本の紹介ー新宗教の解読2018年11月10日


    井上順孝/著『新宗教の解読 (ちくまライブラリー)』筑摩書房 (1992/11)

 本書は1992年に出版された新興宗教の解説本。幕末以降、新興宗教が起こり信者を集めた社会的な状況を説明することに主眼が置かれている。さまざまな新興宗教を取り上げており、記述にまとまり感がなく読みにくい。新興宗教の中には、悪質な事件を起こし消滅したものもあり、新興宗教は淫祀邪教視されることも多い。本書では淫祀邪教視に対して批判的で、新興宗教を肯定的にとらえている。
 当時、若者を囲い込み、家族との間でトラブルが起こっていたオウム真理教について、以下のように家族の責任であるかのように記述している。オウム被害者や家族から見たら、全く受け入れがたい暴論だろう。
日本社会における家族の実質的崩壊現象を一つの震源にしている可能性はないだろうか。新宗教が若者の間で流行っていると言われるとき、たんに若者が宗教に関心を寄せているということだけを意味しているのではなさそうである。親がまったく関わり知らぬところで宗教に目を向けてしまった若者、という意味が混入していることがある。子供が親を捨て家を捨てて宗教に走った、という類の騒動がもちあがるとき、そこには、子供の精神生活にほとんど影響を持ち得なかった親たちの姿が見え隠れする。一人立ちする年齢になった子供に対し、「宗教に騙されるな」と叫んでみても、効果があるかどうか。(P206)
 若者がオウムに取り込まれるきっかけには、家族関係の問題を含めて、社会のいろいろな問題があったことは間違いないだろうが、そのようなところに付け込んで、信者に犯罪を強いたり、殺害したり、覚せい剤中毒にしたのがオウム真理教だった。新興宗教には、このような恐ろしいものがあることを、しっかりと認識しておく必要がある。
 本書出版後、1995年オウム真理教、1999年明覚寺、2000年法の華、2011年神世界と教祖が逮捕されている。
 新興宗教の悪質性が改めて認識されるようになった今、新興宗教に好意的な本書の記述をそのまま受け入れることはできないが、新興宗教の表の面のみを見たときの話として、あるいは、新興宗教教団側の宣伝の一部として読んでみるならば、本書の記述にも、一定の意味はあるかもしれない。


 本書の著者は新興宗教に詳しい宗教社会学者だが、専門外とはいっても、日本の既存仏教の教義の概要程度は知っているはずだと思うのだが、そう考えると、ちょっと信じがたい記述がある。
 新宗教批判が、宗教否定の上に展開されているのなら、むしろ話はスッキリする。死後の世界などというものはない。霊能力とか霊界などあり得ない。・・・こうした立場に立つなら、新宗教の教えや活動を徹底的に批判したとしても、筋道は通っている。ただし、こうした批判になると、新宗教だけがターゲットということはなくなる。浄土系の宗派が説く浄土の存在は、この科学時代にどんな説得力をもつのか。(P218)
 浄土真宗では極楽浄土に成仏できると説くが、霊魂が実在するとか別世界に浄土があるとか、そのようなオカルトチックな教えではない。浄土真宗の説く極楽浄土とは生きている現在の心のありようの話であって、現代科学と何ら矛盾するものではない
 真如苑のような新興宗教では、霊能力があるかのように欺瞞して、先祖の霊が苦しんでいて供養料を払わないと祟ると脅している。このように、浄土真宗の霊に対する態度と新興宗教の霊に対する態度とは全く異なる。

 真如苑をはじめとした新興宗教では「先祖の霊が祟る」と信者を脅すことが多いが、既存仏教の多くは、これに批判的であることが、以下の本に示されている。

安斎育郎/著『霊はあるか 科学の視点から』 講談社 (2002/9)

 ところが、本書では「霊の崇り」などが既存の知見であるように書いたうえで、新興宗教を擁護している。詐欺師の擁護はやめてほしい。
 霊の崇り、成仏していない先祖、カルマを背負った存在。そうした想念は、人の心を暗く重くする。人生に望みがもてない、社会を肯定的に見られない、漠然たる不安感。これも希望のない毎日を導く。たとえ一部の人に対してであれ、こうしたものを解決していく機能を、新宗教はもった。それが一定程度有効であったからこそ、このシステムは隆盛の一途をたどった。そう考えるのが妥当であろう。(P264)
 「霊の崇り」「成仏していない先祖」など有りもしない嘘をついて金をだまし取るのが新興宗教や真言宗醍醐派本覚寺の手口であり、このような詐欺に対処するのは、警察権力や教育の責任範囲である。警察の対応が後手に回っているからと言って、その責任が既存宗教にあるわけではない。

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