本の紹介ー日本軍兵士2018年11月06日


吉田裕/著『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)』中央公論新社 (2017/12)

 歴史系の新書としては、かなり読まれている本です。青少年から中年世代の多くの人に読んでもらいたい。

 本の内容は、太平洋戦争の日本軍の戦死者状況を描いたもので、戦死者の多くは戦闘による死亡ではなくて、栄養失調・餓死や、装備・医療の不備による病死だったこと、このような原因は、精神論重視の作戦に問題があったことが書かれている。
 ある程度年配の人ならば、自分の親や教師世代の人から戦争体験を聞き、本書に書かれた内容の多くは既知の事実なので、本書の記述には物足りなさを感じるかもしれない。ただし、本書は歴史学者の記述なので、資料に基づき精密に描いているので、この点は参考になる。
 現在、青少年から中年世代の人は学生時代の歴史教師も戦後世代だったはずで、直接戦争体験を聞く機会がなかった人も多いだろう。このような人が、本書を読んで戦争の実態について正しい知見を持つことは、今後の日本社会が誤った方向に動かされることを阻止するためにも有用だ。
 すでに還暦を過ぎた著者が本書を執筆した目的は、若い世代の人たちに戦争の実態を知ってほしかったことなのだろう。

本書に、輸送船の速度と兵員のカロリーについて数字が載せられていた。
 日本の貨物船の性能も問題だった。アジア・太平洋戦争中、日本は急増する船舶需要に対応するため、多数の戦時標準船を建造した。設計・建造の簡易化、工期の短縮、資材や労働力の節約などによって、建造数を増加させることを最優先の課題とした低性能の船舶である。
 戦時標準船にはいくつかのタイプがあったが、貨物船の航海速度を見てみると、第一次戦時標準船では、速度が最大のタイプが12.3ノット、最低のタイプが10ノット、第二次戦時標準船では最大が10ノット、最低が7ノット、第三次戦時標準船では、最大が14ノット、最低が7.5ノット、速度を最優先した第四次戦時標準船でも18ノットである(『戦時造船史』)。(P45)

 陸軍省医務局が、敗戦後にGHQ(連合国最高司令官総司令部)に提出した報告書、「日本武装軍の健康に関する報告」によれぽ、内地部隊の兵士に対する一日の給養は、合計三四〇〇カロリー〔現在の表示法ではキロカロリー〕を標準としていた。しかし、国内の食糧事情の悪化のため、一九四四年九月以降、合計二九〇〇カロリーに減じられた。
 その結果、兵士の体重は、「戦前平均」の六〇キロからアジア・太平洋戦争の末期には五四キロにまで低下している。こうしたなかで、陸軍は農耕や家畜の飼育など、食糧に関する自給自活方針を強化していった(前掲、「アジア・太平洋戦争の戦場と兵士」)。(P98)

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