本の紹介ー神社本庁とは何か2019年02月11日


小川寛大/著『神社本庁とは何か 「安倍政権の黒幕」と呼ばれて』ケイアンドケイプレス (2018/12)

 安倍政権に大きな影響を持っている「日本会議」の主要構成メンバーの一つが「神社本庁」である。神社本庁とは、全国の神社を束ねる包括宗教法人であるため、政治への影響力も大きい気がする。また、安倍政権の極端な戦前回帰傾向は神社本庁の戦前回帰傾向とも一致している。
 本書では、神社本庁の実態を説明し、国政への影響力が大きいとは言えないことを解明している。
 日本人の多くが初詣などで神社にお参りするので、そのような意味では神道の信者であると言えるが、だからと言って、多くの国民が、神社の号令一下、安倍政権の支持者になるということもない。そういった観点から考えれば、本書の指摘はもっともである。しかし、多くの日本人は政治に無関心で、知識も乏しく、学習意欲もないのだから、そういった日本人に付け込む可能性があるので、神社本庁の戦前回帰意欲には警戒が必要だろう。

 ところで、神社本庁の戦前回帰の目的はなにか。本書P141,142に興味深い記述がある。要するに、神社本庁幹部の私利私欲が目的なのだろう。
 現在の神社界は、多くの貧乏神社の上に一部の金持ち神社が君臨する、超格差社会である。そして実はこういう利権じみた部分については、神社本庁は日ごろの「戦前志向」をまるで放棄しているのだ。どういうことかと言うと、大日本帝国は神社の宮司の世襲を禁止していたのだが、戦後は再び社家(宮司を世襲で継承してきた家柄)が復帰して、また神社を一族で運営しているというケースが多い。それどころか、もともと社家ではなかった人が、第二次世界大戦の敗戦時にたまたま宮司をしていた神社を自分の息子に継承させ、社家化した例もある(「新社家」と呼ぶ)。神社本庁が本当に戦前の状況を一つの理想としているのであれば、現代においても宮司の世襲は禁止してしかるべきだ。しかしそのような機運は現状ほとんど見られず、「金持ち神社の社家に生まれた子供はずっと金持ち、貧乏神社の社家に生まれた予供はずっと貧乏」という神社界の格差構造がほぼ固定化されてしまっている。
 そして厳しく直言すれば、こうした神道の歴史の中から都合のいい「いいとこ取り」をしているような状況が、いまの神社界に「闇」をもたらしている側面があるとも感じられるのだ。戦前にはなかった巨大.富裕神社を世襲化させる基盤を確保した上で、戦前にそうしたごく一部の神社のみに存在した国家権力との関係や特権を「取り戻そう」としている。そういう外部からの人材が入り込めない閉じた特権階級サークルの中では、当然のように近親憎悪的な醜い派閥争いが発生することになる。それがいま、神社本庁およびその周辺で起こっている各種の人事紛争や不正疑惑なのではないのか。意識的にせよ無意識的にせよ、神社本庁が「戦前回帰」で目指す地点がこういうところにあるのだとしたら、それは神々に対しても氏子・崇敬者たちに対しても、あまりに申し訳ない姿だと言わざるをえない。(P141,P142)

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

* * * * * *

<< 2019/02 >>
01 02
03 04 05 06 07 08 09
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28

RSS