本ー野戦郵便旗 ― 2019年04月04日

佐々木元勝/著『野戦郵便旗 日中戦争に従軍した郵便長の記録 第1-5部』現代史資料センター出版会 (1973/4)
佐々木元勝/著『続野戦郵便旗 日中戦争に従軍した郵便長の記録 第6-10部』現代史資料センター出版会 (1973/7)
絶版になって久しいので、今ではあまり目にする機会がないかも知れない。
タイトルの「野戦郵便旗」とは、戦争中の野戦郵便局に掲げられた郵便マークの旗のこと。
本書の著者は郵政官僚で、日中戦争のときに中国大陸の野戦郵便局の現地責任者となり、戦後は逓信博物館館長を務めた。本書は、佐々木元勝の中国大陸時代の詳細な日記。
軍事郵便の責任者なので、当時の野戦郵便局開局や、郵便送達の事情などが詳しい。また、本書の随所に当時使用された記念郵便印の印影などが掲載されている。
上巻は昭和12年8月の上海事変から同年末の南京占領まで、下巻は昭和13年3月から昭和14年8月の帰国まで。
上巻最終章は南京占領時期の日記で、日本の官僚による南京虐殺の記録を含んでいる。ここでは、日本軍人の悪業の数々は記述されていないが、日本軍が捕虜にした中国人を便衣兵であるとして殺戮場所に連行したようすが記されている。
下巻にはこんなことが書かれている。日本軍人は、女であれば手当たり次第強姦した事実の一端がうかがい知れる記述だ。
「ある日、漢口から高級副官と、私と親しい予備の中尉の副官が私の居室にやってくる。八十になる尼さんを強姦した話など笑い話がつづき、「最近しきりに国に帰りたい」と高級副官がくだけて心境を語る。私は野戦局スタンプを押捺した『中支の展望』(単行本)を二人に贈呈した。(P200)