和算の大家 関孝和2019年09月22日

  
群馬県藤岡市・藤岡市民ホール前に関孝和の銅像と顕彰碑が建てられています。

本の紹介ー報道事変2019年09月23日

 
南彰/著『報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったか』 (朝日新書)(2019/6)
 
 著者は朝日新聞政治部記者。
 安倍・菅コンビによる嘘や強弁により、記者会見では、政権に忖度した質問しかできなくなっている状況を説明している。
 森友問題では、官僚が安倍総理を忖度して公文書をねつ造していた事が明らかにされた。しかし、事実がばれる前の菅官房長官記者会見では嘘を押し通して、さらに事実を明らかにしようとする質問を封じていた事が知られている。

本の紹介ー買春する帝国2019年09月24日

 
吉見義明/著『買春する帝国: 日本軍「慰安婦」問題の基底』 岩波書店 (2019/6)
 
 近現代日本史が専門の歴史学者による、明治以降、売春防止法成立までの日本における売春の歴史の解説。一般向けの啓蒙書ではなくて、学術的内容の専門書。参考文献も多い。
  
 日本の男は売買春なしにはいられず、もし売買春がなければ、多くの男が強姦に走るとの考えが日本社会に根強かった。また、女性器を広げて目視検査することにより、性病の蔓延を防げるとの見解も強かった。このため、日本では、明治以降公娼制度が実施されていた。欧米では、女性の意志に反した管理売春を禁止する傾向が強まったのに対して、日本では管理売春を推し進めており、人権意識としては後進国だった。日本の公娼制度では、売春希望女性や甘言により売春を強いている女性に対して、居住の自由を与えず、客の男性を拒否することもできずに、官憲が売春管理人と一体となって、売春を強要していた面がある。
 
 本書では、明治以降の日本の売春制度、特に公娼制度について詳しく書かれている。
 本書は7つの章があり、時代を7つに分けて、各時代ごとに一つの章を当て、それぞれの時代の売春制度について詳述されている。7つの時代区分は、「明治維新から日清戦争まで」「日清戦争以降日露戦争まで」「日露戦争以降シベリア出兵・第一次世界大戦まで」「世界恐慌」「満州事変から日中戦争前」「日中戦争から敗戦まで」「戦後占領」となっている。どの時代区分が特に多いというわけではなく、明治以降の売春制度の全容が理解できる。
 
 このうち、第6章の日中戦争期の売春制度では、朝鮮人従軍慰安婦にも触れられている。ただし、この問題を解明することが本書の主眼ではない。  
 朝鮮人従軍慰安婦問題では、「慰安婦は単なる職業であった」とか、「日本軍により強制されていた朝鮮人弾圧だ」などの見解がある。しかし、朝鮮人従軍慰安婦は日本の公娼制度の延長にあるので、単に職業であるわけではなく、また日本軍による朝鮮人弾圧であるわけでもない。本書を読むと、日本の公娼制度の中で生まれた、軍・警察が関与した公娼であったことが理解できる。

本の紹介ーロシアを知る。2019年09月29日

  
池上彰、佐藤優/著『ロシアを知る。』 東京堂出版 (2019/6)
 
 ジャーナリストの池上彰と、元外交官の佐藤優の対談。池上が質問して、佐藤が答える部分が大きい。
 二人とも話が分かりやすい人なので、読みやすい。
 序章は、現在の北方領土交渉について。第1章から第4章と第6章はソ連・ロシアの説明。第5章は日本との関係。

本の紹介ーネット右翼の終わり2019年09月30日


古谷経衡/著『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』晶文社 (2015/7)

 右翼系ジャーナリストによるネット右翼の解説。
 文章自体が読みにくいわけではないのだけれど、論旨一貫として書くスタイルではないので、社会問題の解説書としては、ちょっと読みにくい。

 著者はネット右翼の始まりを日韓ワールドカップサッカーに設定し、これを「前期ネット右翼」と呼ぶ。サッカーの判定への不満から嫌韓が起こったとのことだ。前期ネット右翼は保守思想を学んだものと、思想を学ぶことなく表面的な言葉のみを取り上げたものとに分け、保守思想を学んだものを「広義のネット右翼」、思想を学ばなかったものを「狭義のネット右翼」と位置付ける。また、「前期ネット右翼」が「狭義のネット右翼」や「広義のネット右翼」に転化するに果たした役割として「チャンネル桜」の影響を指摘している。
 「狭義のネット右翼」は本を読まず、保守思想を理解することなく、ヘイトスピーチに向かった者である。こういう人たちは低学歴かと思いきや、著者によると、大卒や自営業などで高学歴者やある程度の高収入者が多いとのことである。この「狭義のネット右翼」の推定人口を150万人としている。
 さらに、保守勢力の中で、田母神俊雄らを取り上げて、ネット右翼同様にデマを振りまいている事実を指摘し、保守が「狭義のネット右翼」に迎合している状況を指摘する。そういえなくもないが、そもそも田母神俊雄は元自衛隊員であって歴史学者ではないのだから、歴史の話題では無知によるデマを吹聴するしか能がない人なのではないか。まさに、「狭義のネット右翼」そのものではないだろうか。

 著者は「狭義のネット右翼」の無知について、歴史教育の問題点を指摘した後、結局はネット右翼たちの「知的怠惰の姿勢」こそ問題であると、彼らを糾弾している。
 歴史教育についてはどうか。明治維新、大正デモクラシー、第二次大戦くらいまではまあ頑張ることもあるが、第二次大戦の具体的な戦史についてミッドウェーもガダルカナルもインパールも教えないし、戦後にあってはせいぜい日本国憲法発布とかGHQの三大改革(農地改革、財閥解体、男女普通選挙)くらいで終わって、後は自習の時間かそのまま卒業と相成る。これらの近現代史の事象は、たとえ勉強しなくとも、大学入試センター試験や個別試験の材料として扱われることはほぼ無い。さらに現代に近い部分、冷戦崩壊後の/990年代以降の記述となると、教科書にはほんの数行しか登場していない。
 ・・・ 実は、「狭義のネット右翼」が依拠している「ネットで知った歴史の真実」「ネットで知った日本社会の真実」というものは、このように公教育の中で、特に政治経済の授業や近現代史のそれの中でなおざりにされてきた、そのニッチな間隙を突いたものがほとんどなのである。
 ・・・ つまりは、「狭義のネット右翼」とは、学校教育で網羅しているのみの、乏しい知識体系の外に、突如として湧いてきた真偽不明な情報を「真実」として鵜呑みにする人々のことであり、そしてその原因は、学校教育の不作為である以上に、「学校以外での知的探求」を怠っていた知的怠惰の姿勢にこそ、求められると言わなければならず、この点は手厳しく糾弾しなければならない。
 この記述は事実とは言えない。高校日本史教科書の山川出版・詳説日本史では、戦後史に全体の10%を割いているし、センター試験でも、ほぼ毎回戦後史が出題されているので、著者の言うように学校教育で近現代史が無視されているということはない。ただし、近現代史は、歴史の授業の最後に現れるので、偏差値が低い高校では飛ばされることもあるだろう。高校では勉強せずに漫然と過ごし、推薦で大学に入り、大学ではバイトやサークルに明け暮れ、まともに勉強した経験のない者がネット右翼になり下がったとしても驚くに当たらない。

* * * * * *

<< 2019/09 >>
01 02 03 04 05 06 07
08 09 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

RSS