本の紹介 日常化された境界ー戦後の沖縄の記憶を旅する ― 2017年07月21日

屋良朝博、野添文彬、山本章子/著『日常化された境界ー戦後の沖縄の記憶を旅する』 (ブックレット・ボーダーズ4) 北海道大学出版会 (2017/7)
一味違う、沖縄観光ガイドブック。
本書は沖縄の現状を旅行者が見学するためのガイドになっている。ただし、ビーチ遊び、グルメ、戦跡、首里城など、多くの観光ガイドに書かれていることは、本書にはない。沖縄米軍基地とその周辺、及び基地のために沖縄がどのようにゆがめられているのかを、普天間から北部演習場まで、南から北へと向かってガイドする。
沖縄には在日米軍基地の74%が集中し、沖縄本島の18%を占める。沖縄米軍基地を普通の旅行者が見学しようとした時、どこから見るとよいのか、いくつかの主要な基地について書かれているので、沖縄米軍基地の現状を見たいと思っている人には、便利なガイドブックだろう。また、沖縄米軍基地の状況を知りたい人にも役に立つ。ただし、薄い本なので基地問題の詳しい内容はない。
1953年、浅間・妙義地区に米軍訓練基地を作る計画があったが、住民闘争により基地を拒絶した。群馬県安中市松井田町西野牧字恩賀にこれを記念する碑が建てられている。群馬・長野県住民運動の勝利が沖縄県名護市のキャンプシュワブにつながってゆく。一つの勝利が負担の押し付け合いになっているようで悲しい。