本の紹介ー日本の戦争:歴史認識と戦争責任 ― 2019年04月13日

山田朗/著『日本の戦争:歴史認識と戦争責任』新日本出版社 (2017/12)
著者は近代日本史学者で明治大学教授。岩波書店や吉川弘文館のような学術的な出版社からの学術的な本の他に、一般読者を対象とした啓蒙的な本も多い。著者は、リベラルな歴史学者で、右翼系のヘイトスピーチなど歴史修正主義に批判的である。
本書は日本の近代史に対する歴史認識を扱ったものであり、テーマは堅苦しいが、本書はかなり平易に書かれており、歴史知識が少ない人にも容易に読める内容になっている。
まえがき
第一部 近代日本はどんな戦争をおこなったのか
第一章 日露戦争とはどういう戦争だったのか
一 近代日本の国家戦略-日露戦争への道
1 明治維新以来の日本の対外戦略
2 北進=日英同盟か、南進=日露協商か
3 日露の膨張戦略 利益線=勢力範囲の拡大をめぐる衝突
4 日本の軍事的課題とそれへの対応
二 日露戦争の実像と世界史的意味
1 日英同盟の役割日露戦争遂行の大前提
2 日露戦争が世界政治に与えた影響
三 日本陸軍の戦略口成功と失敗
1 日本陸軍の基本戦略
2 日本陸軍の戦略の成功(戦争前半)
3 日本陸軍の戦略の失敗(戦争後半)
四 日本海軍の戦略の成功と失敗脅
1 日本海軍の基本戦略脅
2 日本海軍の戦略の失敗(戦争前半)
3 日本海軍の戦略の成功(戦争後半)
五 『坂の上の雲』の歴史認識の危うさの
1 歴史上の人物になりきる司馬遼太郎の技法の
2 司馬史観の問題点H明治と昭和の連続性を無視する歴史認識
第二章 満州事変と「満州国」の実態
一 「満州国」における「五族協和」の理念と実態面
1 「満州国」の建国
2 「満州国」の建国の理念としての「五族協和」
3 憲法.国籍法がなかった「満州国」
4 満州国協和会と「五族協和」の結末
二 反満抗日運動と「討伐」の実態
1 反満抗日運動の諸相
2 「満州国」側の「討伐」部隊
3 「満州国」軍警による「討伐」
第三章 日中戦争と南京事件の真実
一 アジア太平洋戦争の原因・重要な構成要素としての日中戦争
1 アジア太平洋戦争への道のり
2 世界戦争への第一段階 山東出兵・満州事変
3 世界戦争への第二段階一華北分離・日中戦争
4 日中戦争泥沼化の二つの要因
5 世界戦争への第三段階 日独伊三国同盟
二 日中戦争の性格を浮き彫りにする南京事件の真実
1 南京大虐殺をめぐる争点
2 その時、南京にいた日本兵は何を見たのか
3 虐殺は組織的におこなわれていた
4 南京事件は慰安婦問題の原点でもある
第二部 今、問われる歴史認識と戦争責任
第四章 真珠湾攻撃とは何であったのか
一 真珠湾攻撃への道
二 一九四一年一二月八日における日本軍の軍事行動
1 軍事行動の始まり
2 一二月八日の軍事的意味
第五章 戦争責任論の現在と今後の課題
一 戦争責任論の変遷
1 誰の何に対する責任か
2 〈記憶〉の時代:戦争体験者から非体験者へ
二 歴史修正主義の台頭認
1 戦争責任論の展開と歴史修正主義台頭の関係性
2 政府答弁書による歴史修正主義的言説の権威化
三 戦争責任論の課題一戦争の〈記憶〉の希薄化のなかで
1 戦争の〈記憶〉の希薄化
2 戦争の〈表の記憶〉と〈裏の記憶〉
3 戦争責任論の課題一〈裏の記憶〉継承の契機として
第六章 「植民地支配と侵略」の計画性と国家の責任
1 「日本だけではない」「良いこともした」という言説の問題点
2 「アジアの独立に役立った」という言説の問題点
3 「領土的野心なし」という言説の問題点
第三部 歴史修正主義をどのように克服するか
第七章 日本は過去とどう向き合ってきたか
一 靖国神社問題と歴史認識吻
1 靖国神社とは
2 英霊サイクルの要としての靖国神社
3 慰霊の問題が、どうして国際問題になってしまうのか
二 日本人にとって〈歴史認識〉はなぜ大切なのか
第八章 政界における歴史修正主義
一 安倍晋三首相の歴史認識と「教育再生
1 「国に対して誇りをもつ」ための歴史教育
2 河野・村山・宮沢談話排除のうごき
二 「河野談話」排除のうごきと二〇〇七年政府答弁書の問題点
1 「河野談話」とは
2 慰安婦=合法」論の問題点
三 「村山談話」排除のうごき
1 戦後七〇年「安倍談話」にむけて
2 安倍首相の「侵略」認識⑳
四「宮沢談話」(近隣諸国条項)の撤廃と靖国問題
1 近隣諸国条項撤廃へのうごき
2 靖国問題との連動
五「安倍談話」の歴史認識 その特徴と問題点
六 戦後を否定する日本会議の虚構
1 明治時代への郷愁
2 偽造された「伝統」
3 米国に助けられた右派
あとがき
日本の戦争略年表
初出一覧