本の紹介―日本会議の研究2017年02月14日

 
菅野完/著『日本会議の研究』 2016/4 扶桑社 (扶桑社新書)
 
 日本会議の解説本として有名。この本のおかげで、日本会議の存在を知った人も多いだろう。日本会議を理解するために、第一に読むべき本であることは間違いない。
 川口市立図書館には蔵書が4冊あるが、現在予約33件待ち。この調子だと、予約しても手元に届くのは数か月後になるだろう。大変よく読まれている本だ。
 
 本の内容は日本会議が現政権に深く入り込んでいること、日本会議の運動と成果、日本会議の出自 等をわかりやすく説明している。日本会議について多岐に渡った解説であり、あまり知られていないことも多く、詳細かつ専門的内容ではあるが、事前の知識がない人でも十分に読みやすい記述になっている。本書が出版されると、その後、日本会議を取り扱った書籍がいくつも出版されるようになった。このような他書と比べても、本書は読みやすい方だ。
  
 著者は、膨大な公開文書を調べることにより、日本会議に新興宗教「生長の家」関係者が深く関与している事実を明らかにしている。日本会議を担っている人は、生長の家関係者だけではなく、神社本庁や念法真教のような右翼的新興宗教も関係が深いが、本書では、生長の家関係者の関与がクローズアップされている。
 
 本書の記述が名誉棄損しているとの理由で、生長の家・千葉県教区教化部長だった人等から出版差し止めの仮処分申請が出され、東京地裁は記述の1か所が名誉を棄損しているとして出版差し止めの仮処分を出した。このため、現在売られている本は、この部分2行が墨塗り状態となっている。
 墨塗り部分の記述の内容はおおよそこんな感じ。
 ①安藤巌は生長の家関連雑誌の売り上げ向上の努力をした。②このためサラ金に借金をしてまでして購入する者もあった。③当時サラ金は社会問題になっていた。④自殺者も現れるほどだった。⑤しかし、安藤巌はこのようなことに馬耳東風だった。
 「自殺者も現れるほど」というのは当時のサラ金一般のことを言っているのだろうが、安藤巌がサラ金自殺に追い込んだとも読めるとの主張もある。著者が読みやすい記述を心掛けたため記述が不正確になって、そこを狙われたと思える。

本の紹介―日本会議と神社本庁2017年02月19日

 
『週刊金曜日』成澤宗男/編著 『日本会議と神社本庁』金曜日 (2016/6)
 
 菅野完/著『日本会議の研究』では、日本会議と生長の家・元活動家の関係がクローズアップされている。日本会議の活動を理解するうえで、成長の家活動家の関係は重要であるが、新興宗教の一つの力で、日本会議が政権に影響力をもつにいたったわけではない。日本会議の中心には神社本庁があって、神道政治連盟と自民党議員との結びつきが強い。
 
 本書は、日本会議の中心勢力として、神社本庁に焦点を当てている。
 
 現在、日本会議が政権に深く影響力を持つに至った理由を理解するためには、菅野完/著『日本会議の研究』と本書の両方を読むとよいだろう。

本の紹介―「愛国」の技法2017年02月21日

 
早川タダノリ/著 『「愛国」の技法』(2014.1)青弓社
 
 戦争中のポスターやチラシなどを左側ページに紹介し、右側ページにその解説を書いている。こういうスタイルなので読みやすい。
 戦争中のポスターのいくつかは、佐倉の国立歴史民俗博物館にも展示されており、見たことのある人も多いだろう。本書では、かなりの枚数を紹介しているので、ざっと見ただけでも面白い。
 本書の解説は、戦争中の日本の愛国心を揶揄するもの。解説を読まず、写真を見るだけでも、著者の意図は明快だ。もっとも、普通に思考力のある人ならば、国立歴史民俗博物館に展示されているポスターを見ただけでも、同様の感想を持つだろう。

児童ポルノって何だろう2017年02月22日

  
 法律によると、児童の性行為等を扱ったもののほかに、次のものが児童ポルノとされている。
「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」
 普通の大人ならば、児童の裸体を見ても「性欲を興奮・刺激」されることはないだろうから、どういう意味なのか分からない。この条文は、変態・ロリコン人間向けの話なのだろうか。
  
 川口市立図書館で閲覧できる本の中に、下記の写真があった。(早川タダノリ/著 『「愛国」の技法』青弓社 )。これは、昭和17年頃撮影された、新潟県・市之瀬国民学校の授業風景で初出は当時のアサヒグラフのようだ。
  
 上の写真では、「はずかしそうに乳房を露出している少女の写真」と見る人もあるだろう。この写真は右側が少しカットされているが、(アサヒグラフわれらが100年 1968.9.)の写真には、他にも乳房を露出した女子児童が写っている。以下に、右下部分を掲載する。雑誌の見開き2ページにわたっているので、ページの継ぎ目のスキャンがうまくできなかった。後ろの女児は堂々と乳房をさらけ出していて、恥じらいは感じられない。
  
  
 アサヒグラフにはもう一枚同じような写真がある。この写真は(宮崎鏡/著『少女愛』作品社)にも掲載されていて、この本も川口市立図書館でだれでも閲覧できる。この写真も市之瀬国民学校の授業(勤労奉仕)風景のようだ。
  
  
 下の写真は、写真週報・第180号(昭和16年8月6日)に掲載されていたもので、当時の国民学校の乾布摩擦の様子。写真週報は国立公文書館・アジア歴史資料センターで公開されているので、だれでも閲覧可能。
https://www.jacar.go.jp/shuhou/shiryo.html
  
  
 公立図書館や国立公文書館でだれでも閲覧できる写真が違法な児童ポルノのはずはない。小6女児が乳房をさらけ出している写真は児童ポルノには該当しないのだろうか。それとも、古い写真だと児童ポルノではないのだろうか。
  
 児童ポルノの問題はさておき、戦時中はおかしな教育が行われていたものだ。どういう理由で少女に乳房を露出させるのだろう。そういうことが好きな校長が「天子様のからだです、大事にします鍛えます」と言わせて女児を裸にしていたのだろうか。


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