本の紹介ー縄文の思想2019年04月14日


瀬川拓郎/著『縄文の思想』 講談社現代新書 (2017/11)

 アイヌ古代史が専門の瀬川拓郎教授による縄文文化の解説。アイヌ文化など北海道の文化と関係した記述が多い。
 本書に記載されている内容は、考古学の定説とはいいがたいものが多い。それらが、著者の思い入れなのか、定説に近いものなのか、考古学界の動向を知らないものには判断できない。
 縄文時代が弥生時代に代わっても、縄文文化をになった人たちの中には、弥生人にはならずに「海民」として、縄文文化を受け継いだとしている。4世紀から13世紀ごろの北海道北部海岸地域には、アイヌとは別な種属であるオホーツク人がいたことが知られている。縄文人の末裔である「海民」とオホーツク人との交流を指摘している。なかなか興味の持てる指摘だが、6世紀には、渡来系の人が群馬県など内陸部にも進出しているので、オホーツク人と交流があった人がいたとしても渡来系の可能性もあり、縄文人の末裔と考えるには無理があるような気がする。
 歴史素人の私には、なんとも判断できない本だ。参考のため、目次を掲載しておきます。


はじめに
 生き残る縄文/なぜ共通する神話・伝説があるのか/周縁・まれびと・修験者/アクチュアルな生の思想/なぜいま縄文なのか

序章 縄文はなぜ・どのように生き残ったか
 縄文はなぜ・どのように生き残ったか/文化とヒトの弥生化/縄文の継承と変革/閉ざしつつ開く/本書の構成第一章/本書の構成ー第二章/本書の構成-第三章/本書の構成ー第四章

第一章 海民と縄文弥生化のなかの縄文
 1 残存する縄文伝統
 現代に残る縄文習俗/海民と抜歯/イレズミ・縄文・ケガレ/縄文人的な弥生人/隼人に似る人びと/糸満漁民と縄文/なぜ白人渡来説が唱えられたのか/九州西海岸のアイヌ語地名/アイヌ語は縄文語か/隼人言葉のなかのアイヌ語
 2 海民の誕生
 貝殻と縄文ネットワーク/海民の誕生/九州へむかう縄文人/非モノカルチャーとしての縄文/出雲方言と東北北部方言からみえること

第二章 海民とアイヌ 日本列島の縄文ネットワーク
 1 海民のインパクト
 生態系からみた北海道/「旧石器的生業体系」の社会/「あわい」に生きる/続縄文人の劇的な変化/なぜ命がけの漁なのか/量から質へ/威信の可視化/列島を往来する海民/海民のインパクト
 2 交差する北の海民・南の海民
 古墳社会との交流/交流を担ったのはだれか/礼文島でみつかった刀装具/海民の刀/南下する北の海民/オホーツク人と続縄文人/オホーツク人と古墳社会の祭器/オホーツク人と海民
 3 離島の墓に眠るのはだれか
 奇妙な墓/さまざまな時代と産地の玉/葬られたのはオホーツク人か/大陸起源説を疑う/海民独特の葬法/被葬者を推理する/奥尻島でおこなわれた海民の祭祀/阿曇氏との関係
 4 謎の洞窟壁画
 洞窟と古代の北海道/洞窟壁画の発見/定説化する大陸起源/壁画をみなおす/古墳壁画との一致/海民の古墳/なぜ余市周辺なのか/なぜ島喚と海辺なのか

第三章 神話と伝説 残存する縄文の世界観
 1 共通するモティーフ
 周縁の人びとの世界観/川をのぼるワニ/ワニとはなにか/エビスとワニ/アイヌ伝説との一致/海と山の神の往還/なぜ山頂に海があるのか
 2 他界の伝説
 なぜ会うことを拒否するのか/海民の他界観/他界の入口としての洞窟/南島と洞窟/具現化される他界/修験者との関係/洞窟と修験者/なぜ聖域をヤマとよぶのか/黄泉の国神話との関係/反転するモティーフ
 3 縄文神話とその変容
 縄文起源の神話/農耕民のなかの継承と断絶/変容のパターン/海の神と山の女神の婚姻/共通する海民の神話/『古事記』が伝わったのか
 4 伝播した海民伝説ーアイヌの日光感精・卵生神話
 渡来人の伝説/日本列島の日光感精説話と卵生説話/アイヌ神話とアメノヒホコ/なぜ二つの玉なのか/語られてきた異伝/海民としてのアメノヒホコ/九州の海民とアメノヒホコ/神話・伝説の歴史性

第四章 縄文の思想ー農耕民化・商品経済・国家のなかの縄文
 1 呪能と芸能
 縄文の思想/狩猟する海民/卜部・亀卜・卜骨/海民と占い/動物の供犠/海民と山民の呪能と芸能/王権と縄文/「蕃人」の思想としての「まれびと」/獣に仮装する「まれびと」/非定住民と芸能/古代アイヌの呪術/「化け物」としての縄文/現代に生きる呪術的世界/自然現象を操る
 2 贈与と閉じた系
 なぜ神隈を売買するのか/贈与への執着/無縁化の装置/申間的なるもの/イオマンテの機能/矛盾と葛藤/隔離的な婚姻関係/閉じた系
 3 平等と暴力
 神のまえの平等/共産主義者の村/排除される野心/自由と自治/海賊と傭兵/「余りにも古い精神の遺存」
 4 動的な生へ
 生の肯定/同化と排他の「あわい」/喧騒の思想/海民史観から縄文史観へ/平地人を戦傑せしめよ

おわりに
引用文献

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