本の紹介―昭和天皇の戦争2017年05月07日

     
山田朗/著『昭和天皇の戦争 「昭和天皇実録」に残されたこと・消されたこと』 岩波書店 (2017/1)
   
 宮内庁から昭和天皇実録が公表されて、昭和史を知るうえで重要な文献となった。
 本書は、日中戦争から敗戦までの期間に、昭和天皇実録にどのようなことが書かれていて、どのようなことが書かれていないのかを解説する本。著者は歴史学者。かなり専門的な内容なので、近代日本史の予備知識がないと読みにくいだろう。それから、昭和天皇実録の第7巻から第9巻を読む前に、本書を読んでおくと、昭和天皇実録の理解がしやすいと感じた。
   
 戦前、天皇は帝国陸海軍の統帥権者だった。明治天皇の時代には、日清・日露の戦争に勝利して、海外侵略・帝国拡大の足場を作った。昭和天皇は明治天皇を尊敬していたので、海外侵略の最大の推進者であったことは想像に難くない。
 ところが、敗戦により、国論が変えられると、昭和天皇が平和主義者で戦争に反対だったかのような言説が現れる。帝国陸海軍の統帥権者が反戦であるなど、そんな間抜けな国があろうはずはない。
   
 本書では、日中戦争から敗戦までの期間に、昭和天皇が戦争にどのような態度をとってきたかを、種々の資料により詳しく説明し、さらに、昭和天皇実録では、天皇が戦争に積極的であった記述が極力抑えられていることを明らかにしている。

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