本の紹介―堀田善衞/著『時間』2018年08月10日

 
堀田善衞/著『時間』岩波現代文庫 2015/11
  
 久しぶりに、日本の小説を読んだ。何年ぶりだろう。この本は1955年に新潮社から刊行されたものの再版。堀田の著作は『インドで考えたこと(岩波新書)』が有名だけど、『時間』はそれほどでもない。
 本書は日本軍による南京大虐殺がテーマ。南京在住中国知識人を主人公として、彼が見分し考えたことを日記風に記載している。南京大虐殺の時の南京の状況をテーマにしているが、日本軍が民間人を何人殺したとかそういう話はなくて、主人公の心情描写が主体になっている。
  
こんな人が登場する。
主人公:民間人。虐殺されるが奇跡的に助かる。自宅を接収した大尉の下僕となるもスパイをしている。
妻:妊娠中死亡(殺害)
5歳の息子:浮浪児となって残飯をあさっているときに警備日本兵により殺害
姪:日本軍に強姦され性病感染。性病の苦痛を緩和するために使用した麻薬で中毒患者となる。
叔父:日本軍に取り入って麻薬密売に手を染めている
   
堀田の小説でも、日本の中国侵略と麻薬は切り離せないようだ。

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