本の紹介―大乗仏教概論2019年04月05日

 
鈴木大拙/著、佐々木閑/訳『大乗仏教概論』 岩波文庫 (2016/6)
 
 本書は、鈴木大拙の英語の本を、仏教学者・佐々木閑が日本語に翻訳して、解説を付けたもの。
 鈴木大拙の本文には興味がないので、佐々木閑の解説しか読んでいません。
 
 鈴木大拙は若いとき「西洋人に真の大乗仏教を教えてやる」との意気込みで、「Outlines of Mahayana Buddhism」を英語で出版した。しかし、当時、欧米ではすでに仏教研究が進んでいたので、鈴木大拙の主張は、大乗仏教の教義とは程遠く、また、サンスクリッド語の解釈もほとんど誤りであることが発覚した。このため、鈴木大拙は、同書を出版停止にして、翻訳も禁止した。本書は、鈴木大拙が死んだために、ようやく日本語に翻訳して出版されたもの。
 なお、鈴木大拙は、その後、自説を大乗仏教一般とはせずに、日本の仏教として紹介することにより、欧米で受け入れらることになる。
 
 訳者の佐々木閑は解説の中で、『大拙大乗経とも呼ぶべき、新たな聖典の誕生』と説明している。大乗仏教の経典は、釈迦の教えではなくて、後代に作成されたものだ。ただし、大乗経典が、釈迦の教えと考えられたものと、完全に無関係と言うわけではなくて、作者が「釈迦の教えの真意はこうだったのだろう」「釈迦の教えがこうなればよかったのに」「俺が儲かるためには釈迦の教えはこうあるべきだ」などと、考えて作成したであろうことは想像に難くない。そういう意味では、鈴木大拙の大乗仏教解説が新たな経典の誕生と考えられても不当ではないかもしれない。しかし、大乗経典が後代の偽作であるとしても、長い歴史の中で生き残ったものなので、ポット出の『大拙大乗経』を同列に論じることはできない。それに、日本の歴史の中で、日本で大乗経典が作成されたことが一度もないことは明らかだろう。そういう意味では、『大拙大乗経』は日本仏教の伝統にも反している。『大拙大乗経』は仏教ではなくて、阿含宗・オウム真理教・真如苑・顕正会・幸福の科学などと同列な「仏教系新興宗教」の一つではないか。

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