新書のため、事前の歴史知識がなくても、容易に読めるように書かれている。
本の紹介―外交交渉回想 ― 2016年12月18日

枝村純郎/著『外交交渉回想 沖縄返還・福田ドクトリン・北方領土』(2016/10)吉川弘文館
もと、駐ロシア日本大使による外交交渉の回想録。著者は、ソ連崩壊時期に駐ソ連・駐ロシア大使を務めた。本書の内容は、著者が携わった外交交渉全般であるが、著者の経歴のため、ソ連・ロシア関連が多い。北方領土問題にも、かなりのページ数が割かれていて、北方領土交渉の経緯を知るうえで重要な書籍となっている。しかし、著者は、学者ではなく、日本側交渉当事者であるので、外交文書などは、外務省に都合の良い解釈なるので、その点は一定の注意が必要だ。
本の紹介―北方領土の謎 ― 2016年12月19日

名越健郎/著『北方領土の謎』 (2016/11)海竜社
ソ連崩壊の時期、北方領土の現状を解説した本がいくつか出版された。この時、北方領土住民は、国家崩壊の混乱で苦境に陥っていたが、その後のロシアの経済発展に伴って、生活インフラは格段に整備された。現在、北方領土の取材映像が、テレビで時々放映されるので、本の解説を読む必要性は少なくなっているためか、北方領土の現状の解説本は少ない。
本書は、北方領土の現状についての解説。近年では、北方領土の映像を見る機会は多いけれど、映像だけではわからない状況もあるので、本書を読むことは無駄ではない。
本書は拓殖大学教授の名越健郎氏による執筆。北方領土問題の経緯の解説や国際法の解釈などについては、この点を考慮する必要はあるだろう。
本の紹介―ロシア極東 秘境を歩く ― 2016年12月27日

相原秀起/著『ロシア極東 秘境を歩く』 (2016/11)北海道大学出版会
内容は「占守島」「サハリン」「シベリア」の3つに分けられ、すべて著者の取材記。
現状を取材したのではなくて、各地に残る日本人の足跡をたどっている。
「占守島」の部は、太平洋戦争末期の占守島の戦いに思いをはせ、関連遺跡などを取材している。
「サハリン」の部は、戦前に日ソ境界線に置かれていた国境標石の行方を調査しているが、この部分は著者による別書『知られざる日露国境を歩く ―樺太・択捉・北千島に刻まれた歴史 (ユーラシア・ブックレット200) 』と重複する部分が多い。
「シベリア」の部は、大黒屋光太夫の足跡を追い、冷凍マンモスの見つかる地に足を踏み入れている。この部分は、内容が散漫に感じた。