本の紹介ーガイサンシーとその姉妹たち2019年05月05日

 
班忠義/著『ガイサンシー(蓋山西)とその姉妹たち』梨の木舎 (2006/09)
 
 独立混成第四旅団は、日中戦争で日本軍が占領した山西省に派遣され治安維持にあたった。この旅団は現地中国人女性を拉致監禁し、連日連夜に渡って激しい輪姦を繰り返した。
 本書は、日本軍による輪姦の状況を聞き取り調査したルポルタージュ。著者は何度も現地に入って調査しており、本書の記述は調査ごとのルポになっている。著者は上智大学大学院、東京大学大学院で学んだジャーナリスト・ドキュメンタリー作家。
 
 本書のタイトル「ガイサンシー(蓋山西)」とは「山西省随一の美女」の意味。山西省孟県西部に住む「候冬娥」のことで、美人の誉れ高く「蓋山西」と呼ばれていた。
  
 独立混成第四旅団の部隊は蓋山西のほかに何人もの女性を拉致し部隊に隣接する小屋に監禁し、昼は兵士がかわるがわる強姦し、夜は部隊長・曹長・情報班長らが強姦した。日本軍兵士による拉致は、抵抗する女性を数人の兵士が引きずったり、逆さづりに担ぐなどした、強引なものだった。また輪姦により体を壊しても、輪姦が止む日はなかった。蓋山西は立つこともできないほど体を壊すと、ようやく解放された。拉致監禁され性奴隷にされた女性の中には、親族が高額の金を払って解放されたものも多い。
 
 独立混成第四旅団の部隊による組織的な輪姦が起こったきっかけとして、本書では「百団大戦」を挙げている。百団大戦とは、昭和15年8月に、八路軍が大兵力を動員し日本軍に対し一斉攻撃を行った戦いをいう。この攻撃に対して、日本軍は大規模な八路軍掃討作戦を発動し、独立混成第4旅団は「敵性ありと認めた一部の住民の殺害」を命じた。この命令に従って、中国人美女を「敵性あり」と口実をつけ、拉致監禁し輪姦を繰り返したものだったのだろう。性奴隷にされた女性の中には初潮前の少女もいた。
 
 2011年12月10日、NHKで『証言記録 兵士たちの戦争 中国華北 占領地の治安戦~独立混成第4旅団~』が放映された。ここでは「戦争が長期化する中で、一部の将兵の間で軍紀の乱れが目立つようになる、司令部は軍紀の徹底を再三にわたり指示したが、広大な地域に分散配置された部隊の末端にまで徹底することは困難だった」とし、さらに、旧日本軍人により「強姦は禁止されていた」との証言が語られている。これでは、一部部隊の末端兵士の不正行為だったかのように問題が矮小化されてしまっている。
 しかし、蓋山西は末端兵士に強姦されたのではなくて、部隊長の命令による性奴隷化だった。本書には、旧日本軍兵士による証言として、末端兵士の中には強姦することを嫌がるものもいたが、古参兵の命令により強姦したとの証言も記載されている。軍人勅諭には『下級のものは、上官の命を承ること、実は直に朕か命を承る義なりと心得よ』とあり、下級の者はたとえ殺人命令、強盗命令、強姦命令であっても、それを天皇陛下の命令として実施する必要があった。蓋山西らに対する性犯罪では、末端兵士は上官命令で強姦したのであって、末端兵士の暴走ではなかった。

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