本の紹介―地図でみるアイヌの歴史 ― 2019年01月17日

平山裕人/著『地図でみるアイヌの歴史 縄文から現代までの1万年史』 明石書店 (2018/12)
大型本で紙質もよく高級な感じがする本。値段も税込みで4000円を超える。
本の内容は、旧石器時代から現在までのアイヌの歴史で、本には図や表が豊富で読みやすい。
アイヌ史と言うと擦文文化がアイヌ文化に変容して以降のことを言う場合もあるが、本書の対象は旧石器時代から現在まで。ただし、当然であるが、擦文以前はページ数が少なく、信長以降明治までは詳しく、更に明治以降はかなり詳しい。
興味の持てる記述がある。
エトロフ島に最初に侵攻した「文明」人は?
日本は、エトロフ島・クナシリ島・シコタン島・ハボマイ諸島は、日本以外が領有したことのない「我が国固有の領土」と宣言する。しかし、エトロフ島に最初に侵攻した「文明」人はロシアだった。っまり、日本の政府見解にも批判の目を向けなければ、後世の批判に耐え得る歴史は著述できないということだ。ただし、ロシァの侵攻はとんでもない恐怖「政治」だったことも付け加えなければならない。現在、学校教育では、政府見解のみを教えることが強制されているが、なんとも了見が狭い。目本の政府見解に都合の悪いことも教えられ、より高い歴史認識を持つことこそが、「学び」の深さになる。(P.123)
もはや日本とロシアの紛争かという状況のなか、高田屋とリコルドの信頼関係のもとに行われた話し合いの結果、ゴローニンは釈放され、日本とロシアの緊張は去った。
こうなると、高田屋とリコルドこそが日本とロシアの紛争の芽を摘んだ人物といえるか。だが、高田屋の評価はそれにとどまらない。ネムロ場所、エトロフ場所の請負人としての高田屋はどうだったのか。彼の漁場はアイヌの人口を著しく減少させていたのだから。
「根室アイヌ人口 1809年・1219人、1822年・891人 南千島のアイヌ人口 1809年・1765人、1822年・1196人」(P.136)